月の始まり

決まって思い出す子どもの頃のこと

友達のお父さんが運転しながら

今日の月
爪の切りカス見たいじゃね

とこぼした

顔は見えなかったので
冗談だったのか
真剣だったかは
思い出せない

その日から
私には新月が見えなくなった

でも
たとえそう思ってしまっても
不思議とまだ美しいと思えるのだ

なんとも言えない鋭さ
白さ
冷たそうな感じ

周りの星に配慮していそうな謙虚さすら感じる

そして
何もかも忘れたふりをして

無責任に
あーこれから全てが始まる
と噛みしめる

とっくにハタチも過ぎたくせに何者にもなれていないし
明日すら来なければいいと思っている

のに

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