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スイッチ

新型コロナウイルス感染拡大の影響でライフスタイル全体に制限がかかった事で、行政、教育などは言うに及ばず、様々な事が一気にオンライン化されるようになりました。

オンライン化に関してはこれまで色々な理由を付けては「変えたくない」人達の抵抗を受け、挫折するという繰り返しだったものが、否応なしにオンライン化せざるを得なくなり、すでにその世界に対応出来ていた人、辛うじて対応できていた人、全くできていなかった人の可視化が進んでいます。

地方自治体も全くテレワーク体制などないにも関わらず、出勤自粛が始まったため、やれLINE WORKSだ、zoomだと騒がしいです。
「日常的にできてないことが非常時にできるわけない」がモットーの人間として、また常々テレワーク必要っしょ!と言い続けていた身としても「こんな状況になってから騒がれてもなぁ」とモヤモヤしますが、コロナショックをネガティブな面だけでなく、ポジティブな変化を促すキッカケとして色々な行動変容に繋げていくことが必要ですし、そのための働きかけを続けていきたいと思います。

これまで

思えばこれまでのワークスタイルは「時間を切り売りする」ことで対価を得るという形でした。
私はこれを「着席パフォーマンス」と揶揄したものですが、仕事があろうとなかろうといわゆる就業時間とされている時間は「そこにいること」が必要というものです。
その日のうちに必要なタスクが終わっていても帰れません。
この1時間早く帰れれれば、早く子供を迎えにいけるよなぁとか、あと1品おかず作れるよなぁと思っても帰れません。
毎日時間休を取ってもいいですが、それはそれでゴチャゴチャ言われるのは必至なので気が引けます。
一方で「そんなのもっと早く言ってよ」みたいな指示が突然飛んできたりします。
もちろんすべて「口頭」または「職場でしか受信できないメール」のどちらかです。

自主勉強会とかシビックテックなどの課外活動では180度別の世界が広がっています。
ミーティングでは話し合われたタスクとマイルストーンがGoogleドキュメントで共有され、SNS、Slackで進捗確認がされていきます。
以下のnoteにそのあたりとてもわかりやすく書かれているので、ぜひご覧ください。

なぜそういう世界が行政ではできないのか?

もちろん「セキュリティへの懸念」からですね。

IT業界の端っこの端っこにいるモノとしては、別にそれ自体は否定するものではありません。
一方で完全に忘れ去られているなぁと思うことに、情報セキュリティというのは「可用性」も重要な要素のひとつだということです。

情報セキュリティには「機密性」「完全性」「可用性」という3つの重要な要素があり、これが全てあるシステムが良い情報システムであるとされています。
「機密性」は情報漏洩防止や不正アクセスを防止すること
「完全性」はデータの改ざん防止など
この2つはどこの情報システム部門さんも大好物で、下手すると大好物過ぎてこれしか言わないという状況すらあります。
まぁ、自治体の情報漏洩事件というのはマスコミに面白可笑しくかかれる確率が高いですし、他人のポカで責任取らされるのはまっぴらごめんだから「これだけ対策はしてました」と言いたくなる気持ちはわからなくもないのですが、ガチガチに固めたせいでデータ持ち出しはUSBメモリでやってねとか言われる中で、情報セキュリティインシデントって紙とかUSBメモリとか、システムから切り離された状態のものが無くなったってのが一定程度あるんだけど大丈夫!?と言いたくなったりするわけです。

可用性はどこへいった?

そして、きれいさっぱり忘れ去られるのが「可用性(availability; アベイラビリティ)」という最後の要素です。
「可用性」はユーザーがそのシステムを「利用できるかどうか」という度合いを表すもので、その阻害要素としては障害などによるシステム停止が挙げられます。
可用性が守られているかどうかは「稼働率」で表されるのが一般的で、Amazon Web Service(AWS)などのクラウドサービスは「年間稼働率99.7%」などの保証をしていることが普通です。

さて、ではコロナウイルス感染防止の影響で出勤自粛がされた場合に自治体システムの可用性は守られているでしょうか。
出勤自粛によって在宅勤務を余儀なくされる状態にあっても、私は自宅から必要な共有フォルダにも財務会計や文書管理などのシステムにもアクセスすることはできませんので、在宅勤務中の業務システムの稼働率は体感的には0%です。
ちなみに在宅勤務を破って緊急出勤せざるを得なかったのは、支出や起案、インターネットCMSを使わざるを得ない時だけでして、「本末転倒!」と思いながらも仕方なく出勤しました。

新型コロナウイルスによる影響は恐らく長期的に続くでしょう。
この機会に働き方も「時間切り売り型」から「タスク達成型」に大きく舵を切り、ITツールも適切に使えるように職員を徹底的にトレーニングする、「定数」という頭数を揃えることだけが人事であるという考え方を改めてリソースベースで人材の適正配置を図るなど、地方自治体も変革(スイッチ)が求められるのではないでしょうか。