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「熱海の森に、新しい風を」ーNPO法人熱海キコリーズ 代表 能勢友歌さんー

はじめに

 熱海市で森林保全活動に取り組むNPO法人熱海キコリーズは、小学生向けの自然教育「森の学校」を実施しています。熱海キコリーズの代表である能勢友歌さんは、静岡県が令和4年8月に伊東市生涯学習センターひぐらし会館で開催した知事広聴「平太さんと語ろう」に登壇していただきました。今回は、「森の学校」を含めた熱海キコリーズの活動について紹介します。

熱海キコリーズ

NPO法人熱海キコリーズ「熱海の森に新しい風を」

 熱海キコリーズは、平成28年から平成29年にかけて、熱海市の自伐型林業研修に参加したメンバーが、研修終了後に荒廃している森林を保全する森林保全ボランティア活動を行う組織として平成29年3月設立されました。その後、長期的な森林保全の観点から活動の幅を広げるために、令和2年から熱海キコリーズをNPO法人としました。メンバーは、他に本業を持つ21人で構成されています。
 熱海キコリーズは、「熱海の森林に新しい風を」というビジョンを掲げ、持続可能な林業や地域復興の実現を目指し活動しています。主な活動としては、間伐等による森林保全事業、それらの間伐材を活用した製品作成、そして森林を活用した体験・教育事業などを実施しています。

熱海キコリーズ代表 能勢友歌さんについて

 熱海キコリーズの代表である能勢友歌さんの出身は岐阜県で、森に囲まれた環境で過ごしてきたそうです。平成25年に都内から熱海市に移住し、本業である都内での仕事をリモートワークで続けながら、熱海キコリーズの活動をしてます。メンバーとは、物々交換をして助け合ったりするなどプライベートでも仲が良いそうです。能勢さんと同じく熱海へ移住された方もいて、“価値観が近い仲間”であるとお話されていました。
 熱海の魅力は、森と海が近くにあり、自然の中で遊べる場所が多いところが魅力的だと教えていただきました。

子どもたちに森の生き物を紹介する能勢友歌さんたち

「森の学校」について

 2023年4月から、熱海キコリーズと、南熱海のお寺「富西寺」が協力して行っている「森の学校」は、富西寺の森を活用した小学生向けの自然教育活動です。月に1回、約10ヶ月かけて、「富西寺の森を一緒に作ろう」をテーマに、子どもたちが森の中で見たもの、触れたもの、感じたことから、「森にあったらいいな」を考え、それを形にしていきます。このプログラムを通して、子どもたちの五感や「生きる力」を育むことを目的としています。

「森の学校」運営チーム


 今回は、「森の学校」の第3回(R5.6.25実施)の様子を紹介します。


1 森に入る
 2人~3人のグループに分かれ、虫眼鏡を使って森の生き物を観察しながら森の中へ入っていきます。

森に入っていく様子


2 森の中の「秘密基地」にあったらいいものを考え、発表
 
今回は、「森の“秘密基地”にあったらいいもの」をテーマに、グループの中で意見を出し合います。森の中にある竹や葉、空間を見つけ、アイデアのヒントにしました。
 意見を出し合ったあとは、グループごとに発表をしました。秘密基地には色々な人が集まることを想定し、「遊べる場所」「休憩スペース」「竹などで楽器を作り、演奏会をする」「ハンモック」「ブランコ」「落ち葉のプール」など子どもたちの豊かな発想により様々なアイデアが生まれました。

意見を出し合う様子


グループごと発表をしている様子


3 みんなで協力して作る
 
アイデアの中で多数決を行った結果、今回は秘密基地の「遊べる場所」である、「落ち葉のプール」を作ることに決定しました。まずは、木と木の間のくぼんでいる空間を見つけ、そこにある不要な枝を取り除き、最後に落ち葉を集めて入れていきます。子どもたちの中でも年長の子が仕切り、年少の子たちへ指示を出すなど、自然と役割分担をして取り組んでいました。
 作っている途中で、土の中に埋まっている網のようなものを発見し、回収するためにみんなで引っ張る場面もありました。子どもたちは「秘密基地にはゴミがあってはいけない」と、森を綺麗にしながら秘密基地を作っていました。

協力して落ち葉を集める様子


森の中で発見したゴミを引っ張る様子
使いやすいように木を切る様子



4 「落ち葉のプール」完成
 
秘密基地の中の遊べる場所「落ち葉のプール」が完成しました。子どもたちは「落ち葉を拾うのが楽しかった」「ゴミを引っ張るのが大変だった」と感想を言っていました。

落ち葉でクッションができているか確認する様子


5 次回に向けて
 
次回は、「落ち葉のプール」の上に「ハンモック」を作ったり、2本の木を利用して「ブランコ」を作る計画を立てていました。
 
 今日の内容を振り返り、能勢さんは「大人が考えたものを作るのではなく、子どもたちのアイデアを大切にし、みんなが作りたいものを実現したい。」とおっしゃっていました。また、キコリーズの他のメンバーからは、「当初想定していなかった発想が生まれ、子どもたちの自由な発想で最終的なゴールがどのような形になるのか楽しみ。」「第2回までは個人作業だったが、今回からはチームで作業を行い、自然と役割分担ができていた点が良かった。」という感想を伺いました。
 参加者の保護者からは、「子どもの頃に自然と触れあうことで、山や自然を身近に感じてほしい。」「友達と一緒に自然体験ができる機会が貴重であり、子どもたち自身もとても楽しそう。」といった声を聞くことができました。


さいごに

 今日の取材を通して、キコリーズの皆さんが「仲間を大切に」しながら活動されていることが伝わってきました。「森の学校」の参加者の子どもたちは、学年も学校もバラバラですが、回を重ねるごとに、キコリーズの皆さんのような良いチームワークが生まれ、「生きる力」を育むことが期待できます。
 能勢さんは、活動する上で、“一般市民の方と一緒に作る森林空間”を心掛けているそうです。「一般市民の皆様と森を共につくることで、ちょっと遠くに感じている森という存在に愛着を持っていただき、森が身近な存在になってほしい」とお話されていました。熱海キコリーズは、本日紹介した「森の学校」の他にも様々な活動をされていますので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

※掲載している情報は取材時のものです。

                         (担当:中野)