提案って何するの?
AIに負けない士業になるためには、これからの士業にとって必要なことは、士業における付加価値とは、エトセトラエトセトラ…
こういう話題になると必ず出てくるのが『コンサル力』と『提案力』の話。
コンサルタント型士業にならなくてはいけない。
そのためには提案力をつけなくてはならない。
よくわからない人がこういう話をしているのを見たり聞いたりする度に、私はなんだかもう食傷気味になっています。
なぜなら半分ぐらいは正しく理解して自分で実行しているわけではない、何者かすらよくわからん人がそれを説いていて、更に半分以上がそれらを見聞きしてわかった気になってとんちんかんな質問をなぜか私にしてきたりするからです。
コンサルタントやカウンセラーやコーチングを行なう人たちにはそれぞれその人なりの流派というかお考えがあると思うので、その人に直接質問しないと残念ながら私に聞いてもその人たちの真意は絶対に掴めません。
私としても、コンサル力や提案力をつけようというそのこと自体は間違いなく良い事ではあると考えるのでそこに関しては全く異論はありません。
行政書士のコンサル論については吉川さんのこの記事が面白いのでぜひ読んでみてください→コンサル型行政書士?
吉川さんのこのnoteでは詳しい類型毎に例文のようなものが載っていてわかりやすいですが、世の中に流通している文章を見ていても、実際にどうやって提案しているのか?についてまで言及しているものはあまりないようだったので、本noteでは実際に私がどのような内容を相談者さまに提案をしているかについて書きたいと思います。
今回は、わかりやすくなるべく普遍性を出すために、誰もが一度は相談を受けるであろう古物商許可の相談に絞って書いてみたいと思います。
相談のお問合せ。
『古物商の新規許可申請』についてのお問い合わせがきました。
まずはアポの日取りを決めて、当日はヒアリングシートを用意してご相談内容について詳しくヒアリングをしていきます。
このヒアリングというのは、取り扱い商材は何かなどの申請を行なうために必要なことももちろん聞いていくのですが、それだけではありません。
『どのようなビジネスモデルを考えていて、どうして古物商許可を取ろうと思ったのか』についてしっかり聞いていきます。
古物商許可を取得したいというだけでは、その相談者が古本屋をしたいのか、リサイクルショップをしたいのか、中古車ディーラーをしたいのか、店舗で販売するのかネット販売なのか、何にもわかりません。
時には相談者本人もしっかりとは煮詰めておらず、「まずはとってから考えようと思ってる」というお考えの方もいらっしゃいます。
それらの人たち全てに一律対応、一律提案しか出来ないのであれば、ある人には刺さるかもしれませんがある人にとっては全くの見当違いになってしまいます。
行政書士開業と言っても事務所によって様々な事業形態があるのと同じで、どの業界でもそれぞれのビジネスモデルは違うということをまず念頭に置いておきましょう。
先入観と勝手な決めつけはヒアリングを濁らせて相談の質を悪くさせる原因になります。
とはいえ悪い相談者に出会うこともありますので、注意は十分にしなければなりませんが・・・。
ヒアリングを行なう。
ビジネスモデルを聞いていきましょうと言いましたが、これは業務の核の部分なので話したがらない人もいらっしゃいます。
話してくれないということは自分はまだ信用されていないと認識しましょう。
信用していない人間がいくら熱心にアドバイスをしても、基本的には相手方には届きません。
関係性の無い間柄でのコンサル業務なんて不可能だと私は思っています。
私自身も、頼んでもない人から勝手にコンサルやコーチングのようなことをされることがありますが、そんな人の話はまず聞き入れません。
私とその人というたった二人だけの人間関係の立ち位置も正確に把握出来ないような人間が、私と事業という複雑な関係性において的確なアドバイスが出来るとは思えないからです。
関係性が出来上がっていない人間に、求めてもいない提案を押し売りされて喜ぶ人は滅多にいないということは忘れないようにしましょう。
ハンバーガー単品でいいと言っているのに、得なんだからセットでポテトとドリンクをつけましょう!なんて店員にしつこく言われたらいい気はしないですよね?
それと同じです。
提案をする土台に立てていないのに無理に提案をするのは相手のためを考えた行為ではなく、自分の押し付けです。
提案力をつけるには、その前にまずヒアリング力をつける必要があるのです。
ヒアリングをする中で関係性が作られ、それにより相談者がビジネスモデルについて詳しく話してくれるようになり、それによって質の高い提案が可能になり、結果として相談者が納得して選んでくださるようになる。
この流れを理解しておきましょう。全ては繋がっています。
間を飛ばすと歪になり、求める結果が得られにくくなります。
漠然とうまくいないなぁと感じるときは、流れを一つ一つほどいていくとどこかを飛ばしてしまっている場合が多かったりします。
ヒアリング力をつけるには。
ではそのヒアリング力をつけるにはどうすればいいのか。
結論からいうと、その瞬間だけでもいいので、相手に心底興味を持つことです。
恋愛の初期衝動時と重ねるとわかりやすいかもしれません。
好きだから知りたい、知りたいけど嫌われたくないから図々しい真似は出来ない、でも知りたい、知ったら何か力になりたい、自分に出来ることは何かを探す・・・、そういう流れです。
それを相談者に適用して、どんなビジョンを持っていて、どのような業務形態で、どのように事業を回していこうと思っているのかを丁寧に聞くだけです。
話していく中で相談者自身でも気が付いていなかったことに思い当たったり、私という違う視点が入ることでより良い形が見つかっていくことが望ましいわけです。
それをするためには、古物商の許可要件を知っているだけではダメで、古物商というビジネスそのものについても知っていなくてはなりませんし、その周辺知識も必要です。
例えば、リサイクルショップという商売の仕組みを知っているだけでは中古車ディーラーを始めたい人にとっては不足ですし、リサイクルショップを始めたい人にとっても、自分が勉強したことだけで事足りるという場合もあるからです。
中古品を買ってくる、修理やクリーニングを行なう、中古品を売る、売れないものは廃品として処理する、古物商としての必要な事務処理等々、これら一連について最低でも理解しておかなければならず、更にそれぞれの周辺知識があって初めてアドバイスや提案が可能になってくるのだと思っています。
これから事業を行なおうとしているのだから当然相談者もわかっていなければならないのですが、これらを知らぬまま商売を始めようとしちゃう相談者も多いです。
「先生、ところで中古品ってみんなどこから仕入れるの?」といった質問を受けることはままあり、答えられなければ信頼を得ることは出来ないということです。
知らないことを聞かれるとイヤだから知識が薄い分野についてはさらっと流してあまり深く聞かないようにしようという意識が働いているうちは良いヒアリングは出来ません。
ヒアリング力を高めるには、知識研鑽は必須の事前準備になります。
聞くだけで話さなくていいから楽ということではありません。
何を聞かれても話せる準備が出来ているのに、ひけらかさずに聞く側に徹し、必要な知識を提供していくのです。
許認可申請において、主役は申請者です。
我々がいかに勉強していていかに知識があるかなんてことを主役にひけらかすモブは物語には不要だと認識し、努力を認められたい欲求は相談者の前ではしっかり抑え込みましょう。
実践。
例えばこういう相談者が来たとして、あなたなら何をどのように提案しますか?
申請書の内容を埋める分の回答さえ得られれば申請自体は可能なので、時短にこだわって流れ作業として処理していくのであればそれ以上のヒアリングは必要ありませんが、提案力を高めたい方はもう一歩進んで考えてみてください。
リサイクルショップで販売する中古品はどのように仕入れをお考えですか?
事業を拡大していく予定であれば、決まった取引先があるのでしょうか?
様々なポイントがありますが、まずここは押さえておきたいポイントです。
というのも、売りに来た人から買い、買ったものを売るだけなら問題ないのですが、廃品の収集をする前提でいる事業主さんは多いです。
そうなると収集運搬の許可が必要になる可能性が考えられます。
最近流行りの遺品整理業を行なう予定なのであれば、引き取り先の整理がつくまで遺品をお預かりするということも考えられます。
そうなれば倉庫業の登録も必要になってくるかもしれません。
遺品整理業を行なう前提であれば、清掃やリフォームまでを行なうのか?の確認もするといいかもしれません。
清掃だけなら許可や届出は必要ないですが、スケールしていくならリフォームも自社もしくは提携で行なうことを考えているケースもあります。
500万円を超えるリフォーム工事を行なうなら建設業の内装仕上げ工事業許可が必要ですね。
更には綺麗になった家を自社で販売もするとなれば不動産業許可の出番も考えられます。
どこまでを社内で自製して、どこからは提携をとるのか、または業務範囲外とするのか、というところを様々な角度から一緒に考えて提案すると喜ばれることが多いです。
極めつけは、同じ古物商の許可を取得した珍しいビジネスモデルの事例に基づいての提案もとても喜ばれます。
事業主さんはこれから行なう新しいビジネスに不安と希望で胸を躍らせているのです。
それは我々が起業した時と何も変わりません。
自分が起業した時、どんな情報を有益だと思ったか、どんな知識が役にたったか、どんなアドバイスをくれた人を尊敬したか、それらを思い出して実践していきましょう。
おまけ。
ちなみに、ご存知だとは思いますが、古物商を行なう事業者は台帳に取引内容を記載する義務があります。
この台帳、警察署でも買えるのですが、これだと紙ベースで保管しておかなければならず場所を取ります。
データベースでの記載および保管でもOKですので、当事務所では古物台帳のフォーマットのお渡しの提案も行なっています。
ご依頼してくださった方へサービスでお渡ししている事務所さんもあるみたいですね。
こういう些細だけれど大切なことをどのような形で提案するのか、というのも個性が表れる部分だと思うので、自分ならではの提案やサービスをぜひ考えてみてください。
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