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もう一度見たい景色

大学生の頃、九段下の駅を降りて
千鳥ヶ淵の前を通って通学していました。

春のある日、
千鳥ヶ淵は土手一面が菜の花の黄色で、その上方は満開のサクラピンク。
さらにその上方はどこまでも続く空の水色。

混ぜない絵の具のような、鮮やかな色から目が離せなくなって
少しの間、立ち止まったことがあります。

思わず立ち止まったのはその日だけで、
後にも先にも千鳥ヶ淵が、あんなに鮮やかに見えた記憶はありません。

ちょうどその日のその時間、
菜の花と桜の満開具合や太陽の位置、湿度や風向きなどの気象状況が
好条件で重なったのかもしれませんが、
土手に菜の花が咲き、桜の開花予想がでる頃になると
毎年思い出しては「もう一度見たいな」と思います。

でも、もしかしたら今の私ではダメで
そのときの私だったからそう見えたのかもしれないな、とも思います。



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