バカ丁寧

「バカ塗りの娘」という映画を観た。
青森の津軽塗を継承している親子の話。
漆塗りは高級だ。
バカ塗りとはバカ丁寧に何度も塗り重ねるという非常に手間のかかる作業を指して言う。
「コスパが悪い」ものだ。
だから漆塗りっぽいもので代用すれば十分と考える人が増え、伝統工芸はどんどん後継者がいなくなりやがて廃れる。

自分の代で途絶えさせるのか、赤字続きでも細々と続けていくのか、そして大胆にアレンジして新しい工芸品として蘇らせるのか。
そういう伝統工芸品はたくさんあると思う。
長男が家を継ぎ、女の子は結婚して子どもを産むべきという価値観がまだ根強い田舎で、長男である兄は同性婚で家を出て行き、漆塗りをやりたい妹は漆塗りなどやめたほうがいいと諭される。

それでも妹は伝統を守ると決意する。
それは祖父のためでもあったが、家を継ぐのをやめて美容師になり、そして同性婚をしてロンドンで暮らす兄の影響もあると思った。
それは自分しか継ぐ者がいないからということではなく、周りから非難されようと己の道を信じて突き進むということを兄から学んだのだ。


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