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お年寄りにはスリップイン

お袋は足が不自由な上に、2日に1回のペースで人工透析に出かけなければならない。
玄関から外に出るには階段が4段あり、そこは車椅子で降りることができないから、杖をついて歩く必要がある。

当然だが、お袋は靴を履かなければならない。これが一苦労だ。

しゃがめられないから靴ベラを使うのだが、直立不動のまま靴を履くのはかなり難しい。
毎朝、たいへんなイベントになる。

ある日のこと、テレビを見ていた妻が言った。
「これ、お母さんにいいんじゃない」
それはスリップインのスニーカー。

早速、翌日にお袋を連れて近くのショッピングモールへ。
値段は少しお高めだったが、日々の苦労が軽減されるなら価値はある。

家に帰ってスリップインの練習開始。
最初は慣れない動作に戸惑っていたが、一旦慣れてしまうと、靴ベラも何も使わずにスムーズに履ける。

なんと便利でありがたいアイテムなのだろう。
7年続いた悪戦苦闘からあっという間に解放だ。

不自由な体でも頑張って長生きしていたら、良いこともあるもんだ。
なぁ、お袋。

「通勤電車の詩」を読んでいただきありがとうございます。 サラリーマンの作家活動を応援していただけたらうれしいです。夢に一歩でも近づけるように頑張りたいです。よろしくお願いします。