楽観
僕は極めて楽観的なペンギンである。
学も、体力も、容姿も、家柄も、なんにもない。
が、特に気にはしていない。
普通の人間であれば悲観的になり、神経質になり、焦燥に飲まれてしまうところだろう。
精神障害2級の指定難病のFラン卒のフリーターだが全くもって困っている実感もない。将来はきっと困ることになるのに。
これはなぜか。全部薬のせいだ。
僕はここ3年ほど、サインバルタ(デュロキセチン)という薬を飲んでいる。
これが僕の気性を非常に穏やかにした。
効果の一部として、将来に必ず起こりうるイベントが全て遠く感じるようになったのだ。
例えば明日、君がすごく怒られるような状態になっていたとしたら、君の頭の中は焦り、恐怖、反省、様々な感情に占拠されることだろう。
僕はそんな危機的状況におかれても、来たる怒られイベントが遥か彼方の出来事のように感じるのである。日付上明日とわかっていても、1ヶ月後にそのイベントがあるかのような体感になる。
嫌なことへの実感が遠い。他人事のように感じる。宇宙がいずれ滅びることの心配を四六時中している人はどれくらいいるだろうか。
そんなフワフワとした意識で毎日を過ごしている。焦らないことに対する漠然とした薄い焦りがある。
強迫的な神経質さから解放されて、期限が守れなくなった。これは由々しき事態だ。
僕はADHDである。
うつ病や不安障害のおかげで物事の期限を守れていたのに、薬で抑うつや不安が緩和されると期限を守ることが出来なくなった。
この薬は、僕を滅亡への恐怖から守る代わりに、確実に着実に僕を滅亡の道へ誘っている。