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響子と咲奈とおじさんと(28)

  目標

3月の土曜日、晋平のマンション。
「ねえ、おじさん。就職ってどうしたら良いって思う?」
「随分、漠然とした質問だねぇ~」
「う~ん、どうしたら良いのか分かんなくって、、、何になりたいのかも、、、」
「そうだなあ~、、、どんな人の役に立ちたいかな?咲奈さんは。」
「う~んとね、、、恵まれない人、、、」
「何に恵まれない人?、お金?環境?仕事?」
「何かなあ、、、それも決めらんない、、、」
「じゃ、先ず自分優先かな。」
「自分?」
「ああ、収入か遣り甲斐か、それとも誰かの笑顔かありがとうの言葉か。」
「そうねぇ、、、誰かの笑顔かありがとうかな?、、、特におじさんの、、、」
「そう言うのは今、いいです。」
「何よっ、良いじゃん。そうなんだから、、、」
「……照れるでしょうがっ!」
「へへへへ、可愛い。」
「ゴホンっ、、話を戻そう。……資格を取るか?弁護士とか司法書士、行政書士、宅建とか。」
「司法書士ならおじさんと一緒だね。そうしようかな?」
「難しいぞ。多分何年もかかる。卒業や就職にはどうかな?卒業後にそういう所で働きながら目指すなら良いかもな。」
「そうだよね、、、私の頭じゃ何年かかっても無理かもね。」
「そんなことも無いだろうけど、、、あ、そう言えばうちの事務所に公務員してて、行政書士と司法書士取って入ってきた女の人いたな、、、」
「へえ~、、凄いね。若い人?」
「うん、30代半ばで来たな、、、大学卒業して、地方公務員で埼玉に居て、結婚して、子供育てながら資格を取ったそうだ。」
「あ~、妊娠期間とか育児休暇の間に勉強したのかな。」
「うん、そうみたいだよ。って言うか、妊娠中に旦那さんが浮気したとかで、自立しなきゃって考えたらしいよ。」
「え、旦那さんの浮気が動機?、、、面白~い。」
「別れても平気ですって言ったら、旦那さん、行かないでって泣いて すがったらしいよ。本当かどうか知らないけどさ。ハハハ。」
「すっご~い。強い人だね、その人。バリバリのキャリアウーマンみたいな人?」
「ううん、若く見えるアラフォー女性だよ。世話好きの優しい人でね。酔っ払うと記憶が無くなる危なっかしい人だよ。」
「えっ、おじさん、、、特別な関係でもあるの?」
「ありません。大切な仕事仲間です。もお~。」
「ま、良いか。そういう事にしておきます。……公務員かぁ、、、ちょっと調べてみようっと。」

翌週、響子が咲奈のアパートへ来た。
「ねえ、響子は就職、どうすんの?どっか行きたいとこあったりするの?」
「就職ねえ、、、どうしようか迷ってる。どっかのメーカーか、商社か、輸出入代理店とか、、、英語のスキル、活かしたいなぁ~とか思うけど、、、帰国子女には敵わないもんねぇ~」
「帰国子女ねぇ~、、、今、そこいら中いるよねぇ~。頭の中は英語で考えて、話すときに日本語に翻訳するとか言ってた様な気がする~、、、なんか、イヤミィ~。」
「ねぇ~、イヤミよねぇ~、、、でも、そんなんとは太刀打ちできないしねぇ、、、咲奈は?」
「うん、私、得意な物、なんにも無いし、働き乍ら司法書士とか目指す事出来たらなあ、、とか思ってる。」
「司法書士っておじさんと一緒じゃん。へえ~、、追いかける 心算つもり なんだぁ~、、、、」
「ううん、追いかけるわけじゃないんだけどね。おじさんと同じ事務所に居るんだって、公務員しながら結婚して、出産して子育てしながら司法書士になった人。なんか憧れるなぁ~って思っちゃって。」
「何、そのスーパーウーマン。凄いじゃん。バリキャリみた~い。」
「それが普通の人なんだって。だから余計憧れちゃう。」
「公務員かぁ、、、成ったら成ったで向き不向きとかが分かるかなあ、、、範囲広いよねぇ、、、出来る事見つかるかなあ。」
「国家公務員って言っても、キャリア組には到底成れないんだから、ず~っと下っ端だろうけどね、やり甲斐とかあるかなあ。」
「う~ん、、、やってみようかな?公務員試験。しかも国家公務員でさ。大学にもゼミとか特別講座、有った様な気がするし。」
「うん、やってみようか。ほんとうなら、3年の内に取るらしいけど、国家公務員、、、。4年の秋の合格目指して。」
「よっしゃ。いっちょやりますか。……明日から、、、一先ず今日は飲みましょう。」
「はい、明日から頑張ります。今日は飲みましょう、、、ダイエットみたい。キャハハハ。」

咲奈は響子と一緒に国家公務員を目指すことにした事を晋平へメッセージで報告した。
”響子と一緒に国家公務員を目指します”
”大学4年の秋の合格を目指して”
”おじさんの司法書士試験の時の勉強法、教えて”
晋平から返信が届く。
”国家公務員は入省先で試験が違うと聞いた。どこを目指す?”
”共通の試験問題があるはずだし、設問が違っても方法は同じ”
”良かったら、昔俺がやった方法を教えよう”
”今週末、空いていたら参考書や過去問集を持って来なさい”
【えっ、行って良いの?、、、やったっ!月一ペースが、、、もしかして毎週?、、、ウフっ。】
【ちゃうちゃう、咲奈。お勉強だよ】
【それでも良いもん。おじさんと一緒だもん】
と言う訳で、これから咲奈は2週間サイクルで晋平のマンションへ通う事となった。


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