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留守番中に誘拐されそうになった話

メールで不審者の目撃情報を読んだ時そういえばと、ふと思い出した出来事がある。

あれは私がまだ小学校に入ったばっかりの頃だった。
私は妹二人と留守番をしており買い物に行った母の帰りを待っていた。
だらだらとテレビをアニメを眺めていたころ、ピンポーンと来訪者を知らせるインターホンが鳴った
扉を開けると見知らぬ優しそうなおばさんとおじさんが立っており、自分たちは母の親戚だと名乗った。
絶賛人見知りだった中私はオドオドしながら母親は買い物に行っていると伝えると、二人は「そうなんだね!留守番が出来て偉いね〜!おやつをあげるからついておいで」とニコニコして言った。

その瞬間私は先日学校で行われた防犯教室の授業で言われたことを思い出した。「いいですか?おやつや良いものをあげるからついておいでは、誘拐犯の手口です。絶対について行っては行けませんよ」という警察官の言葉を。

雷に打たれたかのような衝撃が走った、そして確信した、この人たちは誘拐犯だ。

外の離れた駐車場まで一緒に行こう、そこで好きなお菓子を選びなさい、その怪しさ満点の誘いを私は全力で首を横に振って拒否した。

しかし妹たちは違った、目をキラキラさせわかった!と靴を履いて玄関から出て行こうとするのである。私は必死に引き止めたが煩わしそうに「じゃあ姉ちゃんはいらないの?💢」と振り払われた。
おじさん達にもお姉ちゃんは本当にいらないの?と何度か訊かれたが私はブンブン首を振って絶対に行かないと叫んだ。

そのままおじさんたちに連れられて妹たちは出て行ってしまった。

小学一年の私は通報という発想に至らず、近所の人に助けを求めることはなぜは恥ずかしさが勝り出来なかった。そのままふらふらとテレビの前に座りクレヨンしんちゃんの続きを再生した。たった今起こった衝撃的な事実に思考が追いつかず呆然と画面を見つめ現実逃避していたが、これも長くは続かなかった。
レンタルのクレヨンしんちゃんを見たことがある人なら分かってくれると思うのだが、レンタルのクレヨンしんちゃんは最後の話が終わると「ジャ、バイバイバイ」とこちらに手を振りエンディングの曲が流れ始めるのだ。
ここでわたしはパニックになった。しんちゃんまで私を置いていくのか!

アニメも終わり途方に暮れ半泣きになりながら頭の中の冷静な自分がもう妹たちには2度と会えないのだと諭して来てひとり絶望していると、
玄関から「ただいまー!!!」と元気な声と足音が響いき驚いた私は飛び上がった。

恐々と玄関を覗くと妹たちが沢山のお菓子を抱えて立っていた。なんとおじさん達の話は本当だったのである。
おじさん達はただお留守番を頑張っている小さな子達にお菓子をあげたいだけのいい人であったことが判明した。

そのあとすぐに母親が買い物から帰宅し安心感からか、私は母親に抱きついて大泣きした記憶がある。

数年後に妹たちとこの話題になりなぜついて行ったのかと聞くと「だってお菓子くれるって言ったから」とあっけらかんと答えられた。

小さな子供は大人が思っている以上に純粋で素直で騙されやすいことを学んだ出来事であった。