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リサイクルに関する日本の法律

1. はじめに

リサイクルの重要性

リサイクルは、現代社会における持続可能な環境を維持するための重要な要素です。リサイクルの基本的な目的は、使用済みの製品や材料を再利用することによって、新しい資源の消費を減らし、廃棄物の発生を抑制することです​​​​。

環境保護の観点から、リサイクルは大量生産・大量消費による環境への負担を軽減し、資源の有効活用を促進します。特に、焼却や埋立処分によるCO2排出の削減、土壌汚染の防止などが挙げられます。また、自然資源の枯渇を防ぐためにもリサイクルは重要です。これは、持続可能な社会の実現に向けたSDGsの達成にも寄与すると考えられます​​。

日本におけるリサイクルの歴史と法制化

日本のリサイクルの歴史は古く、江戸時代には「もったいない」という考え方のもと、紙や布などの資源が再利用されていました。戦後の大量生産・大量消費の時代に入ると、資源の有限性に対する認識が高まり、リサイクルに対する関心が増してきました​​​​。

法制化の面では、2000年に循環型社会形成推進基本法が公布されました。これは、廃棄物処理施設の限界や廃棄物量の増加などを背景に、リサイクルを推進するための基本的な法律となっています。その後、資源有効利用促進法、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法など、様々なリサイクルに関する法律が制定され、日本は循環型社会の構築を目指しています​​​​。

特に、中国の廃プラスチック輸入禁止によって、国内のリサイクル政策に新たな課題が生じ、プラスチックの使用抑制や代替素材の開発が期待されています​​。これにより、日本ではリサイクルへの取り組みがより一層重要となり、国を挙げての政策が積極的に打ち出されています。

2. 容器包装リサイクル法

容器包装リサイクル法の概要

容器包装リサイクル法は、家庭から排出されるごみの重量の約2~3割、容積で約6割を占める容器包装廃棄物のリサイクルを促進することを目的としています。この法律は、1995年に制定され、1997年から部分的に、2000年から完全に施行されました。法律の所管は、環境省、経済産業省、財務省、厚生労働省、農林水産省の5省が共管しています​​​​。

分別回収と再資源化の制度

容器包装リサイクル法の特徴は、従来市町村が全面的に責任を担っていた容器包装廃棄物の処理を、消費者、市町村、事業者の3者で分担することです。消費者は市町村の定める分別ルールに従ってごみを排出し、市町村は分別収集を行い、事業者は再商品化(リサイクル)を行う義務があります。この体系により、廃棄物の削減が経済的メリットにつながるように設計されています​​​​。

法律に基づく3Rの推進

事業者は、使用または製造・輸入した容器包装の量に応じて、リサイクルを行う義務があります。具体的には、容器包装リサイクル法に基づく指定法人にリサイクルを委託し、その費用を負担することで義務を果たしています。さらに、容器包装の薄肉化・軽量化、量り売り、レジ袋の有料化などにより、容器包装廃棄物の排出抑制に努める必要があります​​。

課題と見直し

家庭から捨てられる一般廃棄物の排出量は横ばいであり、容器包装廃棄物の割合も大きなものとなっています。そのため、リサイクルだけでなく容器包装廃棄物の排出の抑制(リデュース)を一層推進する必要があります。また、容器包装リサイクルに関する社会的コストは増加しており、分別収集・リサイクルの効率化・合理化を推進し、社会的費用を抑制することが求められています​​。

3. 家電リサイクル法

家電リサイクル法の概要

家電リサイクル法(正式名称:特定家庭用機器再商品化法)は、1998年(平成10年)に制定され、2001年(平成13年)から施行されました。この法律は、一般家庭から排出される使用済み家電製品のリサイクルを促進し、廃棄物の減量化と資源の有効利用を目指すものです。従来、多くの廃家電製品が破砕処理後に鉄などの一部の金属のみが回収されていた状況を改善するために制定されました​​​​。

家電製品の回収と再利用の義務化

家電リサイクル法では、家庭用エアコン、テレビ、電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機の4品目に対して、小売業者による引き取りと製造業者等による再商品化(リサイクル)が義務付けられています。消費者(排出者)は、これらの家電製品を廃棄する際に、収集運搬料金とリサイクル料金を支払うことが求められます。また、製造業者等は引き取った廃家電製品のリサイクルを行い、定められたリサイクル率を達成しなければならず、フロン類を使用している製品については、含まれるフロンを回収する義務もあります​​。

法律が規定する製品範囲

家電リサイクル法における回収対象となる家電製品は、家庭用エアコン、テレビ(ブラウン管式、液晶式、プラズマ式)、電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機の4品目です。これらの製品については、廃棄する際に適切な手続きを通じて、リサイクルされることが法律によって義務付けられています​​。

4.小型家電リサイクル法

この法律は、資源のリサイクルを目的としており、主に携帯電話やパソコン、モバイルバッテリーなどの小型家電に焦点を当てています。小型家電には鉄やアルミニウム、レアメタルなどのリサイクル可能な資源が豊富に含まれているため、2013年4月に施行されたこの法律は、これらの資源の有効活用を目指しています​​。

小型家電リサイクル法の対象品目

この法律の対象となる品目は約400品目にも及び、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、電子レンジ、ドライヤーなどが含まれます。壊れていても、またパソコンの部品が不足していても回収されます。自治体によっては有料で処理する場合もありますが、認定事業者に持っていくと無料で回収してもらえます​​。

小型家電リサイクルの現状と課題

2012年以前は、小型家電の多くが廃棄物として埋立処分されており、これには鉄やアルミニウム、レアメタルなどの有用な金属が含まれていました。これを「都市鉱山」という考え方に基づいて回収し、再利用するために小型家電リサイクル法が制定されました。2012年に施行されてから、小型家電の回収量は増加しており、2020年度の回収量は102,489トンとなり、再資源化された金属の金額は約70.4億円に相当します。しかし、回収量の目標は2023年度までに年間140,000トンであり、2020年度時点では目標値の73%に留まっています。全国平均の回収量は532gで、1人当たり1kg以上の回収量を達成しているのは12県に過ぎません。このため、依然として無駄になっている資源が多いのが現状です​​。


5. 建設リサイクル法

建設リサイクル法および関連する法令についての概要です。これらの法律は、廃棄物の適切な処理と資源の再利用を促進し、持続可能な循環型社会の実現を目指しています。

建設リサイクル法の概要

建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、平成12年5月31日法律第104号)は、廃棄物処理問題の解決を目的として制定されました。この法律は、建設廃棄物、特にコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材などの再資源化を促進することを目指しています。これらの廃棄物は産業廃棄物全体の約20%を占め、不法投棄量の約60%を占めるとされています​​。

法律では、特定建設資材(コンクリート、アスファルト・コンクリート、木材)を使用した建築物の解体工事や新築工事など、一定規模以上の建設工事に対し、分別解体や再資源化を義務付けています​​。

関連する法令

建設リサイクル法は、循環型社会の形成を目指す他の法律と連動しています。

  1. 循環型社会形成推進基本法:この法律は、天然資源の消費抑制と環境負荷の低減を目指し、循環型社会の基本的な枠組みを定めています​​。

  2. 資源有効利用促進法:循環型社会の形成を目指し、事業者にリデュース、リユース、リサイクル(3R)の取り組みを促進する法律です。これは、特定の業種や製品に対する自主的な取り組みを通じて循環型経済システムの構築を目指します​​。

  3. 廃棄物処理法:廃棄物の排出抑制、適正な処理(運搬、処分、再生など)、生活環境の清潔保持を目的とした法律です​​。

  4. 小型家電リサイクル法:使用済み小型電子機器等の再資源化を促進する法律で、レアメタルなどの有用な資源の再利用を目指しています​​。

  5. 容器包装リサイクル法:容器包装廃棄物の排出抑制と再商品化(リサイクル)を促進し、資源の有効利用と廃棄物の減量化を図る法律です​​。


6.自動車リサイクル法

自動車リサイクル法概要

自動車リサイクル法は、リサイクル型社会を目指し、自動車の所有者、関連事業者、自動車メーカー・輸入業者に特定の役割を割り当てる法律です。この法律の下では、以下の役割が定義されています​​:

  1. クルマの所有者(最終所有者):リサイクル料金の支払い、自治体に登録された引取業者への廃車の引渡し。

  2. 引取業者:最終所有者から廃車を引き取り、フロン類回収業者または解体業者に引き渡し。

  3. フロン類回収業者:フロン類を基準に従って適正に回収し、自動車メーカー・輸入業者に引き渡す。

  4. 解体業者:廃車を基準に従って適正に解体し、エアバッグ類を回収し、自動車メーカー・輸入業者に引き渡す。

  5. 破砕業者:解体自動車(廃車ガラ)の破砕を基準に従って適正に行い、シュレッダーダストを自動車メーカー・輸入業者へ引き渡す。

  6. 自動車メーカー・輸入業者:自ら製造または輸入した車が廃車された場合、その自動車から発生するシュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類を引き取り、リサイクル等を行う。

対象となる自動車

自動車リサイクル法の対象は基本的にすべてのクルマ(トラック・バスなどの大型車、特種自動車(いわゆる8ナンバー車)も含む)ですが、以下の車種は対象外となります​​:

  • 被けん引車

  • 二輪車(原動機付自転車、側車付きのものも含む)

  • 大型特殊自動車、小型特殊自動車

  • 農業機械、林業機械、スノーモービル等

リサイクル料金

リサイクル料金は、車種やメーカーによって異なり、シュレッダーダストの発生量、フロン類の充てん量、エアバッグ類の個数・取り外しやすさなどに基づいて設定されます。リサイクル料金の水準は以下の通りです​​:

  • 軽・小型乗用車(コンパクトカー): 7,000円~16,000円

  • 普通乗用車: 10,000円~18,000円

  • 中・大型トラック: 10,000円~16,000円

  • 大型バス: 40,000円~65,000円

加えて、資金管理料金290円(新車購入時、H29.4.1改定)または410円(廃車時、H29.4.1改定)、情報管理料金130円(H24.4.1改定)が必要です​​。

リサイクル料金の支払い時期

リサイクル料金は、原則として新車購入時に支払います。支払い後、リサイクル券や領収書が発行され、リサイクル料金を証明するために使用されます。リサイクル券は廃車にするまで、車検証とともに保管する必要があります。また、リサイクル料金を支払った車両を売却する場合、次の所有者からリサイクル料金相当額を受け取る権利があります​​。

この記事で、日本の自動車リサイクル法に関する基本情報と流れ、適用される自動車の範囲、リサイクル料金の詳細について説明しました。

7.資源有効利用促進法

資源有効利用促進法の目的と概要

「資源有効利用促進法」は、循環型社会の構築を目指す法律であり、2000年5月に成立し、2001年4月に施行されました。この法律の主な目的は、事業者による製品の回収・リサイクルの実施などのリサイクル対策の強化、製品の省資源化・長寿命化による廃棄物の発生抑制(リデュース)、回収した製品からの部品等の再使用(リユース)対策の導入です。

資源有効利用促進法の対象業種

この法律は、特定の業種や製品に3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みを求めるものです。具体的には、10業種、69品目が指定されており、これらは一般廃棄物及び産業廃棄物の約50%をカバーしています。

事業者によるリサイクルの取り組み

事業者によるリサイクルの取り組みには、製品の製造や設計段階でのリサイクル対応、分別回収システムの導入、製品回収後のリサイクルシステムの構築などが含まれます。これらの取り組みは、循環型社会の形成に不可欠であり、資源の有効利用と廃棄物の削減を図ることを目的としています。

8. まとめと今後の課題

法律によるリサイクル促進の成果と影響

容器包装リサイクル法の施行後、日本では一般廃棄物の最終処分量が減少傾向にあります。具体的には、平成7年度には一般廃棄物最終処分場の残余年数が8.5年であったのに対し、令和3年度には23.5年へと増加しています。これは、リサイクル促進の法律によって廃棄物のリサイクルが進み、最終処分量が減少した結果と考えられます。日本では、容器包装リサイクル法の他にも、家電リサイクル法、食品リサイクル法、建設リサイクル法、自動車リサイクル法、小型家電リサイクル法など、多くの個別リサイクル法が制定されています。

今後の展望と持続可能なリサイクル社会への期待

持続可能な開発や環境対策に関する研究機関である地球環境戦略研究機関(IGES)は、2050年の日本の未来予想図を発表しています。この報告書では、ネット・ゼロを達成するための「2つのシナリオ」が示されています。一つは、社会の変化がほとんど起きずに化石燃料を使い続けるシナリオ、もう一つは、社会制度や経済構造に変革が起きて再生可能エネルギーが増加するシナリオです。これらのシナリオは、リサイクル社会の実現に向けた持続可能な未来を模索する上で重要な視点を提供しています。

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