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吉澤メソッド #1 パートナー向けナーチャリング設計

ICCサミットKyotoに来ています。今はホテルでビールとさきいかをお供に、夜な夜な原稿を書いています(清書は会期休憩中)。

BizDevは領域がとても広く、何から話せば良いのか迷ってしまうのですが、いったん自分が今やってることをそのまま出してしまおう!と思い、初回はパートナー向けのナーチャリング設計についてお話したいと思います。B2B向けです。

パートナーと共にソリューション開発に育む

パートナーアライアンスはそのほとんどが「リード創出」という目的を持っています。ちなみに、企業によってはセールスチームがその役割を担うケースもあるかと思います。しかし、僕はその役割をセールスに持たせるのは懐疑的です。なぜなら、パートナー企業にはリードを供給してもらう以外の役割があるからです。それは何か?ソリューション開発です。

パートナーはなぜリードを供給してくれるのでしょうか?それは、そのサービスが事業ポートフォリオを埋めてくれるからです。では、すべてのパートナーのポートフォリオに自社のサービスががっちりハマるでしょうか?そうではありません。たとえハマる可能性があっても、同じターゲット、同じ顧客課題に向き合っていても、「なんか一緒にできそうだよね」というところで止まり、トーンダウンしてしまいます。むしろそれが普通でもあります。つまり、ポートフォリオを埋め合う作業をせずに、ソリューションをイメージできないまま終わってしまうケースがほとんどなのです。

その「なにか一緒にできそうだね」の状態を、自分たちの手で「これなら絶対売れるね」に変換する。すなはち、パートナーとソリューション開発を推し進め、新しい価値を世の中に生み出すことで、初めてパートナーはそのサービスの価値を腹の底から感じることができるわけです。

これらの仕組みづくりは、セールスではなくBizDevが担うほうが自然です。営業的なメソッド以上に、0→1の視点が必要になるからです。

自然消滅させずにナーチャリングを仕掛ける

一方、残念ながらどのパートナーともポートフォリオを埋め合えるかというと、そういうわけではありません。頑張ったとしてと、実際は、新しい価値を見いだせるのはごくわずかなパートナーだけ、というのが現実です。

しかし、そのチャレンジは決して無駄ではない、ということをBizDevの人たちへエールとして残しておきます。なぜなら、自分やチームのアウトプットの質をあげることができるし、パートナーと向き合って懸命に考える姿勢は、必ず「信頼」という対価へと変わります。

話を戻します。では、ソリューション開発しきれなかったパートナーはどうなってしまうのでしょうか。実際に良くあるケースは、「そのまま放置して自然消滅」してしまいます。これは実にもったいないことです。インサイドセールスによるリードナーチャリングがB2B業界で当たり前になってる今、なぜ同じことをパートナーにもやらないのでしょうか。僕は、見込み顧客へのリードナーチャリングと同じように、「パートナー向けリードナーチャリング」もすべきだと考えています。きちんと時間をかけて、各パートナーと対話を重ねていけば、きっとソリューション開発の道筋は開けると思います。もしかしたら、いまソリューション開発できないのは、単にタイミングだけの問題かもしれません。長い目でパートナーと向き合うことで、新しい価値がそこに見えてくるかもしれません。

前置きが長くなりましたが、実際にそのパートナーアライアンスを円滑に進めるためのナーチャリングメソッドをここに書きたいと思います。

がっちりハマるソリューションパートナーの見つけ方、その他のパートナーの具体的な育成方法、パートナープログラムの運営方法、ソリューション開発の具体的なステップなど、色々書きたいことがたくさんありますが、それはまた後ほど。

今回は、リード獲得までのパートナーの心理状態を整理した上で、そこに紐づくナーチャリングアプローチのポイントをご紹介します。

吉澤メソッド#1 パートナー向けナーチャリング設計

こちらは、パートナー連携のゴールを「リード獲得」に置いた場合のフレームワークです。

パートナーの心理状態には大きく2つのステップが存在します。「顧客を紹介したくなる」状態と「顧客を実際に紹介しようとする」状態です。それぞれ抽象化すると、「価値を感じている状態」と「価値を還元したくなる状態」ということになります。

この2つには大きな心理的ハードルがあります。パートナーからリードを獲得するためには、価値を感じてもらうだけでは足らず、「還元したくなる」状態を作る必要があります。

「価値を感じている状態」を作るための3つのポイント

まずSTEP1の「価値を感じている状態」を作るには、図に書いたように「VISIONの共有」「ソリューションの具体的想起」「レバレッジ」の3つのアプローチが重要です。

「VISIONの共有」では、なぜパートナーエコシステムを構築するのかを突き詰め、その世界観を伝えていきます。その理念はパートナーの心に突き刺さるものでなければいけません。自社の事業課題における理由だけでは足りません。関わる業界全体をどうしていきたいのか、経営としてのビジョンに等しいスローガンが必要だと思います。そのビジョンをパートナー向けの言葉に変換します。

「ソリューションの具体的想起」では、2つのアプローチが必要です。

自社のサービスがそもそもどういうベネフィットを顧客に生み出すのか
両社のサービスが組み合うと、どのようなベネフィットが生まれるのか

前者は、みなさんがすでに作成している事例集やホワイトペーパーなどを指します。より立体的にサービスの理解を深めることで、納得感を形成します。後者はパートナーの事業課題に対してどう自社のサービスが穴埋めするのか、粒度は荒くてもよいので、パートナーの事業プロセスに当てはめてみましょう。パートナーの営業担当者が、なんとなくでも良いので「こういうケース、こういう顧客に合いそうだな」と思ってもらう施策を考えます。

3つ目の「レバレッジ」とは、

複数パートナーとのソリューション開発
両社の顧客を巻き込んだソリューション開発

このように、複数のパートナーやお互いの顧客も巻き込み、パートナーシップの先にどの程度のスケーラビリティが待っているかを感じさせていくことが重要です。2社間ではうまくいかなくても、他のパートナーや顧客も巻き込むことで新しいアイデアが生まれる可能性もあります。他にどんなパートナーがいて、どういう顧客を抱えているのか。自社エコシステムを有機的に結びつけていくことが、価値を感じてもらうためには必要です。

「価値を還元したくなる状態」を作るための3つのポイント

STEP2にいきましょう。実はこの「価値を還元したくなる状態」を作るのは、「価値を感じてもらう」よりも難しく、工夫が必要です。僕が知っている限り、この「還元させる状態」にきちんとフォーカスしてプロモーションやナーチャリングをしている企業はほとんど見かけません。すっぽり抜けています。おそらく、アライアンスがうまく機能しない最大の理由は、このステップが抜けているためだと考えています。

たとえば1つ目のアプローチに「インセンティブ」とありますが、単に紹介手数料をキックバックすればいい、というものではありません。なぜなら、

低単価なサービスであれば紹介はしやすいが、手元に残る利益が少なく価値を還元しにくい。そのためわざわざ顧客を紹介する手間を感じてしまう
高単価なサービスであれば手元に残る利益は高く還元したくなるが、リードタイムが長く、説明にも負荷がかかるので、紹介しにくい

というジレンマを抱え、通常の代理店マージン方式だとうまくいかないケースがあります。もちろんそのサービスがどハマりしている状態であれば手数料など関係なく売ってくれるかもしれませんが、そうはなかなかいきません。つまり、インセンティブといっても単なる金銭としての対価だけでは物足りず、他の対価も考える必要があります。

2つ目は「顧客課題へのフィット感」です。ここではSTEP1で挙げた「ソリューションの具体的想起」を、より粒度の細かいユースケースへと変化させていきます。一般的な手法としては、どちらかの特定の顧客を対象にPoC(実証実験)を実施して実例を出していったり、共催セミナーを実施してアンケートを募ったりソリューションに興味のあるクライアントを探す、というのがあります。しかし、PoCはそんなにたくさん回せるものでもありませんし、共催セミナーも「やって終わり」のケースがほとんどではないでしょうか。もう少しナーチャリングの施策は工夫していく必要があります。

3つ目は「信用力」です。ここは言わずもがなですが、いくら良いサービスでも、信用できない相手とはビジネスはしたくありませんし、「まあ信用できるよね」というレベルでも足りません。「この人たちと一緒にビジネスがしたい!」と思ってもらえるようなパートナーであるべきです。Customer ExperienceならぬPartner Experience(PX)という考えのもと、情緒的価値を高め、熱量の高いパートナーシップを目指します。

「価値を還元したくなる状態」作りに集中しよう

御察しの通り、STEP2はSTEP1と比べてより工夫が必要です。「価値を還元」してもらうには、相当の努力と工夫が必要です。ここをどううまくプロモーションしていくかがリード獲得を成功させるための鍵を握ります。

ここのメソッドについては次の記事で細かく解説していきたいと思います。次回は実際に僕がReproで構築したパートナープログラム「Repro Partner Union」におけるナーチャリングプロセスとその戦略の中身を公開していきたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。BizDevに何らかの形で関わる方々、ぜひフォローとシェアをお願いいたします!

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