オーディションもプロレスも“ミックス”はよくない!

Nizi Projectのオーディションについて、AKBや ASAYAN、もしくはこれまでの韓国オーディション番組などと比較している文章をいくつか見かけるが、Niziプロが受けた大きな理由として「視聴者投票を入れなかった」とゆーのが大きいと、個人的には思う(日テレが「虹かけランキング」とゆー意味不明の人気投票はやってはいたが、メンバー選考の結果とは関係ないはずなので除外)。

こーゆーエンターテインメントにおける審査には、大きく「大勢の民意による多数決」か「少数の玄人による独断」の2つがあり、何をどう取り入れるかによってそのオーディションの性格が決まる。

「大勢の民意による多数決」で大事なのは、徹底的にガチンコでやること。決定権を視聴者に委ねている以上、主催者に「誰かを勝たせたい」とゆー思惑があったとしてもじっと我慢して、視聴者に結果を委ねないと、多数決による正当性の根本である視聴者との信頼関係を損ねてしまう。

K-POPで代表的なオーディションである、プデュことProduce 101では、国民プロデューサーとゆー視聴者投票で決まるオーディションだったのだが、集計の不正でスタッフが逮捕。メンバーに罪はないのに、X1は解散するに至ってしまった。IZ*ONEだって、この不正疑惑が無ければもっと人気が出ただろう。

一方「少数の玄人による独断」で大事なのは、その「玄人」の審美眼への信頼性。「この人が選ぶなら間違いない」と思わせるだけの人でないと、その審査への疑問がわく。

例えばテレ朝「ラストアイドル」の初期でやってたバトルは、審査員のうち1名が勝敗を決する形をとっていた。おそらく秋元康の「多数決で面白いアイドルは生まれない」とゆー思想を反映しているものと思われるが、どーやっても審査員の審美眼に疑問は残るので、たびたび炎上したのだろう。

一番ダメなのが、「視聴者投票」と「玄人の独断」のミックス。TWICEを生んだSIXTEENでは、基本的にJ.Y.Parkが選んでいながら、グループ審査の場面で観客による視聴者審査を導入してしまったせいで、視聴者投票による最下位グループから、J.Y.Parkの意に反して脱落者を選ばざるを得なくなり、モモが脱落。しかし何故か脱落したはずのモモが最終回で復活してTWICEにメンバー入りするとゆー、オーディションとしてはわけがわからない展開になってしまった。

例えばお笑いのコンテストでも、似たことがある。

昔、「お笑いスター誕生」といったお笑いのコンテスト番組では「えらそうに審査してる審査員は、出場者よりも面白いネタができるのか?」と、B&Bや小柳トム・とんねるずらを審査する唄子啓助や桂米丸師匠らに批判が集まったものだ。

それに対して、視聴者投票を導入したのが「爆笑オンエアバトル」で、100人の観客により目の前で転がされたボールの重さだけでオンエアの有無を決めるとゆー徹底したガチンコで支持を得た。

M-1の決勝も、確か第1回は、玄人の特別審査員と、視聴者投票の一般審査員の合計得点で決めていたが、ミックスはやはりよくないとゆー議論があったのだろうか、すぐに視聴者投票はなくなった。M-1もここ2回、上沼恵美子の得点に対する疑問が話題になっているが、M-1が「玄人の独断」で決めると決断した以上、こーゆー批判は意味がない。ジャッジの基準が存在しないのに「ジャッジがおかしい」とゆー批判そのものが、成り立つはずがないのだ。それが嫌ならボクシングみたいに「爆笑=2ポイント、小笑い=1ポイント、スベリ=マイナス1ポイント」みたいなポイント制を採用するか、または完全に視聴者投票にするかしかない。

話をNiziプロジェクトに戻すが、Niziプロで視聴者投票を行わないことは、当初から決めていた確固たる方針なのか、それともコロナ禍による偶然の産物なのか、はわからない。HuluのNizi ProjectのPart2で作られているステージ・セットには客席スペースらしきものも広めに設けられているので、もしかしたら当初はSIXTEENのチームバトルみたいに観客投票も想定にあったのかもしれない。一方でHuluでの配信スケジュール的にはかなり撮り溜めを前提としていたので、投票の反映はもとから考えていなかったかもしれない。正解がどちらなのかはわからないが、結果的には観客投票をいっさい廃したことが、Niziプロの高評価に結びついたと思う。

ここで問われるのは、審査員であるJ.Y.Parkの審査眼の信憑性であるが、番組ではJ.Y.Parkの神格化が徹底的に行われている。番組冒頭で「世界的プロデューサー」としてこれまでの実績を嫌というほど印象付けるだけでなく、途中でJ.Y.Parkのコンサートを練習生が見学して感動するシーンを入れたり、スタッフも相当気を使って接している。更にJ.Y.Parkは自身がパフォーマーでもあるので、審査コメントに説得力がある。太ったアイドル・プロデューサーが「やせろ」というのと、J.Y.Parkが「ダンスに大事なのは体重管理です。僕も毎朝体重を測ってご飯を制限しています。かっこよく踊りたいからです」というのでは、説得力が違うのは必然だろう。

JYPのオーディションには、「結局、餅ゴリ(J.Y.Park)の好みじゃねーか」とゆー視聴者からの批判も結構ある。先述のTWICEのモモもそうだし、NiziUも「落選メンバーの方がダンスも歌もうまい」とゆー批判は少なくない。ただこの批判は、「玄人の独断」でいくとした以上、当然といえば当然で、逆にいえば「餅ゴリの好み」に徹底したからこそオーディションは成功したのだと思う。歌とダンスが上手い人を上から9人選ぶだけなら、ある意味、誰でもできる。そこで「実力は足りてないけど、このメンバーを入れる」「上手いけど、この人は落とす」とどこで自分だけの目を反映させるがプロデューサーの腕の見せ所なのである。


プロレス興行でも「プロレスとガチンコのミックスはダメ」と言われていたが、それはオーディションでも同じなのだ。

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