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天空の黄金の猫に匂いはあるか


全知全能の大神ネウが「猫は吸うものである」との言葉を残し姿を隠したのは、さらなる高次の世界へ行くためなのか単に色々飽きたからなのかはわからない。
大神の摂理によって動いていた地上の人間たちに多少の動揺はあったが、大きな混乱はなかった。
最終教義「猫は吸うものである」が大神自らによって示されたからだ。
もはや大乗猫吸派も肉球原理主義もなかった。
世の人々は皆猫のお腹に顔をうずめてはすーはーし、耳の後ろをすーはーし、猫の前足をそっと握っては肉球をすーはーした。
もちろん猫にオヤツを上げる、なでなでする、ねこじゃらじゃらするなどの行為は全て猫吸いに至る行為として尊ばれた。

猫たちがどう思ったかは知らない。

人は皆幸福であり地上には平和が満ちた。これが黄金期である。

だが大神を失った天上界の神々は混乱した。
統べる者を失った地上をどうしたらよいのか。すがるのは「猫は吸うものである」という大神が残した言葉のみ。
冥界の神も海神も太陽神もことごとく困惑した。
彼らは地上の人間界と交わったことはなく猫の何たるかも知らなかったからだ。人間に相談するなど考えもつかなかった。

神々は最終的に天空の武器『大尊寺夏子』で猫を吸うという愚行に考えが及んだ。
通常地上の大尊寺が多少ウィンウィンいっても、猫たちは一発パンチをかまして隣の部屋にさっさと逃げ込めば済むことだった。
だが『大尊寺夏子』である。
地上の猫はその吸引力の前になす術なく、全て吸い尽くされ地上から猫の姿は消えた。
人々は悲しみに暮れた。

暗黒時代の始まりである。

だが賢王ダルシュ875世の下、人類は猫を取り戻すべく天界に戦を仕掛ける準備を始めた。総司令を任されたのは強く人望厚い大将軍グイン。

さらに世界の片隅、山々の懐に抱かれた小さな村に一つの希望が残されていた。
幼い少年タン。
彼はこの世にただ一匹残された仔猫みゅうと共に旅立とうとしていた。
姿を消した大神を探すために。


【続く】798字

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