見出し画像

この人たちは何を考えているんだろう

この人たちは何を考えているんだろう、と思うと怖くなる。

仕事中、ふと顔を上げれば多くの人がパソコンに向かって作業をしている。
とても真剣な顔で画面を見つめ、キーボードをもの凄い速さで叩いている。
この人たちは何を考えているんだろう。

会社の中には限らない。
朝早い時間、オフィス街を早足で歩く人たち。
他の人をかき分けてまで、駅のエレベーターに急ぐ人たち。
満員電車の中で、押しつぶされている人たち。
遅延を聞いた途端、向かいのホームに走って乗り換える人たち。

みんな1秒でも早く会社に辿り着きたいんだろうか。会社は輝ける居場所なんだろうか。
そうだったらいいけれど、そうは見えない人が多い。

じゃあ、この人たちは何を考えているんだろう。

否定ではない。僕もそのうちの一人だから。
朝早い電車に乗り、エスカレーターでは歩き、赤信号ギリギリなら走っている。
僕も立派な一員だから。

じゃあ、僕は何を考えているんだろう。

そう思ったとき、僕は何も考えていなかった。
条件反射と惰性のように体と頭を動かし、日々を過ごしているだけだった。

惰性で見てたテレビ消すみたいに
生きることを時々やめたくなる
(『ノンフィクション』平井堅)

急に怖くなった。僕も、テレビを消したくなるんじゃないかと。

そんな自分に気づき、周りの人が気になり始めた。
みんなは何を考えているんだろう、何を思っているんだろう、と。

そしてまた怖くなった。もしこの人たちが何も考えていなかったら。
多くの人が惰性のように日々を送っているのだとしたら。

そうだったら悲しいな、と思った。
そうだったら嫌だな、と思った。

今は怖さに怯えることしかできない。
でも、これから。怖さに寄り添える人になれれば。怖さを包み込める人になれれば。

そう思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 あなたが感じたことを、他の人とも分かち合いたいと思ってくださったら、シェアいただけるととっても嬉しいです。 サポートは、新たな本との出会いに使わせていただきます。