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【flumpool×UNISON SQUARE GARDEN】音楽と人LIVE 2016 “新木場クロッシング”16/03/08

大好きだった音楽をいつの間にか聴かなくなる、という経験は、誰にでもあるものだと思う。
それは別に、嫌いになったからとかそういうことではない(と、本人は思っている)。ただ何となく、新譜に手が伸びなくなったりだとか、他のアーティストの曲を聴くことが増えたりだとか、"何となく"としか形容できない理由で遠ざかっていった音楽は、わたしにもいくつかある。そして、flumpoolは先日までのわたしにとって、そんなバンドの一つだった。

初めて彼らの曲を聴いたのは、16歳の頃だっただろうか。2008年、「over the rain~ひかりの橋~」がドラマ「ブラッディ・マンデイ」の主題歌に抜擢されたタイミング。佐藤健のファンだったから、そのドラマには放送前から注目していた。その流れで主題歌に興味を持ち、そのままflumpoolのことを好きになったんだと思う(さしてドラマチックな出会い方をしたわけではないので、曖昧にしか覚えてない)。

20歳になるくらいまでは、彼らの音楽が大好きだった。ファンクラブ「poolside」にも入会していた。「What's flumpool?」ツアーにてpoolside限定で販売されていた水色のTシャツは、今でもお気に入りの1枚だ。
ライブにも、何度も行ったことがある。19になった時だったかな、誕生日にさいたまスーパーアリーナでflumpoolを見たこともあった。「present」を歌ってくれたのがすごく嬉しかったことを、今でもよく覚えている。その他、ホールやアリーナでのライブにはちょこちょこと足を運んでいたんだけれど、私は一度も彼らをライブハウスで観たことがなかった。チケットが取れなかったのだ、全然。

「大切なものは君以外に見当たらなくて」発売後あたりから、なんとなく、新譜をチェックしなくなった。ファンクラブも、名前が変わったタイミングで更新をやめた。ベスト盤は購入したし、歌番組に出ていればある程度チェックはしていたんだけれど、「ファン」を名乗ることはできないなぁ、と思う程度。

やっぱり前置きが長くなってしまったんだけど、そんな距離に落ち着いていたflumpoolのライブを、3、4年振りに観る機会があった。それが先日の、UNISON SQUARE GARDENとflumpoolの2マンライブ。自力でチケットを取ることができなかったんだけれど、フォロワーさんに声をかけていただいたため、新木場スタジオコーストに足を運ぶことができた。


先攻は、UNISON SQUARE GARDEN。言わずもがな、わたしの中では今一番アツいバンドである(先日のツアーファイナルも最高でした)。

この日は、割といつもと違うセットリスト。「オリオンをなぞる」も「場違いハミングバード」もなければ、「フルカラープログラム」も無し。代わりに、超かっこいいアルバム曲を連発する構成だった。

初っ端から「天国と地獄」「シュガーソングとビターステップ」と、必殺技めいた2曲を惜しげなく投下。「シュガーソング」が始まる前って必ず、他の曲とは別種の歓声が沸き起こってる気がするんだけど、あれって何なんだろう。わたしと同じ、シュガーソング大好き勢なんだろうか。多分、一定数はいると思うんだけど。

「蒙昧termination」「ため息shooting moon」「like coffeeのおまじない」あたり、日本語・英語混じりタイトルの曲は、めちゃくちゃ田淵先生らしいなと思う。「蒙昧ターミネイション!蒙昧ターミネイション!蒙昧ターミネイション!」と何度も繰り返す「蒙昧termination」は、割と意味不明な歌詞だけど、あまりにも語感が良いから違和感を持つ余地などない。「like coffeeのおまじない」はもう、ズルいなと思う(笑)。あんな挙動不審な田淵先生からこんなに可愛い曲が出てくるのは、卑怯(笑)。

この日のライブで結構印象的だったのが、flumpoolのMCで隆太さんが話してたんだけど、手を振る動きがすごく揃ってたこと。ユニゾンのライブにおいて、いわゆる「ノリ方」を周りの人と揃える必要は全く無い。躍るなり手を振るなり静止するなり、他人の迷惑にならない範囲で好きにやれっていうのは、もう耳にたこができるくらい何度も言われてきた話だ。だけど、音楽に合わせて気持ちいいタイミングで踊っていると、他の人と揃いやすくなる動きは確実にある。一体感とは少し違うその揃い方が心地よくて、これだからユニゾンもユニゾンファンも好きなんだよなぁ、などと思う。

合間に挟まるMCは、今日も絶好調。斎藤さんに言われるまで気付かなかったんだけれど、ユニゾンとflumpoolはメジャーデビューのタイミングが近かったのだという。7月23だか24だか(忘れちゃったと斎藤さんは言っていたけど、正解は24日である)にデビューしたユニゾンと、10月にデビューしたflumpool。ものすごく華々しくデビューしたflumpoolと、「自分よりイケメン」な山村隆太のことを当時の斎藤さんは快く思っていなかったという。隆太さんが斎藤さんよりイケメンだから「頑張れよ」と周囲のスタッフに言われたこともあったとかなかったとか。「心のデスノート」に山村隆太の名前を書いたこともあると言っていたが、実際に話してみると彼らは実にいい奴らだったから、斎藤さんは自分の心のデスノートからそっと隆太さんの名前を消したそうだ。

2組とも「バンド」という括りではあるが、彼らの活躍しているフィールドには違いがある。斎藤さんからしてみると華々しく見えたというflumpoolのデビューだが、彼らなりの葛藤があったことだろうと思うし、ユニゾンだって然りだろう。同期としてそれぞれ異なる道を進んできた2バンドだから、この日のように慣れ合いも妥協もないライブができたんだと思う。しょーもない言い方をすると、同期バンド2マンってほんと尊い。

「桜のあと (all quartets lead to the?)」「ガリレオのショーケース」と定番曲が続いた後、最後の曲としてユニゾンが選んだ「harmonized finale」は、もしかしたらユニゾンからflumpoolへのメッセージだったんじゃないかと思っている。この曲の最後の歌詞は〈君を追いかけるよ その未来まで〉。真意は想像するしかないけれど、同期のバンドにこんな言葉を掛けてもらえるflumpoolが羨ましい。この2組の関係性、良いなぁと思った。


続いて後攻、flumpool。こちらも1曲目から飛ばす、飛ばす。「覚醒アイデンティティ」「MW」「花になれ」そして「星に願いを」。割と初期の曲ばかり。つまり、わたしにとっては10代の頃に大好きだった曲たちだ。

「MW」の大サビでは隆太さんが1サビの歌詞を歌ってしまい、混乱して一生さんの方を見て口を読もうとするも、一生さんも既に混乱しており2人とも歌詞が分からない、なんていうハプニングも(笑)。自分が好きだった頃のflumpoolは割と歌詞を間違えるバンド、というイメージを持っていたので、そんなところも懐かしかった。

flumpoolの曲の中でもわたしが群を抜いて大好きだったのが「星に願いを」。イントロが始まった瞬間、自分の感覚が一気に10代に引き戻されたような気がした。〈行かなくちゃ〉〈会いたくて〉というまっすぐな言葉に拳を上げ、手を叩き、跳びはねる。ああそうだった、flumpoolのライブってAメロは手拍子で、Bメロから腕を挙げることが多いんだった。そんなことを、ふと思い出す。懐かしさと楽しさのあまり、ふと泣きそうにすらなる。

この辺の、自分がリアルタイムで聴いていた曲を聴いて思ったんだけど、隆太さんすごく歌がうまくなった。もちろん彼はデビュー当時からめちゃくちゃ良い声だったんだけれど、この数年で貫禄が増したとでもいうのだろうか。伸びと響きが、わたしの知っているflumpoolとは良い意味でずいぶん違っていた。「花になれ」で特に思ったんだけど、隆太さんの声はまるで弦楽器のようだ。しなやかで、艶やかで、伸びがよくて。やっぱりこの声が好きだなぁ、と思った。

MCはこってこての関西弁。ユニゾンの斎藤さんは白シャツが似合ってかっこいいけど、「デスノートて!」と盛大にツッコんで笑いを誘う。「MW」の歌詞を間違えたことにも言及したうえで「俺らはいつも通りのライブしかできないので、ついてきてください」と話す隆太さんに、会場のあちこちから温かな笑みが漏れる。

後半では、まずは新しめの曲が続く。「君に届けはやらないからな、ごめんな」というジャブで笑いを取り、放たれたのは「解放区」「夜は眠れるかい」そしてアルバムからの新曲。この辺の曲は全て、来週発売のアルバム『EGG』に収録されると思うんだけれど、驚くほど多彩だった。曲によって、紙芝居のように景色が変わっていく(あんまり良い例えじゃないような気がする)。「解放区」の明るさ、「夜は眠れるかい」の禍々しさ、そして新曲の幸福感。すべて同じバンドの曲だということにハッとするくらい、次々に会場の雰囲気も変わっていく。

「イイじゃない?」でタオルを存分に回した後、flumpoolが最後に選んだのは「明日への讃歌」。5周年で発売されたベスト盤『MONUMENT』に収録された楽曲だ。個人的にこの曲がものっすごく好きなんだけど、ライブで聴いたのはもちろん初めて。以前にも書いたかもしれないけど、この曲では〈悩んでもいい/迷ってもいい/転んでもいい/止まってもいい〉と、一つ一つ言葉にして肯定している。多分それは、flumppol自身がそうやって今まで進んできたからだと思う。自分たちの辿って来た道を思い返すかのように、そしてこれから進んでいく道を確かめるかのように、隆太さんはその歌詞を丁寧に歌い上げていく。コーラス部分では、オーディエンスが腕を左右に振るのがすごく印象的だった。


アンコールで1曲くらい一緒にやるかな、と期待していたけど、この日はアンコールは無し。残念ではあったけど、互いの道を進んでいくという決意表明の一環なのだとしたら、かっこいい。同期2バンドの数年振りの2マンってシチュエーションだけでも本当尊いな、この上コラボまで求めたら罰が当たるよな、なんて思いながら帰路についた。大好きだったバンドが、自分の知らない間にぐんとすてきなバンドになっていたのは、すごく嬉しくて、そしてどこか寂しい。別れた恋人に久しぶりに会ったら、うんと魅力的になっていた、なんて感覚だろうか(生憎そんな経験はしたことがないので分からないが)。

来週発売になるアルバム『EGG』はちゃんと聴きたいな、と思った。今のflumpoolがどんなバンドなのか、ちゃんと知りたいなって。「好きだったバンド」のことを、また「好きなバンド」と言うようになる日は案外遠くないのかもしれない。

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