行っては戻って。道を変えては、一休み。
「18歳って、もっと大人だと思ってたな〜」
「20歳になったら、もっとしっかりしているはずだったんだけどな〜」
誕生日を迎えるごとに、そんな言葉をこぼしている。理想と現実のギャップとでも言うのだろうか。毎年毎年、埋まらない溝に思いを馳せては、来年こそは、と放り投げる。誕生日は、そういう日だった。
今日、8月12日で、僕は27歳になった。
別に節目でもなんでもない歳。中途半端な歳。でも、なんだか今年は違う気がした。
27歳。自分を表す単なる数字を、はじめて心地好く感じたからだ。
いままでは、数字に追いつかない中身を憂いていた。「こうあるべき」を設定して、そこに辿り着けていない自分を持て余していた。
けれど、今年は違った。
別に、中身が成熟したとか、成長したとか。そういったことではない。悩んでばかりのポンコツだし、人見知りは治っていないし、不器用だし。立派とは程遠い。
ただ、そんな僕と27歳という数字との組み合わせを、なんだか面白く感じるようになったのだ。それは初めての感覚だった。
なんでなんだろう。
例年どおりだと、「27歳にもなって、こんなに悩んでいちゃダメだろ……」と思っても不思議じゃない。
……あぁ、きっと。人生の模索を、“僕らしさ”だと受け入れられるようになってきたんだ。
いままでは、人生の答えを見つけることが正義だと思っていた。「こう生きていく」が見つかった人生を夢想していた。それが大人だと思っていた。だから、毎年毎年「もっと大人なはずなのに……」と、増えていく数字を見てはため息をついていたんだ。
今は少し違う。もちろん焦ることもあるけれど、人生の答えを見つけることがゴールだとは思わなくなった。答えは見つかるものじゃないんだ。
行っては戻って。道を変えては、一休み。
そんな寄り道でしか味わえない景色を堪能したい。
どこかでは全速力で走ることもあると思う。でも、歩いてもいいし、立ち止まっても良い。
人生を模索するということは、人生を味わい尽くすということ。
だからこそ、こんな27歳でも不思議と心地が好いのだと思う。
27歳では、どんな景色が見られるのかな。
楽しみなことが、なんだか嬉しい。
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