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トクトメノコト ⑩

救急隊員からの電話

この日も朝から母から何度も電話がかかってきていた。
先日の胃痛のむかつきが収まっておらず、今日はかかりつけ医への通院日ではないが、病院に連れて行って欲しいという要望だった。

ちなみに先日の血液検査とCT検査の結果は多少の炎症反応は見られるものの大きな異常は無しということで帰されていて、その後もかかりつけ医で診察を受けたが若干の脱水があるので水分を摂って休むように言われていただけだった。

月末は繁忙期なので仕事も詰まっているし、医者からの説明もそんな状況だったので仕事が一段落つくまでそのまま家で待つように母に伝えた。
かかりつけ医にいつも行く時間が2時なこともあり、それに合わせて行くからねと、できるだけ優しい声に聞こえるように伝えたつもりだ。

急いで仕事にとりかかっていたらまた母から着信があった。
あなたの病院のために無理して仕事を進めているのに何度も何度も電話をかけてきて遮られたら仕事が終わらんやろ・・・と心の中でため息を付きながらできるだけ明るい声に聞こえるように注意しつつ電話に出た。

間違いなく母の携帯からの着信だったが、電話の先の人は「救急隊の者です」と名乗った。

救急隊員の話

先ほどお母さんから救急車へ通報がありまして、気持ち悪くて動けないとのことだったのでこれからいつもの総合病院へ搬送しようと思っているのですが、ご家族の方が後から病院に来れるかどうかを病院に伝える必要がありますので、ご連絡しています。何時頃なら病院に来れますか?

一瞬パニックになって言葉を失ってしまった。
待って待って、午後に病院行こうって言ってたのに救急車呼んだの!?
え、そんなに耐え難いぐらい体調が悪いってこと?どうなってるの?
色んな「なんで」が頭を駆け巡る中、2時半ぐらいには病院に到着できると思いますと伝えた。

10分ほどして救急隊員の方から、無事に受け入れが決まったので予定通り病院へ行っていただくようお願いしますと報告があった。
わけがわからないまま、とにかく私は私の仕事を済ませて病院へ行くしか無いので一旦全ての感情のスイッチを切って作業に没頭して仕事を終わらせ、予定通り病院へ行った。

救急センターにて

救急センターにかけつけて受付で名前を告げるも、「今検査中なので声をかけるまでそこでお待ち下さい」と言われるのみで、とにかくどんな状況なのかだけでも知りたかったが、メールの返信等簡単な仕事をしながら1時間以上は待った頃、看護師さんから中に入るよう呼ばれた。

看護師さんは神妙な顔で、母の顔色を伺いながら私に告げた。
「医師からまた後日説明があると思いますが、脳のMRIを撮った結果、脳梗塞の疑いがあるとのことで今日はこのまま入院していただきます。」
そこからは流れ作業的に入院にまつわる手続きや作業、荷物や薬の搬入等、諸々の作業を粛々と進めた。

今日はもう医師からの説明は無く、詳しい話は明日再検査をしてからなんらかの連絡をしますとのことだったので、母の状態の詳細はよくわからないままだったが、こんな不安定な状態で母が家にいるより病院の方が安心だと私も思ったのでそのままお願いして家に帰った。

そして翌朝10時に母から着信が入った。
「退院することになったから、11時半までに迎えに来て」
何に対してかわからない怒りが体の内側をぐるぐると巡っているのを強く感じた。

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