見出し画像

【毎週ショートショートnote】「株式会社のおと」(410字)

 どんな音源でも収集できるという専門家集団が立ち上げた株式会社のおと(の音)が、会社名と同名の商品「の音マーク2」を発売したのは二〇二二年のことだった。

「の音」は小型電子機器であり、「の音、○○の音出して」と呼びかけるとどんな音でも出すことができ、音楽関係者や映像関係者を中心に売れ行きを伸ばした。

 面白がったユーチューバーが『「の音」に出せない音があるか実験してみた』という動画を公開すると、再生数は瞬く間に百万を超えた。

 その動画で扱われた音で、唯一音が出なかったのが『悪魔の笑い声』だった。

「の音」にも出せない音があるのかと人々は笑ったが、数日後、その無音部分を赤ん坊に聞かせると赤ん坊が泣き止むという情報がネットで囁かれた。

 その高音域の笑い声を聞き取れるのは赤ん坊だけだった。ただ残念ながら、その前の言葉を理解できる赤ん坊はいなかった。

「我を眠りから覚ました人間ども、これから皆殺しにしてやるぞ。わははははは」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?