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贅沢な悩み

こちらのコンテストに応募したいなと思いながら徒然と書いています。

 ここ最近ずっと「何を書こう?」と考えているうちに日々が過ぎてしまいます。いや、最近どころか10年以上そんなことを考えながら生きていますが、やっぱり4月5月の引きこもり生活ではこの悩みが尽きません。
 大抵は悩んだ結果何かしら書いているけれど、この記事ではなかなか書けていないもやもやした思考を言語化していきたいと思います。


 いきなりですが、大学の同期の話をします。仮にOさんとしましょう。
 Oさんは友達と呼んでいいのかもよく分からない間柄なんですが(そして今更その距離が縮まることはないと思っていますが)僕が出会った中で一番「生まれ持ったもの」が自分と似ていると感じた人です。
 一方的に汲みとっただけのものもありますが、Oさんがネット上に晒した文面からこれだけのことが言えます。

 家族構成も似ているし親の経済力もきっとそう変わらない。頭の出来も近いから大学の同期なのだし、同性より異性の友人とつるむ方が楽だと感じるのも同じ。同性のグルーピングでは大人しくてオタク気質な面々と一緒になりがちなのに、本当はキラキラしたリア充と趣味嗜好が近い。自分にもっと会話力があればと思いながら今日も文章を書いている。あと、自分の書く小説は誰が何と言おうが最高だと自負しているところ……。

 逆に、決定的に違うものも2つあります。

 僕は親に恵まれたけれど五体満足な身体には恵まれなかった。逆にOさんは五体満足な身体に恵まれたけれど親には恵まれなかった……らしい。

 もちろん相違点なんていくらでもあるでしょうが、本質的に似ている2人を全く違う方向に導いたのはこの2点ではないかと思ってしまったのです。


 僕の両親は過保護な放任主義とでも言いましょうか、子供たちに自由にやりたいことをやらせるための手間を惜しまない人たちです。18歳から車椅子ユーザーの僕は姉弟たちの中で特に甘やかされて育っており、現在は実家でのほほんと暮らす契約社員です。
 Oさんの場合、早く親元から離れたいという自立心が強かったようです。現在既に結婚してお子さんがいらっしゃいます。

 ちなみにOさんは性的にも早熟だったようですが、親の庇護下でぬくぬくしていた僕はかなり未熟と言えます。前述の「異性の友人とつるむ方が楽」という点でも、僕は意識してない・されない気安さを享受していましたが、性を武器にできるから異性の方が楽なんだそうです。
 Oさんの「自分はまだ何者でもない」「同級生には起業した人や本を出版した人もいて」という言葉を見た時はつい、僕なんか親のすねをかじって本を出したし結婚どころか恋愛とも縁がないし……なんてことを考えました。お互い無い物ねだりもするようです。人間だもの。

 それと面白いことに、ここまで違う環境へ進んだにも関わらず僕もOさんも自粛生活が始まるまで仕事と学校と趣味にキャパオーバー寸前な生活を送っていたのです。もちろん去年まで引きこもりだった僕の方がキャパシティは断然少ないですが、やってることがそっくりだと気付いてやっぱり本質は似てるのかなと勝手に思っている所存です。
(ここまで書いたらさすがに相手にバレる気がするのだけど、その時はその時で)


 さて、何故Oさんの話を始めたのかというと……完全に僕の言葉に意訳してしまったけれど、以前こんなことを書いていたからです。

 不幸な人間の書く文章ほどもてはやされがちなのに、自分は上手く不幸になれなかった

 自らの不幸体験を落とし込んで書いた小説やエッセイの方が説得力があるし真に迫っている(と受け取られる)から、自分はこんなに酷い目に遭ったんだと書けるものなら書きたい。でも、上手くできなかった。
 そう解釈した時「分かる!」と叫びたくなりました。


 Oさんは両親との関係も性的に早熟にならざるを得なかった過去も、さらりと書いた上でどうせならトラウマにできればよかったのにと記していました。
 僕もまた、せっかく(?)身体障害者なのにそれを活かした文章は書けていません。だって障害を乗り越えるとか……歩けないから無職の引きこもりを誰にも咎められなかったんだぜ? 障害者雇用枠のおかげでいい会社に就職できたんだぜ? どこに乗り越えるハードルがあるのでしょうか。

 加えて僕は、両親のおかげで無邪気なハッピー野郎に育ったので不幸にはなれません。だからこそままならない事態には対応できず僕が幸せになれないのは僕が幸せだからではないかと、そんな二律背反の命題のようなものをずっと考えています。贅沢な悩みです。


 いや、分かっているんですよ。この贅沢な悩みを小説に落とし込むには、僕が一番ままならなさを感じて無い物ねだりをしている恋愛方面で「現実を見なさい」と主人公を叱りつけてくれるキャラクターを描かねばなりません。……急にキツすぎる。
 僕は「普通に」恋愛して「普通に」結婚している人間を目の当たりにすると、身体障害者にはハードルが高いと弱者に身をやつし、実家というぬるま湯に一生浸っていたくなります。今はステイホームですしね。出会いなんてあるわけないですよね……ともう少し目を背けていてもいいでしょうか。

PS.同期のOさんへ、勝手に引き合いに出して申し訳ありませんでした。あなたの書く文章をいつも密かに読ませていただいてます。

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