見出し画像

アイデンティティ

特別定額給付金支給におけるオンライン申請に端を発したマイナンバー議論があちこちで聞かれるようになりました。
技術的な話、制度的・政治的な話が色々入り乱れていますが、ものすごく根源的な話としては「あなたが『あなた』であることを誰が証明できるのか」という超哲学的な話に帰結します。

なぜなら、多くの社会的サービスは「私を知らない人」に「私」であることを証明しないと受けられないからです。
そのために日本で作られたのが「マイナンバー」という制度です。
この辺りは以下のnoteが詳しいので、ぜひお読みください。

マイナンバー制度に関してはこちらも課題が端的に示されています。

マイナンバー制度がかように複雑な構造を持つにいたった背景には、住基ネットから続く根深い経緯があります。

住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)は、各市町村の住民基本台帳をネットワーク化し、手続きなどの効率化を目指した制度です。
しかし、以下の資料にある通り、2002年に稼働開始後、2008年の最高裁の合憲判決まで実に6年もの間、数多の違憲訴訟が相次ぐことになります。

これがトラウマのような作用を起こし、社会保障・税番号の制度を構築するにあたり、新たなシステム構築には費用が掛かるので住基ネットを活用すべきという技術的には至極当たり前の意見があったものの、ようやく勝ち取った住民基本台帳法に対する合憲判決を改正によって危機にさらすことになる可能性を考慮して、新たに「マイナンバー法」と関連する様々な法整備を行うことになったと聞いています。

しかし、今でも住基ネットの亡霊がついてまわっているために市町村住基システムとの連携がされていないなどの技術的制約が多々あり、今回の特別定額給付金事務で明らかなように「国民にとって便利」なものには到底なり得ていないことが白日の下にさらされることになりました。

色々な人が色々なことを言いますが、私が声を大にして言いたいのは「制度とルールとシステムは密接に結びついており、制度やルールがスマートでないのにスマートなITシステムを作るというような魔法はあり得ない」ということに尽きます。

以下の投稿にあるようにシステム化を阻む要因は実はまだまだあります。
自治体毎にバラバラな住民システム、外字問題、氏名表記の揺らぎ、戸籍にも住民票にも読み仮名の登録がない、公的個人認証のスケーラビリティ、住所表記の揺らぎ、住所と居所の違い、住民票と銀行口座の間の名寄せの困難さ、全銀システムや預金保険機構に於ける口座名義人の管理、個人情報保護条例の2000個問題…。

システム的に情報を寄せるために一意のIDが必要になるというのは至極基本的な話です。
私が最も腹が立つのは、今回の新型コロナという災害のような状況を見越して反対をしていたのなら良いですし、見越していなかったとしてもそれでどんなに自分が不便な想いをしてもいいと思ってくれるなら良いのですが、「気持ち悪いからマイナンバーは反対、でも給付金は早くちょうだいね。」みたいなことを言われた結果、全国各地で自治体の職員が大勢動員されてシステムから送られてきた情報を目視で確認するとか、郵送された申請書をせっせと開封するという竹槍作戦が展開されることになるということです。
結果、日本アホなの?と各国から見られる羽目になります。

韓国でも国民への支援金支給が始まり、早い場合は30分程度で入金がされると報道されていました。

このような仕組みは今の日本では到底持ちえないということだけは間違いないので、アフターコロナに向けて大きく議論が始まることを期待します。


よければサポートお願いします!めっちゃ励みになります!