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【ユニゾン武道館】わたしの大好きなロックバンドの「何気ない記念日」

UNISON SQUARE GARDENの、「LIVE SPECIAL “fun time 724”」。

大好きなロックバンドの、何気ない、それでいてとっても大事な記念日。


会場に入ってすぐに、めちゃくちゃ遠い席からステージを見下ろして、「あ、"通常営業"だ」と思った。大きな会場だけど別にモニターを入れるでもなく、パッと見で分かるような物凄い仕掛けを用意しているわけでもなく。目に見えて特別なものを準備してるわけではなさそうだ、と思った(実際はいくつかの演出があったわけだけど)。


いつもと同じSE、イズミカワソラの「絵の具」と共に、3人がステージ上に現れる。この日は、SEがいつもよりも長く流されていた。1番をまるっと流しきっていたかな。開演前に昂りきった会場のボルテージを少し落ち着かせるような、涼やかな楽曲。いつもと同じ曲なのに、どこか"特別"を感じさせる時間が流れる。

誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと」から、記念すべき武道館公演は始まった。発売前からライブではちょこちょこと演奏されてきた曲だから、いきなり雰囲気を沸騰させるにはもってこいの選曲。そこから、「リニアブルーを聴きながら」「MR.アンディ」「溜息 shooting the MOON」「サンポサキマイライフ」「ワールドワイド・スーパーガール」「like coffeeのおまじない」と、新旧織り交ざったキラーチューンを畳み掛ける。MCなんてほとんど挟まない、フェスなどで見せる"通常営業"のスタイル。曲間で斎藤さんが「今日は長いよ~。自由に楽しんで!」とだけ挟むと、再びノンストップで「スカースデイル」「シュガーソングとビターステップ」「23:25」そして「天国と地獄」と駆け抜ける。曲と曲とを繋ぐジャンクション的なセッションもまたかっこ良くて、息をつく暇もない。


以下、前半の曲で印象に残ったことをポツポツと。本当にものすごい勢いで曲を連発してきていたので、正直あまりちゃんと覚えていないけれど(笑)。とにかくどの曲に対しても大歓声が上がるわけで、この場にいる人全員がユニゾンを大好きなんだと考えるとちょっと鳥肌が立った。

「MR.アンディ」久しぶりに聴いた。イントロ聴くと絶対に知ってる曲だし、ここで手拍子だなとかっていうのも体に刻み込まれてるんだけど、聴いてる間ずっとタイトルが出てこなかった(笑)。曲が終わった瞬間に「あ、アンディ!アンディだ!」と思い出して一人でテンション上がってたら、次に来たのが大好きな「溜息 shooting the MOON」だったので再度沸騰。古い曲にも新しい曲にも変わらずキラーチューンがたくさんあるのが素敵。

個人的には、「スカースデイル」をライブで聴いたのが久しぶり(多分)。とか言って前のツアーでやってたらどうしよう。分かんないけどとにかく、感覚的には久しぶりに聴いた。この曲、照明がすごく綺麗だった。青と白のライトが交差して、会場全体に広がっていって。こういう演出の全貌を見られると、2階だの後方だのの席は悪くないなと思う。この曲は斎藤さんの声がとても伸びやかで、音源で聴くよりライブで聴く方が全然良いとずっと思っていたんだけど、最近聴ける回数がめっきり少なくなって寂しかったところ。田淵先生の書く曲ってポップなんだけどどこか捻くれていて、でもそれが気持ちよくてという曲が多い印象だけど、斎藤さんの書いた「スカースデイル」はまっすぐな良曲だと改めて思った。

「シュガーソングとビターステップ」がたまらなく好きだという話は以前も書いたので割愛するけれど、武道館でこの曲を聴けたのは嬉しかった。田淵先生が左右にユラユラ(フラフラ?)揺れながらベースを弾いているのが可愛らしかった。そこからの「23:25」という流れはすごく良かったな。この2曲は、イントロが飛び跳ねやすい。疲れる。楽しい。好き。

で、「天国と地獄」。前半があまりに通常営業すぎたもので、この日が特別なライブだってことを忘れかけていたんだけど、ここで突然思い出すことになる。イントロのギターに合わせて、ステージ前方から炎が吹き出したのだ。てっきり、このまま照明による演出だけで最後まで行くのかと思っていたから驚いた。席が遠かったので3人の表情までは見えなかったんだけど、斎藤さんとかドヤ顔してたんじゃないかなぁ。この曲では、左右の足を交互に振り上げる(?)"田淵ステップ"も登場。既に最高潮を迎えたかと思われたオーディエンスのテンションも、さらにぶち上がる。


この辺で、この日最初の長めのMC。バックスタンド席のお客さんを振り返って、「三十路3人の後頭部、大丈夫ですか?もし10年後、20周年のライブの時に誰かが帽子を被ってたら…その時は察してください」と、まずは軽くジャブ。
それから「昨日、つまり10周年最後の1日、僕は一体何をしていたと思いますか?」とオーディエンスに問いかける斎藤さん。オーディエンスからいろいろな声が飛ぶ。「モンハン!」「ゲーム!」「寝てた!」が多かったかな。斎藤さんのイメージがよく分かる(笑)。それらを「全員違う」と切り捨て、ドヤ顔(多分)の斎藤さんが教えてくれた正解は「引っ越し」。あまりにも衝撃的なその答えに、オーディエンスからはどよめきの声と拍手が上がる。

斎藤さんのMC、"小噺"という感じがして凄く好きだ。

この小噺の後に「この10年の曲」(違ったかな。こんなニュアンス)として演奏されたのが「プログラムcontinued」。ユニゾンの3人しか知らない「流星が降り注ぐ前夜」から、この日迎えた「何気ない記念日」までの、「4000日くらい」の歌。この曲、ベスト盤に収録されてから何度も聴いてるけど、ダメだ。何度聴いても、どうしても涙が溢れてしまう。「くだらなくて 蹴っ飛ばしていいけど、君に言ってるんだ。」と、1万人以上がいる武道館でもちゃんと1対1で音楽を届けてくれる姿勢と、そして「きっと大して変わらないけれど 依然 continued」と歌うその声の力強さと。このバンドがどうしようもなく好きだと、続けてきてくれてありがとうと思ってしまう1曲だ。

ここから、バラード曲が続く。「光のどけき春の日に」「クローバー」、そして「harmonized finale」。前半はとにかく無我夢中で駆け抜けていたライブだが、ここでようやく一息ついてじっくりと曲を聴けたかな。照明も奇を衒ったものではなくて、例えば「クローバー」だったら緑の照明でじっくり照らす程度。「harmonized finale」では、このライブも「終わりが近づいてる」のかなと少し寂しくなった。余談だけど、いつか自分が結婚することがあればこの曲を流したいとふと思ったりした。


今日は特別な日なので、他のメンバーにも喋ってもらおうかな」と、鈴木さんと田淵先生にも話を振る斎藤さん。MCの内容はこんな感じ。

ハイヤーとタクシーは2000円しか変わらない」という鈴木さんの発言には「へ~~」の嵐。そして、田淵先生の「言葉に注意」は笑った。最高に笑った。1年分のおみくじで、他の11ヶ月分は良いことしか書かれていなかったのに、よりによって7月だけ「言葉に注意」だったそうです。「身を持って思い知ってる、もはや神の領域だ」と喚く田淵先生と、「それをそばで見てました」と流す斎藤さん。最高。

こんなバラバラの3人が、よくもまあ11年もバンドをしているものだ、と思わされるくらい、三者三様のMC。何の統一感もない。だけど、だからこそ「それぞれがかっこいいと思うものを持ち寄れる場がユニゾンだった」のだという。

とまあ、こんなことを思ったり。それと、田淵先生はちょこちょこアンコール後とかのMCで喋ることがあるけど、鈴木さんが喋るのを聴いたのはすごく久しぶり(1回だけ聞いたことあるんだよな。いつだったか記憶に無いけど)。そんなところからも、特別感が滲み出る。


シュプレヒコール~世界が終わる前に~」「桜のあと (all quartets lead to the?)」と続いて、おそらく会場中が待ちかねていたであろうあの曲。「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」だ。会場中が踊る、踊る。もちろん静かに見てる人もいるんだけど、踊る人はもう、ユニゾンの提唱する"自由"を具現化したかのように、好き放題踊る。一方でこの曲、サビの田淵先生は比較的大人しいのが面白い(コーラスがあるからマイクの前に留まってるというだけの話なんだけど)。こういう曲は、指定席で楽しむのが良い。自分のやり方で、好きなように楽しむことができるから。

続けて演奏されたのは「シャンデリア・ワルツ」。ライブではしょっちゅう演奏されていたけどなかなか音源化されず、待ち望んでいたところでアルバムに収録された曲が続いた。そこから、鈴木貴雄のドラム・ソロに突入する。同じフレーズをスピードアップしながら何度も何度も叩いていって…というのはよくあるパターン(?)だけど、このライブで一番吃驚したのはこのドラムソロかも。

超高速でドラムを叩き、スティックが手を離れて宙を舞う。脱力したかのようにドラムの上にへたり込む鈴木さん。「たかおー!」「たかおー!」と、彼を励ますように会場から声援が飛ぶと、再び緩やかにドラムを叩き始める。…と、突然ドラムが上昇し始める。最初は見間違いかと思ったけど、どう見てもせり上がっている。あんなのやるの、アイドルだけだと思ってた…!

前も思ったことがあるんだけど、鈴木さんのドラムソロはすごく楽しい。ドラムソロって聴いているだけでも十分かっこいいのに、鈴木さんはいつも、さらに楽しいと思えるような工夫をたくさんしてくれる。今回、その一つの真骨頂を見たように思った。この先、彼はドラムソロで何を見せてくれるんだろう。今後に向けてのハードルが一つ上がった気がしてならない(笑)。
ドラムソロが終わると、今度は左側から、勇ましいベースソロとともに田淵先生が舞台上へとせり上がってきた。最後に、洒落たギターソロを掻き鳴らしながら斎藤さんがせり上がってくる。舞台の下から登場するって、バンドのライブでは初めて見たような気がしたのでとても新鮮だった。本当に面白いことばっかり考えるな、ユニゾンは。

3人が再び揃って、「場違いハミングバード」「ガリレオのショーケース」。「場違いハミングバード」、最初に何か爆発音がしてた?ステージ上を全速力で駆け抜ける田淵先生が見られたり、すれ違いざまに一瞬だけ向き合って楽器を弾くフロント2人が見られたりと、目でも楽しかった。

そして、本編最後は「センチメンタルピリオド」だ。ユニゾンの最初のシングル曲であり、個人的にはユニゾンと出会った最初の曲。
曲の最初は、真っ白な光がステージ上の3人だけを包む。眩い光の中に3人のシルエットがぼんやりと浮かび上がり、その中からイントロが聴こえてくる。だけど、曲が始まったら客電まで全ての照明が点灯され、武道館全体が光に包まれた。入退場の時よりも明るく、多分本当に全ての照明を全開にしてたと思う。始まりはたった3人だったUNISON SQUARE GARDENというバンドが、11年目をむかえた今はこれだけたくさんの人と一緒に武道館にいる。10年という歳月の持つ意味を再現するかのような演出がとても嬉しかった。「不恰好で 不器用でもかまわねぇ、それもいいだろう」というずっと変わらない姿勢をしっかりオーディエンスの目に焼き付けて、ユニゾンはステージを後にした。


ライブが終わった後に客電が点くならともかく、一度照明を抑える(元に戻っただけなんだけど)って珍しいよな、と思いながらアンコール。最初に出てきた田淵先生は「機材を撤収しにきただけだから」と言って客席中から大ブーイングを食らっていた。でも、全員が揃ってからちょっと真面目な話(一言一句覚えてるわけではないので、ニュアンス)。

大きな場所でやるのは好まない、と武道館でもいつもの田淵節を炸裂させる田淵先生。でも、彼にとって武道館は並々ならぬ思い入れのある場所だという。5年前から、武道館で言うつもりの言葉を用意していた程だとか。「ダサいだろ?ボーカルでもないのに」と笑った後で、だけどその言葉は今は言わない、と。一体何を言うつもりだったんだろう、検討もつかない。その代わりに「一発ギャグでもかますか!」と前置きしてから、想いを語ってくれた。

「君の好きな音楽はこの10年間、世の中に愛されるような曲ではなかった。これからもそういうものを書きたいとは思わないし、書こうとも思わない。だから、人にすすめてくれたりすること自体は非常に嬉しいことだが、だいたいの確率でろくなことにならない。これは僕が保証します」

「だけど、君の好きなロックバンドは最高にかっこいいと自信を持っていいです。これも僕が保証します」

好きでいてよかったな、と思わされてしまうのだ。こんなに簡単に。これだけの自信を持って届けてくれるから、安心して彼らの音楽を"かっこいい"と思っていられるのだ。こういう言葉をくれてしまうから、今日もわたしはユニゾンのベーシストを"田淵さん"とは呼べず、"田淵先生"と呼び続けるしかなくなるのである。

アンコールは「3 minutes replay」「kid, I like quartet」と続いた。3枚目のアルバム『Populus Populus』冒頭の2曲だ。まさか、ここでこの2曲を続けて聴けるなんて!いろいろ工夫して考え抜かれた曲順もいいけど、やっぱりアルバムで耳馴染みのある2曲を続けて聴けると凄くテンションが上がる。「3 minutes」、聴けると思ってなかったから嬉しかったなぁ。

本当の本当に最後の曲は、「フルカラープログラム」。ユニゾンによる、「完全無欠のロックンロール」。虹色の照明も美しかったけれど、曲の後半は白を貴重としたライトに照らされるユニゾン。照明の力なんて借りなくても、音楽だけで十分にフルカラーだと思わされる。あー共感覚ほしい(結局そこ)。「フルカラー」と題されたこの曲は一体、何色に見えるんだろうって。

曲の後半、一度照明が落とされる。スポットライトに一人照らされた斎藤さんが、すっとマイクを口元から外す。「涙キラキラ西の空に光る モノクロでは説明できない」というフレーズをアカペラで、マイクを通さずに武道館に響かせる。2回の後ろの方までしっかりと届いたその歌声はとても美しくて、強くて。一連の動作と合わせて、まるで映画か何かのワンシーンを見ているみたいだった。マイクを元の位置に戻し、「完全無欠のロックンロールを」からラストまではもう、一瞬。最後は田淵先生がベースを天高く放り、キャッチし、床に置き、獣のようにステージ上を走り回る。その後ろで、鈴木さんと斎藤さんが向き合って楽器を叩き、掻き鳴らす。田淵先生が走り回っている間中鳴らされていた最後のその音が、一晩経った今でさえも強烈に思い出される。3時間弱に渡る長いライブを締め括る音を3人で鳴らし、大歓声と拍手に包まれて"何気ない記念日"のライブは幕を閉じた。

最後に、ステージに1人残った斎藤さん。少しだけ声が震えていた気がしたのは気のせいか。表情全く見えなかったので気のせいかな。

「僕らが目指しているのは、大きなところでライブをするとかじゃなくて。そういうのは結果としてついてくるのので、僕らにとって大事なみなさんの、大事なバンドでありたいです。またツアーで会いましょう。今日は楽しかった!ありがとうございました!」


ユニゾンはこの日のライブについて、あくまでも"何気ない記念日"だと言い張り続けた。結成10年(11周年)って、続けてきたのって凄いことなのに、「大々的にやるつもりはなかった」と言った。武道館という会場でのライブも、通常営業の延長上にあったと思う。ただ、普段は絶対にやらないような演出(炎だったりせり上がりだったり)を要所要所に挟んできていて。そんな様子が、"何気ない記念日"という言葉にピッタリだと思った。いつもと同じだけど、ちょっとだけ特別な日だからちょっとだけ気合いを入れた、みたいな。「記念日です!」と大々的に打ち出して「おめでとう!」「ありがとう!」の応酬になるのは照れくさいから、あくまでも"何気なく"お祝いしよう、みたいな。でも、ユニゾンのライブは結局、"通常営業"がいちばん特別だった。たった3人で、あれだけかっこいい音楽を響かせて、1万人を熱狂させて。そんな物凄いことをサラッとやってのけるからこそ、わたしは彼らを余計に好きになる。

結局、この夜もわたしは驚きっぱなしだった。わたしの大好きなロックバンドは、この日もいつもどおりかっこよかった。誰に頼まれなくたって、ユニゾンが自信を持って"かっこいい"音楽を届けててくれる限りは、彼らを追いかけよう。多分、死ぬまで。その未来まで。

ぶどうぱんくん、どこに付ければいいんだろう…


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