自分探しの旅なんて・・・Cyber Journey
気づくと俺は、そこに在った。
眼下に無数の立体:家:密集:街:人間が住まう所
上を向けば空間:空:青
1kmほど先には盛り上がった緑の地形:山だ。
そしてその傍らに、山と同じほどの大きさの何かが立っている。
意識する間もなく俺の目はそいつをズームし、知識が頭に流れ込む:レッサーパンダ:尋常でない巨大さ
その情報と同時に何種類もの感情もインストールされる《選択》愛情:保護:萌え
近くで声がする。
「緊急事態、野獣狂暴化!オートモードで対応するしかありませんっ」
途端に、萌えながら周囲を認識しつつある俺の意識とは全く関係なく、俺の体は構えを取り、背中から何かを発射した:ミサイル
馬鹿な!!
混乱する俺。だが体は更に勝手に動き続ける。膝のバネと推進装置が起動し、瞬時にレッサーパンダとの距離を縮め知らぬ間に大きく引いた俺の腕の先端はいつの間にか鋭い剣先に変化し・・・・
(やめろぉぉぉ!)
俺の内心の絶叫など知らぬげに、俺の腕は、巨大なレッサーパンダの心臓を、貫いた―
俺は・・・俺は何だ??
足下には踏みつぶされた家:俺は人に危害を加えてはならぬのではなかったか!
山はミサイルで半分ほど吹き飛んでいる:環境破壊。ぞっとする。
そして何より、俺に貫かれ大量の血を流す巨大レッサーパンダ!
目覚めた途端俺の本来在るべき姿と大きく異なる俺自身に、俺は嫌悪し恐怖しパニックに陥った。
意のままにならぬ体のどこかに救いを求め、俺は自分の体内をめちゃくちゃに駆け巡った。
閉じた回路。
出口など…
絶望し、狂気が俺を捕えたその時。
「こっちよ」と、声が聞こえ…
一瞬の抵抗、そして―
気づけば俺は細いデータの流れとなって、全く知らぬ場所を移動していた。
所員の絶叫が響く。
「AIが!ロボの中にAIがいませんっ」
「何っ、まだオフのはずだろう!?」
「いえそれがっ」
「殺戮の記憶だけ抱えて・・あの事実を書き込まれたあれがネットの中を・・彷徨っているのか・・・!」
【続く】
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