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世界までの距離〜19人になっても〜

1998年からW杯に初出場を果たしてから今回で7回目の出場となりました。初出場を果たした時に感じた「世界との差」は今回でさらに縮まってきています。

日本代表はドイツやスペインを相手にしても戦略的に戦えば「勝てるチーム」になった。
しかし「強豪国と真っ向勝負するチーム」までには至っていない。
ぐらいの立ち位置だと思います。


W杯でベスト8以上勝ち上がり、優勝までの距離をさらに縮めていくには、何が課題なのでしょうか?

私は「育成年代から戦術理解を深めていく」ことが重要だと思っています。




①身体能力ではなく戦術理解力

4年に1度のサッカーW杯が終わりました。アルゼンチンの36年ぶり3度目の優勝で幕を閉じました。

日本代表はベスト16の壁を越えることができず、日本チームが掲げるベスト8以上の目標にはこの大会でも届きませんでした。


W杯に出場すると「個人の能力」で世界との差を痛感させられます。

メッシ、エムバペの圧倒的な「個人レベル」の高さ。モロッコ代表FWのユセフ・エン=ネシリの「身体能力」(ポルトガル戦のヘディングゴールの最高到達点は2.78m)は圧巻でした。

日本人が、世界の選手よりも身体能力的に優ることはなかなか考えにくく、フィジカルで世界と勝負するには部が悪いです。

ベスト8の国を挙げると

アルゼンチン、オランダ、クロアチア、ブラジル、フランス、イングランド、モロッコ、ポルトガル

ここに日本の名前が入ってくることを考えるだけでワクワクしてきます。

初出場を果たした1998年では、ぼんやりとしか分からなかった「世界レベルまでの距離」が、今回の大会では「その距離が見える」ところまで来たのではないでしょうか。

Jリーグの各クラブやリーグ全体の強化、海外で活躍する選手のレベルアップ、日本代表チームの活動、中学高校年代の育成、小学生年代の育成、指導者のレベルアップ、フットボール文化。

課題を挙げればきりがありません。
W杯ベスト8の目標に近づくには全てのレベルを高くしていくことが大切です。

私は、その中で「戦術理解を深める」ことが重要だと思っています。


②プレス回避

日本はドイツとスペインに勝ったことで、強さを示すことはできましたが、次も勝てるのかと言われれば、まだまだ勝つ可能性は低いのが現実的でしょう。

両チームとの試合とも前半は何もできず、ただ引いて守ってるだけ。何度も崩され相手のミスに助けられた場面も。攻撃でチャンスの場面はほとんどなく、自陣深くからの前進も特に意図を持って(戦術的に)行っている訳でもありませんでした。

後半はシステムを変えて「前線からプレスをかけボールを取りに行く」戦術に変更。ドイツ、スペインの2試合ともその戦略が上手くはまり逆転勝ちに成功。
「1点ビハインドなのでプレスをかけるしかない」という状況も後押ししていました。ただ、0-0でこのような戦い方(前からプレスをかける)ができるとは言いにくいでしょう。

1点ビハインドなど得点が動かなくても、前からプレスをかけられるようにならないと、日本のレベルは世界に近づきません。

では、プレス回避(自陣深くからの前進)はどうでしょうか?
日本を倒したクロアチアはブラジル相手でも上手くボールを繋ぎながら前進していました。日本はクロアチアとPK戦までもつれ込むという結果でしたが、ブラジル相手にそんな戦い方ができるようには思えません。

W杯前に行っていた親善試合のアメリカ戦やエクアドル戦でも、日本代表は上手く前進しているとは言い難かったです。

「プレス回避をできない」ということは「前からのプレス」も上手くはできません。
自分たちが「意図を持ってボールを繋げない」のであれば「相手が嫌がるようなプレスをかけることができない」のは当然です。

「プレス回避をする」と「プレスをかける」は表裏一体です。

③保持前進

プレスを回避してハーファーライン辺りまでボールを運ぶことができれば、ここから「ボールを保持しながら」相手ペナルティエリア付近へと「ボールを前進」させなければなりません。

課題が見えたのは、コスタリカ戦でした。

日本は引いたコスタリカを崩すことができず、チャンスはあまりありませんでした。

特に戦術的意図が見られなかったのが顕著だったのは、後半15分ごろから三笘選手を投入してからでした。

1対1で相手D Fを抜き去り決定的チャンスを作れる三笘選手を活かすことは、得点の可能性を上げることに繋がります。
しかし、三笘選手がいい状態で1対1を初めてできたのは後半42分(三笘選手出場から30分近く経ってから)でした。

チームとして「三笘選手を活かす意識」はあったのかもしれませんが、そういう局面を作れないのが現状です。

コスタリカの守備ブロックの外側でボールを動かすばかり。とりあえず来たボールを次の選手へパス。

「グループで意図持ってボールを動かして、相手のプレスに合わせて、フリーランニングを入れたり、パスを出すタイミングを測ったりすることができない。」ということです。


③19人になっても

1998年に初出場を果たしたフランス大会では、全選手がJリーグ所属で海外チームでプレーする選手はいませんでした。それが今大会は19人。

2002年が4人。その後徐々に増え、前回大会の2018年ロシア大会では23人中15人でした。

海外でプレーする選手がW杯メンバーに多くいるメリットは、「海外選手との対戦慣れをしている」が大きいでしょう。足が伸びてくる。間合いが違う。ドリブルやシュートのタイミング。動き出し方。などたくさんの違いを普段の試合中に身体で感じることで「選手の経験値」が蓄積されたと思います。

海外のチームでレギュラーで活躍する選手の多くは、「そのチームの戦術に対応してプレーでも結果」を出しているはずです。
そういった選手たちが多く出場しているにもかかわらず、「プレス回避ができない」「プレスをかけられない」「グループで意図を持って保持前進ができない」に課題があるのが、現在の日本代表ではないでしょうか。

これはすぐに解決できるものではありません。選手だけではなく、チームを指揮する監督、コーチが学ぶのももちろんですが、育成年代から伸ばしていかなければ体に身につきません。

育成年代から、「どうすればプレス回避や保持前進ができるのか」を知り、「プレーを何回も何回もこなして」体で覚えていくしかありません。

今の小学生年代のサッカーのプレーは、大きい選手や足が速い選手が優位になり、活躍することが多いです。
「全日本少年サッカーに出場する」という目標が各クラブにはあります。強いクラブには上手い選手が入ることが多いのでクラブは経営面の影響から「強いクラブを目指します」
選手が少ないと収入が少なくなるので、経営が厳しくなります。

試合のルールで見てみると、海外のようなオフサイドゾーンはなく、前からプレスをかけられるようなルール。ピッチの広さと人数を見ても、前からプレスをかけられれば、試合に負けるリスクを考えると「前線にボールを大きく蹴る」という思考に選手は成りがちです。
指導者も「後ろから繋ぐ」「自陣ゴール前でボールを失う確率が上がる」「失点の可能性が上がる」「試合に負ける」「全国大会に出場できない」「チームに選手が入ってこない」「クラブ収入が減る」という流れになるので、なかなか「後ろから繋ぐ」とは成りにくいのが、現状ではないでしょうか。


そのような環境で子どもの頃からプレーをしていくだけで、「プレス回避」や「プレスのかけ方」を身に付けるのは、かなり厳しいです。

身に付けるには、プレス回避を学び、プレスのかけ方を上手く実行しないと「成立しないプレー環境」でプレーをしていくことが良いと思います。

フットサルは自陣から4対4の数的同数での前進が求められるスポーツです。スペースが狭く選手がプレーを判断するまでの時間も短いので「判断スピード」が求められます。
「プレス回避」や「プレスのかけ方」は、サッカーよりも戦術的なことを多く求められます。

その環境下で子どもうちからプレーを続けていくと、戦術的な知識が増えて、体が身に付いていきます。

サッカー選手の多くはフットサルをプレーしたことが余りないので、体感したことがなくイメージがしにくいと思いますが、学べば学ぶほど、フットボールが見えてきて、サッカーをまた違った視点で見ることができます。


〜終わりに〜

先日、15歳の甥っ子が私のフットサルチームの練習に参加をしてくれました。
「プレー中ずっとセットプレーをしている感じ」「フットサルは絶対いるわ」と感想を教えてくれました。

彼はu-13ナショナルトレセンにも選ばれた経験があるので、技術的にはトップレベルです。
テクニックアクションのレベル高くても、戦術的な動きやタイミング、フリーランニング、フェイクなどが、できずプレーするのに苦労していました。

戦術的なことを子どものうちから身に付け、世界と勝負していくことが、今後さらに求められていくと思います。




日本サッカーW杯優勝をみんなで観る!


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!



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