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【ショートショート】「味噌の多い料理店」(410字)

『ヤマネコ亭』

その料理店には、そんな看板が掛けられていた。

狩りの途中、山の中で道に迷い、腹を空かせていた俺と友人のケンジは、一も二もなくその店に飛び込んだ。
部屋の多い店だった。そして部屋を進むごとに、『靴を脱いでください』とか、『服の泥を落としてください』とか、いろんな注文を付けられるのだった。

「なあ、この店おかしくないか?」

「俺もそう思ってたとこだ。ただ、さすがにもう終わりだろう。腹がぺこぺこだ」

だが、次の部屋に進んだ瞬間、それまで感じていた不安が恐怖に変わった。

『顔に味噌を塗り込んでください』

俺とケンジは抱き合ってがたがたと震えた。

「俺たち、ここで食べられるんだ……!」

すると、奥から顔に味噌を塗った老婆が姿を現した。

「味噌パックはお肌にいいんだよ。ところで、味噌ラーメンでいいかい?」

美意識の高い店主は厨房へ引っ込んでいき、俺たちは「はい」とだけ返事をしておずおずと奥のテーブルに腰かけた。

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