まちづくり応援スイーツ&ブレッドSDGs食品ロス削減プロジェクト「まちぐるMe」

 富士市と連携して地域課題を解決する「まちぐるMe」という事業を実施している富士コミュニティエフエム放送営業部長の佐野智恵子氏にお話を伺った。

まちぐるMeロゴ

まず、「まちぐるMe」という事業がどういうものなのか教えてください

 静岡県富士市において、「食品ロス」と「まちづくりの担い手不足」のそれぞれの課題の同時解決を目指しているプロジェクトです。
 私自身、日々のラジオ放送や取材において、地域の方々が抱えている課題や問題を耳にしており、地域に根付くコミュニティ放送として何かできることがないかと考えていました。
 市内のパン・ケーキ店からは、日々、「食品ロス」に悩まされており、量はごくわずかですが、心を込めて作った食品が廃棄されてしまうことに心を痛めており、その使い道を模索している店舗があるというお話を伺いました。
 また、地区まちづくり協議会では、「担い手不足」が課題となっており、役員を喜んで引き受けてくれる市民や高いモチベーションでまちづくりに関わってくれる市民を増やしたいと考えていることを知りました。
 そこで、「食品ロス」と「まちづくりの担い手不足」を一度に解決できないかと考えて始めたのが、「まちぐるMe」というプロジェクトです。
 地区のためにボランティアで活動をしている協議会の役員や協議会に所属する各種団体の役員に対して、地域のパン・ケーキ店から日々の感謝の気持ちを込めて、消費期限が迫る食品を割引価格で提供することで、「食品ロス」と「地域の担い手不足」の両課題を同時に解決できるのではないかと考えました。
 富士市にはSDGsに関連する事業の補助金があり、それを活用して取り組んでいます。まずは社会実験として地区を絞って展開し、効果検証を行った上で、その他の地域へも活動を拡大していけたらと考えています。

どのような仕組みで「まちぐるMe」を運営しているのでしょうか

 プラットフォームとしては、LINEのオープンチャットという機能を活用しています。協力店舗のパン・ケーキ店で商品に売れ残りが出そうだと判断した際に、割引情報をオープンチャット上に投稿し、協議会の方たちは、その割引情報を見てパン・ケーキ店に購入しに行くという形を取っています。
 オープンチャットでは、トークルームに参加する際に管理者側で参加者を限定することができ、さらに、富士市では新型コロナウイルスのワクチン接種の予約をLINEで受け付けていたことで、協議会の方たちの多くが既にLINEを活用していたため、参加者を限定したいが多くの方に使ってもらえるプラットフォームとして、オープンチャットを採用しました。

オープンチャットの様子

「まちぐるMe」の現状と見えてきた課題はどのようなものがありますか

 今回の事業は令和5年3月12日までを一旦の区切りとしました。事業開始から約2か月経過しましたが、残念ながら、協議会側の参加者があまり増えていない状況でした。協議会には約220人の対象者がいますが、そのうちの約20%程度しか「まちぐるMe」に参加登録してもらえていませんでした。ただ、こちらについては、そこまで課題には感じていなく、今後、総会等で周知することで参加登録していただける方が増えると思っています。
 それよりも課題に感じていることは、協力店舗の方にこの取組が「マイナス」であるというイメージを持たれないようにすることです。協力店舗は「夕方になると安く売る店」「その時間に行けば安く買える」というマイナスイメージが広がることを何よりも危惧するため、協議会の方以外に割引情報が伝わらないという点でも、オープンチャットが非常に有用でした。

「まちぐるMe」を実施して、協議会の方やパン・ケーキ店の協力店舗からどのような反応がありましたか

 協議会の方からは、これまで家族サービスをできずに役員活動をするという後ろめたさがなくなったというお声をいただいています。これまで、報酬のない役員活動をしていたため、家族から不満が出ていたそうですが、おいしいパンを安く買えるという報酬ができたことで、役員活動に参加することを家族も喜んでいるようです。
 また、協力店舗からは、実施前と実施後で30%ほどの食品ロス軽減や売上増加につながっているという声を聞いており、比較的好印象です。この事業をきっかけに新しいお客さんが増えたようで、新たな客層の獲得にもつながったとも聞いています。

販売の様子

今後の展望はどのように描いていますか

 令和4年度は社会実験として実施したため、実施エリアや協力店舗の数もあえて限定して実施しました。この結果を生かして、令和5年度は富士市全域にこの活動を広げていく予定です。
 全域に広めて行くにあたって、何よりも大事なことは、やはりこの事業が「ただ安く買える仕組み」と勘違いされないようにすることです。この事業は「食品ロスを減らして地域の担い手不足を増やす」取組であることを総会等でしっかり説明をして、協力店舗には「ブランド力を落とすネガティブキャンペーン」ではなく、「地域の担い手を増やして地域の安全安心を守る社会貢献」という認識を持ってもらうようにすることが必要だと思います。
 皆さん一人一人にしっかり丁寧に説明して、協議会の方にも、協力店舗にも、安心してこの事業に参加してもらえるようにしたいと思っています。
 目標としては、2030年に、富士市内全域の地区まちづくり協議会と協力店舗20店舗を目指しています。

協力店舗(pain de kafuu(富士市錦町))
協力店舗(自由なパン屋わらっく(富士市日乃出町))

最後に「まちぐるMe」で活用された富士市の補助金制度の御紹介します

○名称:SDGsプロジェクトエッグ応援補助金
○目的:プラットフォーム登録プロジェクトのうち、富士市から世界を変えうる事業等を「FUJI3Sプロジェクトエッグ」として、富士市が認定し、その自立化を支援する。
○対象事業:当該年度に認定されたFUJI3Sプロジェクトエッグ
(SDGsに資する製品、役務又は活動であって、富士市SDGs推進本部からFUJI3Sプロジェクトエッグの認定を受けた事業)
○補助率:補助対象経費の4分の3以内(上限75万円)
○補助対象:(製品・役務)市場調査や市場投入に係る商品モニタリングや広告費用等
(活動)活動開始直前から活動拡大までに係るイベント開催や広告費用等

 令和5年度からは新たな枠組みとして、自己負担分が負担できない団体や持続可能なプロジェクトを創設するために、クラウドファンディング型を設けています。これに併せ、富士市SDGs応援団登録の金融機関が補助金受領までの短期融資を用意しており、金利や手数料も補助対象経費に計上できます。資金繰りに悩まず全力でSDGs活動に邁進できます。

○名称:SDGsプロジェクトエッグ応援補助金(クラウドファンディング型)
○目的:同上
○対象事業:当該年度に認定されたFUJI3Sプロジェクトエッグ
(非営利法人又は任意団体が計画するSDGs活動であって、富士市SDGs推進本部の選定を受け、富士市SDGs推進事業に対し寄付する企業等から既定の応援を集め、FUJI3Sプロジェクトエッグの認定を受けた事業)
○補助率:定額(原則上限100万円)
○補助対象:事業実施に必要な経費

詳細や活用にあたっては、富士市企画課SDGs推進室(sdgs@ex.city.fuji.shizuoka.jp)までお問い合わせください。