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『ファーストカウ』牛乳の白さにハッとする。

公開を今か今かと待っていたケリー ライカルトの『ファーストカウ』を見た。

1頭の牛と2人の人間の話。
はじまりから『ウェンディ&ルーシー』を思わせる犬と人。犬と飼い主が2体の白骨死体を見つける。見た後にこの場面を思い出すと映画に広がりがでる。

この後映されるものは彼女と犬が想像した世界なのか?実際に起こったことなのかとか。画面に映されるものの外の世界への広がりがある。

その後2人の男と牛とドーナツを中心に物語が進んでいく。

印象的だったのはフレーム内フレーム。
窓越しのショット。フォードを思い出すようなショット。西部劇だとやっぱりやりたくなるんだなあ。

自然とカメラとの距離感もいい。寄りすぎず空間的な魅力がある。
森の夜の暗さも現実味がある。誰かが映画の半分は暗闇でできてると言っていた。多分それは24fpsのコマの投射されていない時間のことを言っていたと思うのだけれど。
この映画も半分ぐらい真っ暗闇。ほとんど見えない。夜は暗いものだし見えなくてもいいじゃんというある種の見る人への信頼とか映画館という環境への信頼も感じた。

もうひとつ印象的だった牛乳の白さ。
女の子が桶で牛乳を運ぶところ。桶の中のショット。白い牛乳。ちょっと汚い。牛乳が跳ねて赤いワンピースにつく。あまりにも当たり前すぎてバカっぽいけど牛乳って白いんだって気づく。この気づきが楽しい。

全体的にいつものようにオフビートでちょっとだけ眠くなるけど面白くて寝れないみたいなテンションで見た。

『オールドジョイ』みたいなガチガチのボーイズラブじゃなくブロマンスな『ファーストカウ』
音楽がとても耳に心地よく、映画が終わった後もウィリアムタイラーを聴いてこの映画を反芻した。

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