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日本、こんな所に都会人。ぽつんと山の中。(4)(台詞のみ)

「ねえ~ダーリンっ!、、、出来たっ!。」
「それは、おめでとう、、、って何が?」
「赤ちゃんっ!、、、多分、、、」
「……あ、、、、そう、、、、やった。……そうか、、、偉い。……じゃ、、、」
「ん?何言ってんの?テンション低っ!、、、大丈夫?、、変よ。もっと喜ぶと思ったのにィ~!」
「ああ、、、よしっ!里に下りるぞ。部屋を借りよう。さっそく探しに行こう。病院の近くっ!」
「え~、、何で?、、、病気じゃないんだよぉ~、ここで良いよ、ここが良いよ。ログハウス、途中じゃん、どうすんの?」
「里から通う。わさびもあるし。」
「ここじゃダメなの?」
「ダメじゃないが、お前にもしもの事があって、手遅れにならないようにさ。」
「もしもの事って、おなかの赤ちゃんの事?」
「いや、お前自身の事だ。子どもはいつかまた、出来る。今回出来たので、それが分かった。」
「私にもしもの事?、、、何かあるかな?」
「車で里に下りる時に事故るとか、つわりとか、妊娠中毒とか、お前の飲んでた薬の影響とか、お前が思いこんじゃうとか、、、」
「……ダーリンって、割と心配性だったの?、、へえ~、初めての発見っ!」
「発見ってのは、大抵、初めての物だけどな、、、ハハ」
「う~、、うるさい。ツッコムな。」

「よしっ。ここにしよう。病院にも近いし、コミュニティセンターへもまあまあ近い。スーパーもコンビニもある。車も2台、置けるし。」
「ねえ、何か理由あるんじゃない?下りて来た訳。」
「……俺さぁ、養子なんだ。親父とお袋の。3歳の時に貰われてきた。」
「えっ。……初めて聞いた、、、」
「そりゃ、そうでしょう。初めて話しますから。ハハハ」
「うっ、良いから続き、、、」
「俺が来る前に、お袋さん、2回流産したんだって。不妊治療を4年続けてて、、、入院もして、2回、妊娠したけど、ダメで。」
「…うん。」
「治療止めて、児相へ相談しに行って、ホームにも行って、俺と会って、来る?って聞かれて、行くって頷いたらしい。」
「すっごい掻い摘んだ話し方~、、、感動悲話とか無いの?」
「……あるよっ、で、俺が来て3年して、小学校一年の時、お袋、妊娠したんだ。」
「治療せずに?、すっごい良かったじゃんっ、、、でもさぁ、ダーリン、一人息子って言ってなかったっけ?」
「出来たの分かって、すぐ入院して、寝て、安定するまでって。でも、、、、、、六か月で死産した、、、。」
「……そうかあ、、、」
「そん時、俺の世話をするって、大型連休で、自宅に戻ってて、救急車で病院行ったんだけど、先生、直ぐには居なくって、担当外の先生だけで、、、、手遅れだったって。」
「……」
「そしたら、お袋、俺にゴメン、ゴメンって。弟か妹とか欲しかったのにね、ゴメンなさいって泣くもんだから、俺も 泣いて。」
「……う、う~、、、」
「まっ、そういう事で、お前にもしもの事があったら、また、自分を責めちゃうからさ。まっ、付き合ってよ。」
「……ゥグ、、、うん、わがっっだぁ。」
「良い子ですねぇ。」
「うん。」

「ねえ、こんなに貰っちゃったぁ~。買う物無いぐらい貰っちゃったぁ~」
「すっ、凄い!。教室のお母さん達、、、余るぐらい、持ってたんだねぇ、、、」
「うん、次が出来たら使おうと思って、大体取っておくんだって~。そしたら、作んなかったり、出来なかったりで、余るんだって。」
「じゃ、色々聞けるねぇ~。良かったねぇ~。」
「うん!ここに来て、教室持って、あの人たちに会って、本当に良かったっ!」

「ねえ、最初のころさぁ、いつ居なくなっても良い様な事、言ってたでしょ、ダーリン。」
「ああ、、、言ってたよ。」
「何で?、、、で、今頃になって、凄い大事にしてくれるし、、何でかなぁ~って思って。」
「お前、俺と一回り以上離れてんじゃん。元気で将来有望な若者が良いに決まってるしさ。それに、俺あまり収入無いし、安定してないし。」
「ふ~ん、、、自分の事、自信なかったの?安く見積もってたの?そんなのどうでも良いのにィ~。」
「え~、生活するんだぞ。暮らしていくんだぞ。収入は大事だぞ。」
「ま~ねぇ~、でもここで暮らしてると、何とかなってるじゃん。私も働き始められたし。」
「おお、お前の英会話教室は、想定外だった。教員免許まで持ってるとは知らなかった、、、お見逸れ致しやしたぜ、あねさん。」
「でへへへへっ。こんな私でも、何か役たつ事、有ったね。」
「うん、有った。てえしたもんだぜ。」
「じゃあさ、ずっと居て良い?ダーリンの傍に。」
「も、もちろんでさっ、あねさん。あっし、一生ついていきやすぜ。」
「きゃはっ。……じゃあさ、パパとママ、呼んで良い?」
「いいよ。もちろん。……ログハウス建てた後の方が良いか?このアパートでも良いか?」
「家を見に来て貰うんじゃないもん。ダーリンを見て貰うんだもん。何処でも良いよ。」
「こんな、みすぼらしい奴になんか、娘はやれない。って言われねえかな?」
「言われたっていいじゃんっ。私が選んで、ダーリンが選んでくれたんだもん。自分で決めたんだもん。」
「……子供が生まれたら、、、大丈夫かな?」
「居ても、居なくても、大丈夫。ダーリンがいれば。……だって、ダーリンは道路も作って、家も建ててるんだよ。自慢できるもん。」
「そうか。うん、、、自慢、しちゃおう。」
「そうそう。子供生まれたらさ、ログハウスに移ろうね。野生児に育てなくっちゃ。」
「野生児、、、お前は狼か?猿か?」
「ぽつんと山の中に住む、やんごとなきお嬢様です。元、都会人の。」
「おもしれえや。やっぱ、お前は。」
「ダーリンも、充分、面白いよ。」
「ハハ、ハハハハハ。」
「キャハ、ハハハ。」


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