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#2 泣くって意外といいもんよ

泣けるようになった話

最近、涙腺が弱くなった。
昔は1年に1、2回程度しか泣かなかったのに、
この1年ほどで急に涙脆くなって、そんな自分に自分でびっくりしています。

前回の投稿は自己紹介で終わってしまったから、本格的にエッセイを書いていくのは今回が初めて。
記念すべき初エッセイは、「涙」をテーマに書いていこうと思います。
よろしければ最後までお付き合いください。


泣くことは体にいいらしい

涙活、なんて言葉を目にすることがある。
能動的に涙を流すことで心のデトックスを図る活動、という意味らしい。

つまり簡単にいえば、泣くとスッキリするからみんなも定期的に涙を流そうぜ!ってこと。
私は初めてこの言葉を聞いた時、正直言うと、なんとも言えない違和感に襲われました。

「確かに泣くとスッキリすることはあるけれど、それを自ら行動として起こすなんて、なんで?

なぜなら、この時私は、泣くことを”悪いこと”だと思っていたから。

”泣いてはいけない”呪い

物心ついた頃から、泣いても誰も助けてくれない、という感覚があった。

私がまだ小学1、2年生だった頃のこと。
夏に家族で東京ディズニーランドへ旅行に行きました。
父はカリブの海賊というアトラクションが好きで、パークに到着すると必ず最初に乗りたがるのだけど、私はこのアトラクションが怖くて苦手でした。
(あ、今では大好きな乗り物になりました。)

全体的に暗くて、どことなくホラーな雰囲気
あちこちから聞こえる大砲の音や銃声。
怖い怖いと母に縋りついていたら、父から一喝。

「こんなことで泣くな!」

途端に涙が引っ込みました。

また別の日のこと。
学校からの帰り道、派手にすっ転んで膝を大きく擦りむいたんです。
私はこの頃、血を見るのが異常に怖くて、
痛みと血の恐怖に怯えながら自宅に帰ったのですが…

ここでも同じ。
「そんな怪我くらいでピーピー泣くな」と、父にあっさり言い放たれました。

今思い返すと、
10歳にも満たない子どもにそれはちょっと酷いんじゃない?と思うのだけど
父自身も、おそらく祖父母からそのように育てられたのでしょう。
(ここまで書いていてなんですが、父は悪い人ではありません。不器用な人なんです)

このようにして、
幼少期から植え付けられた”泣いてはいけない”呪いは、
アナウンサーになってから、さらに私を縛り付けることになります。

というのも、目が腫れるんです。

私は泣くと、目が大きく腫れる。
普段は二重に近い奥二重をしているのですが、泣くと、その面影はどこへ行ったんだろうと思うくらいぼったり腫れぼったい一重になる。
しかも2、3日元に戻らないのがまた厄介。

今週はキャスターとしての出番がある、
明日は中継のリポーターだ、など仕事のことを考えると、
こんなにパンパンに腫れた目と顔を人様に見せるわけにはいかない。
だから絶対に泣いてはいけないのだと、自分に暗示をかけていました。

泣いていいよ

人が変わるきっかけをくれるのは、やはり人だと私は思っています。

ある時、仕事で大きなミスをして先方からお叱りの電話がかかってきました。
ひどく落ち込みましたが、ミスをしたのは私。
悪いのは私だから仕方ない、と表面張力ギリギリのところで溢れそうになった涙を止めて、そのまま無理やり引っ込めようとしました。
すると、頑なに泣こうとしない私を見かねたのか、それが痛々しく映っていたのか、パートナーがこんな言葉をかけてくれました。

「さきちゃん、泣いてもいいよ。」

えっ… 泣いても良いの?
泣くことってみっともなくて、恥ずかしくて、
人に見せちゃいけないんじゃないの?

なんて事が頭に浮かんだと同時に、涙腺ダムは決壊。
次から次に涙が流れては落ち、流れては落ち。
どうにも止まりそうになかったので気が済むまで泣きました。
そうしたら無性にお腹が減って、その後に食べたご飯はいつもより美味しかったことを覚えています。

ここからです、私が自然に泣けるようになったのは。

呪いが解けた

泣いてはいけない呪いは、
泣いてもいいよ、の一言によって解かれました。

ここには、泣いてもその隙を狙って攻撃をしてくる敵はいない。
泣いても、みっともないと言って怒られたり嫌われたりしない。 
それが分かって心底安心したのでしょう。

あんなに頑なだったのに、今ではいとも簡単に泣くようになりました。
映画を見て泣く、もらったお手紙を読んで泣く、曲に感情移入をして泣く。
それで気がついたのですが、悲しい事があった時に
ちゃんとそれを外に出せると、立ち直るまでの時間も早くなりますね。

泣かないようにと歯を食いしばっていた頃は
自分の感情を整理するのにかなり時間がかかっていたのに
今では、泣いた次の日にはケロッとしていて、いつもと変わらず美味しくご飯を食べている。

大勢の人からすると、こんなこと意識するまでもなくできている当たり前のことなのかもしれないけど、私にとっては大きな一歩になりました。

泣くっていいもんよ

そうそう、今日も泣きました。
前回投稿したnoteをXにポストしたところ、ナレーターをしているお友達がリポストしてくれて、さらにとっても嬉しい言葉をくれたから。

泣けるようになったら、ありがたいと感じることや幸せを感じるハードルも下がったような気がします。

泣くって、いいもんよ、泣けるようになってよかった。

なんてここまで書いておきながら、
単に加齢の影響で涙脆くなっただけだったらどうしようね。
さて、初のエッセイ投稿だったわけですが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。




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