ばかぼん火星の鷹になる
やっとホークスーツを試せる!
火星に着いてから三日間、こっちの責任者Kに案内されてオフィスやら現場やら見て回ったよ。
火星旅行プレゼントの条件にパパは会社の視察を言いつけた。
僕は高校卒業ホヤホヤ、これから楽しい大学生活送って、パパの会社のこと覚えるのなんてその後でいいのにね。
それよりホークスーツ。おばあちゃんの卒業祝い。同じ値段なら高級スポーツカーより断然こっち。
鷹の能力をあなたに!
飛翔、視力、上空1万Mでの呼吸と保温も完璧
ってやつ。地球用?火星の野外活動だってイケるだろ。
こっちにホークスーツはない。まだ地球ほどゆとりないからでしょ。
火星の空からの動画は絶対大バズりだよね。
ホテルの部屋でスーツに着替える。
チクチクと全身の神経が拡張されてスーツと繋がってく。
エアロックを出る。
うっわ寒!酸素の数値もギリ。でも使えるし。
いいね!
バイザーの「鷹の目」で遥か遠くオリュンポス山までくっきり目に収めて、いよいよ飛ぼうとしたらKがローバーでこっちに向かってくるのが見えた。
「地球の本社でクーデターがありました。社長は、お父上は社を追われた」
焦った僕はバイザー内蔵の端末でパパに電話した。
-使用可能環境外-
ホテルに戻るし!
腕を大きく動かす。実際の腕でなくスーツの翼に指令は伝わり、低重力でのジャンプと共に僕は火星の大空に飛び立つ
・・・はずだった。
-空気濃度不足 使用環境外-
火星の大気、希薄すぎて飛べないし…
「乗って下さい」
Kは僕をローバーに押し込んだ。
「これに」
通常の野外活動用スーツを差し出す。
コマンド・離脱
…あれ?
脱げないし?!
見覚えのある…レアメタル鉱?
スーツが脱げずに困って翼をバッサバッサさせる僕を気にもせず、Kは奥へ進んでいく。
「ぼっちゃん、あんたは今日からぼっちゃんでも何でもない。せいぜい稼いでもらおう。そのナリで何ができるかは知らんが」
薄笑い
!!
僕は坑道の奥へ突き飛ばされる。
バッサバッサ!
【続く】800字