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⑧スルーハイカーの装備

4日から5日のハイキングで必要なテント泊装備は、実際のところ1泊2日のテント泊装備とたいした違いはないでしょう。違うのは4~5日分の食糧を持たなければいけないということ。仮に1日1kgの食糧が必要だとしたら、計5kgの重量になります。そして水は行動中に摂取する分として、1日最低2リットル以上は持ち運びますので、基本装備以外の水と食料だけで7kg前後になってしまいます。

ある女性が信越トレイルをスルーハイクした記事を拝見すると、装備重量が水と食料を合わせて20kgだったそうです。山に行き慣れたエキスパートなら20kgは当たり前かもしれませんが、この女性は荷物の重さで疲労困憊だったと言っています。

水と食料で7kgだったとして、20-7ですので、この女性の装備の基本重量は13kgだったと計算できます。アメリカのロングトレイルを歩くハイカーたちの平均的な基本重量(水と食料は除外)は大体5~7kgくらいだそうです。おおよそ9kg以下になれば「ライトウェイト」と言える重量になりますので、先の女性の13kgはやはり「重い」と感じます。「水と食料を抜いて10kg以下」、「可能なら7~8kg」、アメリカとの気候の差を考慮しても、日本の低山を歩く上での基準は、このあたりではないでしょうか?特に過激な軽量化をしなくても、最新装備を持たなくても、余計な物を持たない工夫で、もう少しだけ装備を軽く出来れば、女性でも楽に歩くことが出来るのではないかと考えられます。

信越トレイルは森に守られた穏やかなトレイルです。暴風雨の影響を受けにくい地形です。気温がうんと下がることも稀です。過剰な装備はなるべく減らして、体の負担も減らして快適に歩きましょう。

以下、スルーハイクに必要な基本的な装備を順に挙げていきますが、あくまでサンプルです、個々のアイテムではなく、要らない物をいかに減らすか、と言う点に着目してください。

【注意】以下の装備は標高1000m前後の樹林帯を歩く装備です。高所登山とは安全基準が異なりますので転用は出来ません。


現代的なライトウェイトハイカーの場合
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■信越トレイル 9月 3泊4日 スルーハイク ソロ
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バックパック(50リットル)
防水袋
テント(シェルター)
ペグ(6本)
防水シート
寝袋(夏用)
マット(インフレータブルマット)
寝るときの着替え(上下一式)
着替え(下着・靴下1セット)
雨具(傘、防水ジャケット、レインスカート、防水ソックス)
調理器具(ガスストーブ、鍋、食器、スプーン、ライターその他)
水筒(5リットル分の水筒+ペットボトル2本)
浄水器
トレッキングポール(2本)
その他1(薬、リペアセット)
その他2(手ぬぐい、モスキートネット、サングラス、地図)
その他3(携帯、カメラ、予備バッテリー、時計、ライト、三脚)
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以上の基本重量で5kg・・・①
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食糧(4日分)実質3日分/1日1kg換算で3kg+α
水(平均2リットル)
燃料(250サイズのOD缶)
トイレットペーパー
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食糧と水とその他で6kg・・・②
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後は身につける衣服や帽子、靴などです。
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①と②を足したバックパックの中身が11kgです。上記の女性と比べても、トータルで9kgも違います。女性と比べれば着替えや化粧品などで違いが出ますが、それだけで9kgも差が出るはずはありません。基本重量を10kg以下、せめて7~8kgくらいに出来れば、食糧&水を加えた総重量が15kg前後となり、体の負担がもっと減ると思います。

■以下、標高の低い信越トレイルになら充分対応できる、装備全体のイメージです。

バックパック(夏用と秋冬用の2つがあれば対応可能)
テント&タープ(雨風の影響の少ない信越トレイルは脱山岳テントで)
寝袋(夏用と3シーズン用があれば充分)
マット(ロールマットのほうが軽いですが、エアマットやインフレータブルマットのほうが寝心地は快適)
防水シート(床の無いテントやツェルトで使います)
着替え(寝巻きと下山後の着替えを兼用)
保温着(ダウン衣類、ニットキャップ、就寝用ソックス等)
ソックス(歩いている時の2~3足と寝る時の1足があれば充分)
雨具(上下セット、ポンチョ、傘、防水ソックス、防水手袋など)
調理器具(ガスストーブ以外でもアルコールストーブでも可、チタン鍋、食器はジップロックなど)
水筒(ペットボトルやプラスチック水筒)
浄水器(色々なタイプがあるので好みのスタイルで)
その他の小物1(薬やリペアセット)
その他小物2(タオル、モスキートネット、地図、コンパス、ホイッスル、小物入れ)
その他小物3(携帯、デジカメ、予備バッテリー、ヘッドライト、三脚)
トレッキングポール(足の負担を確実に軽減)
傘(林道や広い場所ではあると便利ですが、場所によっては木々が邪魔で使いにくい場面も)
サンダル(あると超便利)
トイレットペーパー&スコップ(日数分計算する、使ったペーパーは持ち帰る)
ハイキング中に身に付ける衣類(消臭防菌効果の高いメリノウールが中心、化繊は臭う)
シューズ(スニーカーで充分、履き慣れたブーツでも勿論OK)
ウィンドジャケット&パンツ(肌寒いときに着用、着替えとしても機能)
残雪対策(軽アイゼン。6月末まで残雪あり、特に鍋倉山周辺)


■装備サンプル
晩夏の信越トレイル、3泊4日


■他、装備の乾燥について

ハイキング中の「仕事」、それは装備の乾燥です。

1泊以上のハイキングの場合、2泊目以降を快適に安全に過ごすにはとにかく「装備を乾かすこと」です。

【濡れの原因】
テント内の結露で寝袋が濡れる
自分のかいた汗で寝袋が濡れる
ハイキング中の汗で衣類が濡れる
雨の中のハイキングで衣類が濡れる

【濡れによるトラブル】
特にダウンの防寒具や寝袋は、自分のかいた汗だけでも湿気を含み、日中の乾燥を怠ると次第に保温力が低下します。寒い夜を過ごさないためには「寝袋を濡らさないこと」、これはハイキング中もっとも優先される注意事項です。

【対策】
日中太陽が出ている間はこまめに乾燥、休憩のたびに濡れた装備を広げて乾燥、衣類も乾燥、シューズとソックスも脱いで乾燥、ついでに足も乾燥、とにかく乾燥です。悪天の場合、濡れた衣類は自分の体温で乾かしてください。最後の手段としては、お湯を沸かしてプラスチック水筒の中に入れ、アイロンがけする方法があります。

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