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詩 その9 (17編)

欲張りだから
 
欲張りだから
なんでも欲しいと願っています
あれも!これも!と
願っています
新しいものを
みつけると
新しいものを
手に入れると
新しい家族が
できると
どんどんと
欲しいものが
ふえてゆきます
欲張りだから
初めて聞いた話でも
いいアイデアは
自分のものだと勘違い
誰かの苦労や功績も
いつの間にか
自分のものだと勘違い
けれど
自分のものだと
信じ込まない限り
自分のものにならないことを
知っているから
たちが悪い
せめて
手に入れたものが
自分のものになるように
ひとつひとつの
責任を
しっかりと
果たしていかなければ
 
 
 
 
 
 
自己嫌悪
 
誰かの嫌なところを
みつけるたびに
僕の嫌なところを
探したみたいで
嫌になってしまいます

せめて
子供達には
自分自身が
嫌いにならないようにと
彼らの
輝いているものを
なんとか
探そうと
観察しています

でも
尊敬すべきところ
学びたいところを
見つけるのは
なかなか
難しいものです

自分がかわいいと
思えば
思うほど
醜くなるように
自分が
正しいと
思えば
思うほど
間違っていく
ように
探そうと
焦れば
焦るほど
見つからないでいます
 
 
 
 
船酔いみたいな
 
誰かの活躍を耳にするたびに
これでいいのかと
自問してしまう
歩んできた道と
歩むべき道
廻りの風景と
足取りが
みんなみんな
ちぐはぐで
船酔いしそうだ

ソファーに倒れかかった
僕を
子供たちが
揺り動かす
僕がしたいことじゃなくていい
僕にしかできないことじゃなくていい
ただ
大切な人
大切な記憶
失わずに
ひとつひとつを
積み重ねて
今日を歩こう
 
 
 
 
 
 
後悔
 
手を合わせるとき
本当に祈りを捧げてきたか
本当に感謝をしていたか
本当に反省し謝罪していたか
よそごとを考えていなかったか
誰かの幸せを
心から
願っていたか
 
 
 
 
 
満月
 
今朝
四時に見えた
満月は
いつもより
大きくて
いつもより
黄色くてまぶしかった
くらやみの中で
光をさがす
人々を
精一杯に
照らしていた
 
 
 
 
 
 
報道のあと
 
食器をわったり
ご飯をぐちゃぐちゃにしたまま
食べ残したり
どろんこ遊びをして
びしょびしょになった服のまま
部屋に入ってきたり
五人の子供たちをみながら
ため息が
でそうになった

テレビから
流れてくる
すすり声を聞くまでは

こどもたちを
食事を共にすること
一緒に
お風呂にはいること
一緒に
眠りにつくこと
わずらわしいと
ため息をつけることは
ほんとうは
いちばん
しあわせなことなのに
 
 
 
 
想像すらしないまま

 
大事件も
大災害も
想像すら
しないまま

三歳の娘も
二歳の息子も
パパ!パパ!と
背中の上に
のってくる
せめて
私の見る
世界にいる間は

精一杯
こどもたちと
生きていこう
 
 
 
 
 
 
 
 
自分の居場所
 
パパと一緒に寝ると言って
ベッドに潜り込んでくる
2歳のえいくんが
好きなのは
ほんとは
ママだけど
妹に
ママを
とられちゃっているから
しかたないね

みんな
どこかで
がまんしたり
あきらめたり
ためいきを
ついたりしながら
自分の居場所を
つくっている
 
 
 
 
 
立派な人
 
立派な人って
どんな人?
娘に聞かれて
考えた
辞書みたいに答えると
みんなから
尊敬される人、と
なるのかな

どんな人かな
立場のある優秀な人
素晴らしい成績を残した人
人のためになるような
素晴らしい行いをした人

考ええれば考えるほど
お父さんとは
正反対だと
言われそう

なにかないかな?
僕にでも
立派な人になれる方法は……

怠け者だし
お金もない
立場もない
……ろくでもない

ないないづくしのお父さんでも
正反対と言われないように
だれでも
立派な人になる
方法は……


……

…… ……

みつけた
みつけた
いい方法

神様は
みんなが幸せに暮らすのをみて
いっしょに楽しもうと考えて
人間をつくったのだから
毎日
「しあわせだ-!!」と
感じながら
くらす人

ご飯を食べるときも
おしゃべりするときも
おならをするときも
いろんなことに感謝して
いろんな人に感謝して
「しあわせだ-!!」と
くらす人
 
 
 
 
 
つながっている
 
神戸で震災があったとき
親元をはなれていた僕は
心配になって
姫路の実家へ電話をかけた

つながらなくて
なんども
なんども
かけなおした

そうしてやっと
「このあたりはだいじょうぶ」
母の声を聞いて安堵した
でも
まもなく
母の兄が
家を失った神戸から逃れ
母のところへ
やってきた
一瞬のできごとに
僕らは
一喜一憂する

でも
喜びも
悲しみも
必ずどこかで
つながっている
誰かの落とした涙も
誰かのこぼした微笑みも
必ず
みんな
つながっている
必ず
みんなと
つながっている
 
 
 
息子の寝顔
 
目覚めると
二歳の息子が
隣で眠っている

たしか
夕べ
隣の部屋で
家内に
寝かしつけられていたはず

3時くらいに
起きてから
ちゃんと
部屋の戸を
開け閉めして
私のベッドに潜り込んできた

家内の言葉におどろいた
家内の隣は
妹や姉が
占領していたから

泣くことなく
私の隣へ
やってきた

家内はそれを知っている
私は
目覚めるまで
きづかない

家内に教えてもらうまで
知らないでいる
 
 
 
 
 
ビデオテープ
 
先月
部屋の掃除をしていたら
3本の
古いビデオテープがでてきた

長女が生まれて
間もないころ

家内が
何もない部屋で
一週間に一度くらい
娘の様子を
ビデオにおさめていたらしい

十年が過ぎ
テープにはカビが生え
切れているものもあった

家内が
もう見られないと思って
押し入れの奥に
しまいこんでたみたい

うつっているかどうか
わからないまま
店に送って
DVDにやいてもらった

カビをとったり
テープを修繕したりと
予想以上の値段だったけれど

今日
お座りができました
今日
つかまり立ちができました
1人で立っちができました
一歳の誕生日です

日記のような
映像の真ん中に
長女の姿があった

「どうして私のはないの?」

妹や弟たちに言葉

この十年で
もしかしたら
少しぐらい
親として
成長できたかもしれない

でも
十年前
ただ1人の娘を
慈しんだように


5人の子供のそれぞれに
愛情をふりそそいでいるか

忘れたものは
なかったか

レンズの向こうで
5ヶ月になる
五女の恵音が


笑った
 
 
 
未来
 
百年後の この国のかたち
千年後の この星のかたち
一万年後の 人々のかたち
一億年後の 宇宙のかたち

百年前の この国のくらし
千年前の この星のくらし
一万年前の 人々のくらし
十年前の 家族のくらし

つながっている
過去と未来
たぐりよせて眺めてゆけば
どこに
温かな風景が
広がっているだろう

三年過ぎても 壊れないもの
十年過ぎても 壊れないもの
百年過ぎても 壊れないもの
千年過ぎても 壊れないものが
いったい いくつ あるだろうか

一万年後にも 失われないもの
一億年後にも 失われないもの

つながっている
過去と未来
たぐりよせて眺めてゆけば
いつまで
温かな風景が
広がっているだろう
 
 
 
 
 
ミニカー
 
右手で握る
ミニカーひとつ

寝ている間に
お留守番

お姉ちゃん達は
さっさと
お母ちゃんにくっついて
出かけていったけれど

起きたら
誰も
いなかった

お父ちゃんのところへ
泣いて
やってきた
えいくんの

右手で握る
ミニカーひとつ
 
 
 
 
 
真っ白な紙
 
真っ白な紙に描いてゆくのは
今日のできごと
昨日の記憶
それとも
忘れられない遠い昔

真っ白な紙に描いてゆくのは
昨夜みた夢
首筋の上あたりに引っかかった景色
それとも
子供の頃描いていた自分自身

真っ白な紙に描いてゆくのは
大切な報告
誰かへの思い
それとも
伝えられないもどかしさ

真っ白な紙を見つめながら
指が動かないでいる
 
 
 
 
 
 
突然に
 
カメラのアングルを
少しかえるだけで
違う世界が広がるように
心の向きを
少しかえるだけ

きっと
幸せの景色が広がっている

頭の中で
理解していても
難しいよと
ため息をつく

でも

いたずらをした
子供のおかげ

無理矢理にでも
頭をさげて
仕方なくでも
お礼を言って

突然に
心の向きが
かわっている
 
 
 
 
 
するりと
 
小さな掌は
するりとぬけて
道ばたの石ころを
眺める

また
掴まえても
今度は
小川をのぞき込む

目を離したすきに
けがをしたり
いたずらしたり

いつも
気にかけていないと
わずらわしいくらい
注意しないと
するりと
どこかへ見失う

大切な時間のように
 
 
 

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