おたねさんちの童話集 「森の評議会」
森の評議会
その年の夏は、余りに暑くて、雨が非常に少なかったものですから、秋になっても、木の実や果物といったごちそうが、殆ど収穫できないようなありさまでありました。その上、小川の上流で、動物たちが、水の奪い合いをするものですから、下流に住む動物たちは、田畑に水を入れることすらできません。下流に住む動物たちが上流に住む動物たちに抗議をしようとしたところで、上流に住む動物たちは、それぞれがバラバラに水を奪い合っているわけでありましたから、誰に文句を言えばいいのかも分からないような状態です。でも、下流に住む動物たちも、もちろん懸命に生きて良いかなければなりませんから、やがて、上流に住む動物たちのところから、食べ物を盗みだすようになったのでした。
上流に住む動物たちも負けてはいません。護衛団を結成して、下流から来る動物たちを見つけると、ボッコボコに痛めつけるのです。
なんと言っても、上流には、大きな動物が沢山います。熊のツッキーやイノシシのキーバみたいに、力持ちが多いのでケンカなら負ける訳がありません。他にも、頭脳派で知られる猿のモンキー団や俊足揃いで有名な鹿の疾風隊もいるのです。
それに引き替え、下流のメンバーはロバのトロキや雀のメイト、どら猫のミドラみたいに、ぱっとしない者ばかり。このままでは、本当に飢え死にをしてしまうかもしれません。
「上流の動物たちに対抗するには、下流の動物が団結しないとダメだ!」
どら猫のミドラは、大きな声で叫びましたが、普段、一番ワガママなので、誰も「そうだ!!」とは言ってくれません。
でも、本当は、心の中で、みんな、ミドラと同じことを考えているのです。
「ミドラじゃなくて、もっとちゃんとした奴が言えば、下流の動物たちも団結できるのに」
「ドブネズミのブードンやミードンは、いつもネズミたちといじめているどら猫に団結を呼びかけられても、素直にハイと言えるわけがありません。プイと横をむって、さっさとどこかへ行ってしまいました。
「どうして、だれも、協力してくれないのかな」
ミドラの声は次第に小さくなって、最後は泣きそうになっていました。
「団結する前に、まずはみんなで話し合わないか」
そう言ったのは、オオカミのフルウスです。
ミドラがいくら言っても反応を示さなかった動物たちでしたが、さすがにオオカミのフルウスの言葉に逆らうことはできません。みんな、静かに頷きました。ロバのトロキも大人しく聞いています。雀のメイトも近くにイタチのタイチがいるのに舞い降りてきました。ドブネズミのブードンやミードンもいつの間にか、また、顔を出しています。
「何か、意見のある奴はいないか」
オオカミのフルウスが、一通りみんなと目を合わせてから低い声で言いました。
しばらくの間沈黙が続きました。オオカミのフルウスも、誰かが発言するまで静かにまっていました。
最初に発言をしたのは、ロバのトロキでした。
「まずは、川下の動物たちの代表を決めて、川上の動物たちと交渉してもらうのが一番だな。意見は、もちろんある程度の方向性は決めた方がいいが、最後は代表者に任せることが肝心だ」
「どうして、代表者に任せないといけないんだ。最初から、全部、みんなで決めてから交渉するばいいじゃないか」
どら猫のミドラが言いました。
「交渉内容を全部、事前の話し合うことなんてできやしないよ。だいたい、交渉といっても、ほとんど川下の動物が、川上の動物に頼むことばっかりなんだから。相手がどんな提案をしてくるのか分からないんだよ。それに、こっちの提案がすべて決まってしまっていたら、情報が向こうに漏れてしまう可能性もある。そうしたら、交渉は絶対に上手く進まない。」
ロバのトロキが丁寧に答えました。
「じゃあ、いったい誰が代表を務めるんだい?もしかして、トロキが自分で代表者になって、自分に都合のいいようにだけ、話をまとめてくるんじゃないだろうな」
どら猫のミドラは、しつこく食い下がります。
「代表者は、ちゃんとみんなで話し合って決めるべきだ。でも、決まったら、ちゃんと代表者を信じて、決まったことにしたがうこと!いいね!」
ミドラも、今度は黙ってうなずきました。
「じゃあ、ミドラ。ミドラが、代表者を決める会議の司会をしてよ。いいね!」
ロバのトロキがいうと、またミドラは、「どうして私なの?」と言い返します。
「べつにミドラじゃなくてもいいけどさ。せっかく最初にみんなで団結しようって言ったんだからさ。それくらいはしてもいいと思うんだ」
ミドラはうなずきました。
「それでは、代表者を決めたいと思います。まず、みなさんに提案があります。それは代表者を決める方法です。できれば話し合いでまとまるのが一番なのですが、もしまとまらない場合は、候補者を数名に絞ったうえで、選挙にしたいと思います。それで、いいですか。」
みんなは黙ってうなずきました。
「それでは、自薦他薦は問いません。みなさん、どんどんと意見を言って下さい」
「え-。それでは私から。私はオオカミのフルウスが良いと思います」
ロバのトロキが言いました。ドブネズミのブードンやミードンもうなずきました。
「いやいや。いきなりフルウスが出て行くと、やはり相手もけんか腰になるから、ここは交渉が得意なタヌキのドロンタがいいんじゃないか。
そう言ったのは、イタチのタイチでした。雀のメイトも賛成しました。
「ほかに誰かいますか?」
どら猫のミドラは、そういって周囲を見渡しました。
「誰もいないようでしたら、選挙で決めたいと思います。みんな、異存はないですね?」
ミドラがそう言ったときに、手をあげたのは、タヌキのドロンタでした。
「ちょっと待って!それだったら僕と、フルウスの二匹で交渉にあたるよ」
「俺も、その方がいい。俺がいきなりいくと、絶対に熊のツッキーやイノシシのキーバたちとケンカになっちまう。ドロンタにしても、後ろに俺がいた方が、心強いだろう」
そう言ったのは、オオカミのフルウスでした。
周囲の動物たちもうなずきました。
「では、ドロンタとフルウスの二匹に任せるということでいいですね」
ミドラは、そう言って会議を終えました。
ドロンタとフルウスは、森の奥へと向かいました。
でも、ドロンタとフルウスの二匹がすごすごと下流へ降りてくるのに、時間は要りませんでした。なにせ、下流の動物たちがお願いするだけで、交換の条件がないのですから、話し合いが上手くまとまるはずもありません。
やがて、川の水もほとんど涸れてしまって、下流の動物たちも、バラバラになってしまったのでした。
「何かいい方法は、ないのかなぁ……」
どら猫のミドラは、人間のいなくなった古い家の屋根裏で、ウンウンと悩んでおりました。
「おやっ!あれは何だ……?」
外に目をやったミドラが見つけたものは、円く固めた石の上に木の板で蓋をしたものでした。今まで、なんとも思っていなかったのですが、ミドラは急にあの板を外したくなったのです。でも、木の板は頑丈に固定されているので、簡単にははずれません。ミドラはロバのトロキを呼びました。
「あっ!もしかして……これは!」
「どうしたの?トロキ!!」
「昔、これと同じやつをみたことがある。井戸っていうんだ。若い頃、人間たちがこの穴からくみ上げた水を運ばされたことがあるんだ」
「じゃあ!」
「うん!!」
ミドラとトロキは互いに目を合わせて頷くと、懸命に、その板を外しました。ミドラ一匹では、無理だったのですが、引っかけたロープをトロキに引っ張ってもらうと、メシメシと音を立てて井戸の上に貼り付けたあった板を外す事ができました。
「これで、どうやって水をくみ上げるの?」
ミドラが、トロキに尋ねました。
「今使ったロープの先に、あっちにあった桶をくくりつけるんだよ。それから反対の先にも桶をつけて、上にある滑車に取り付けるのさ」
トロキの言うとおりにミドラがロープを取り付けて、桶を引き上げると、そこには綺麗な水が入っていました。
「やったー!」
ミドラとトロキは、大声で叫びました。
「どうする?」
「どうするって、そりゃ、みんなに教えるさ」
「昔だったら、独り占めしていたかもしれないのに……」
「昔だったら、そうかもしれないね」
井戸のお陰で下流に住む動物たちも水の心配をしなくてすむようになりました。
「でも……。問題は……」
上流に住む動物たちにも、この井戸を教えてあげるかどうかだな……」
井戸のお陰で、確かに下流に住む動物たちは水不足を心配しなくなりました。でも、だからと言って、急に雨が降るわけもなく、川の水も、もういつ涸れてもおかしくないほどです。
そのころ、上流の動物たちも、困っていました。川の水は、本当に涸れかかってしまい。下流の動物たちの分どころか、上流に住む動物たちの中でもケンカが起こるほど、水不足に悩まされていたからです。熊のツッキーやイノシシのキーバみたいに、力持ちが多いので一度ケンカが始まると誰も止める事ができません。頭脳派で知られる猿のモンキー団や俊足揃いで有名な鹿の疾風隊も、やはり水不足にか勝てないでいました。
「でも……」
「どうして……」
みんな顔を見合わせました。こんなに水不足に悩まされているのに、下流の動物たちが上流へ水を盗みにくることがなくなったからです。
「もしかしたら、本当に……」
「みんな、死んじまったのかな……」
頭脳派で知られる猿のモンキー団が、おそるおそる下流の村々を偵察しに行きました。
ところが、どうでしょう。田んぼや畑には、十分水が行き渡り、動物たちもみんな元気に暮らしているではありませんか。モンキー団は、すぐさま理由をつきとめました。さすがは、頭脳派と言いたいところですが、みんなが井戸へ水を汲みに行くので、考える必要もありません。モンキー団はすぐに引き返し、上流の動物たちで作る自衛団を集めました。
「今まで、ずっと下流の動物たちをバカにして相手にしていなかったけれど、いつの間にか向こうの方が豊かになっている。本当にこのままでいいのか?みんな!!」
「水源を、こんな小さな川だけに頼っていたら、天候には左右されるし、木の実や果物だけだと、やはり心配だ。作物を育てるにしても、下流の方が環境はいい。ちゃんと、下流の動物たちに頭をさげて。話し合いの場を持とう」
「でも、あいつら、いっつも、僕らの食べ物を盗みに来てたんだぜ」
「でも、あいつらからしたら、下流へ流れてくる水を俺たち上流の動物たちがブン取ってったてことにならないか?」
やがて、今度は、上流の動物たちが下流の動物たちに話し合いをお願いしにいくことになったのでした。
「今まで、ごめんね」
上流に住む動物たちが下流に住む動物たちに頭を下げた頃、空はだんだんと黒くなっていき、数ヶ月ぶりの雨がふってきたのでした。
「やったー!」
「やったー!」
上流も下流もなく、森の動物たちは、みんな抱き合って喜びました。第一回目の森の評議会が開かれたのは、それから間もなくのことでした。おしまい。
タヌキの水くみ
「ポンタ!山へ行ってわき水をくんできておくれ」
お父さんに言われて、ポンタは、すぐに出発しました。
でも……。
ポンタはすぐに引き返してきました。
「パパ、わき水ってどこにあるの?」
「おいおい。ちょっとまちなさい」
「ねえねえ、わき水ってどこにあるの?」
「まあまあ、ちょっと待ちなさい。今、地図を描いているところだよ」
どうやら、ポンタは少しあわてん坊みたいです。
「いいかい。ポンタ、次の満月の夜に、神様に供える、大事な大事な水だから、絶対に、ちゃんと汲んで帰ってくるんだよ」
「お父さん、行ってきます!」
「ちゃんと、桶も持って行くんだよ」
ポンタは慌てて物置小屋へ引き返します。
「やれやれ、こんな調子で大丈夫かな?」
「だったら、お父さんが行けばいいじゃないの?」
ポンタのお母さんが、キツネみたいに眉をつり上げて言いました。
「そんなことは、出来ないよ。男の子はみんな、七歳の誕生日がくると、絶対にポンポコ山のわき水を汲んできて、山の神様にお供えをするようにと、昔から決まっているんだから」
「そんなの、迷信でしょ!」
「そんなことないよ。もし、忘れてたり、途中で投げ出したりしたら、日照りが続いて、井戸の水が涸れてしまうのだそうだよ」
「パパも子供の頃に行ったの?」
「もちろん、行ったさ。何度も、泣きそうになったり、あきらめそうになったりしたもんだから、今でもしっかりと覚えているよ」
「でも、ちゃんと、神様にお供えできたんでしょ」
「まあ、なんとかな」
ポンタのお父さんは、低い声で、そう答えました。
「おい、ポンタ!そんなもの持って、どこへ行くのさ?」
声をかけてきたのは、キツネのコンタでした。
「七歳の誕生日を迎えたから、ポンポコ山のわき水を汲んでくるのさ」
コンタはアッと叫びそうになりました。実はコンタ、一週間も前に、七歳の誕生日を迎えたくせに、ずっと面倒くさがって、水くみに行っていないのでした。
「しめしめ……。ポンタが持ってきた水を奪い取ってやろう」
コンタは心の中で舌を出しました。
「やあ、ポンタ!どこへ行くんだい?一緒に遊びに行こうよ!」
次ぎに声をかけてきたのは、ポンタの親友のポンキチです。ポンキチは、三ヶ月くらい前に、水くみへ行ってきたところです。
「七歳の誕生日を迎えたから、ポンポコ山のわき水を汲んでくるのさ」
ポンタは、ポンキチに向かってそう言いました。
「そうか……。頑張ってな」
「ポンキチは一緒には行ってくれないのかい?」
「嫌だよ!あんなのもう十分だよ!」
ポンキチは、思いっきり首を何度も振りました。
「ねえねえ、ポンタ!一緒に遊ぼうよ!」
次ぎに声をかけてきたのは、ウサギの子供たちでした。
「ねえねえ、ポンタ!一緒に鬼ごっこをしよう!!」
ウサギの子供たちは何度も、ポンタを誘います。
「それじゃあ、ちょっとだけ……」とポンタが言おうとしたとき、「ダメダメダメ!」間に割って入ったのは、キツネのコンタです。
「ポンタは大事な用があるんだから、ジャマしちゃいけないよ!」
キツネのコンタは一生懸命にウサギたちを説得しました。
ポンタがポンポコ山の麓まできたころには、もう夕方になっていました。
「どうしよう……。このまま真っ暗になってしまったら……。」
ポンタは今まで、おうちでしか夜に眠ったことがなかったのでした。しかも、それどころか、いつもお父さんタヌキやお母さんタヌキにくっついて眠っていましたから、一匹で眠ったこともないくらだったのです。
まだ、日が沈むまでには、もう少し時間がありましたが、ポンタは木の枝に、木の葉を載せて、今夜の寝床をつくりはじめました。
「もし、枝から落ちたら、どうしよう?きっと痛いんだろうな……」
そんなことを良いながら、ポンタは木の枝に上って横になりました。
「ぐう~」
そう言えば、今日は朝ご飯を食べて出発してから、何も食べていません。ポンタがお腹を押さえると、なぜか涙が出てきました。
「みんな、どうしているかな?」
ポンタは小さな声で、「おやすみなさい」とつぶやいたのでした。
「あれ!なんだろう、これ?」
眠ろうと寝返りをしたとき、ポンタは、お腹にへんな感触を覚えたのでした。
ポンタは驚いて立ち上がると、お腹あたりのポケットに手をあてました。
「なんだろう、これ?」
それは、ポンタのお母さんが書いてくれた手紙でした。
「ポンタへ!今は、どのあたりまできましたか?疲れましたか?お腹はすいていませんか?泣いたりべそをかいたりしていませんか?お母さんは、ポンタが生まれた時のことを、今でもしっかりと覚えています。あんなに、小さかったのに、いつの間にか、ポンポコ山へ水くみができいるくらいに大きくなったんですね。苦しい事もあると思いますが、神様に喜んで貰えるように、最後までしっかりと頑張ってね!応援しています。母より」
手紙には、少しばかりのお菓子が添えられていました。
ポンタは、少ししょっぱくなったお菓子を口に入れると、お母さんからの手紙を大事そうにポケットにしまったのでした。
次の朝、目を覚ましたポンタは、もくもくと山を登っていきました。昨日は、平坦な道のりでしたが、今日はずっと上り坂なので、すぐに息が切れました。そのままずんずんと進んでいくと、だんだんと道が細くなっていき、どれが本当の道か解らないほどです。ポンタは何度も地図を見変えてはコンパスと太陽の位置を確認しました。ロープを使わないと上れないような断崖絶壁もあります。ポンタは自分の歩いて居る道が、本当に正しい道なのか、心配になってきました。でも、お父さんタヌキが書いてくれた、地図ですから、これを信じないわけにはいきません。ポンタは何度も心が折れそうになりましたが、それでも、一人黙々と頂上を目指して歩いたのでした。
沢が見えてきました。喉が渇いているポンタは、そこへおりました。沢の水を口に含ませると、そこに小魚やカニが見つけました。昨日からほとんど何も食べていなかったので、ポンタは夢中になってそれらを捕まえて食べました。そうして、お腹もいっぱいになったので、一休みしようとしたとき、ポンタに良からぬ考えが浮かんだのでした。
「この沢の水を持って帰ったって、誰も解らないんじゃないか……」
ポンタは、水桶に沢の水を入れました。そして、とことこと歩き出したのでした。
「どうしようかな?」
「どうしようかな?」
何度も何度も迷いました。でも……。
「えいやっ!」
ポンタは、その水桶をひっくりかえして、また頂上を目指します。
「これでいいんだよね。お母さん。ポンタはお母さんがくれた手紙を握りしめました。
けっきょく、わき水のでる場所に着いたのは、その次の日の夕暮れ時でした。
水を汲み終えたポンタは、なぜか、どこにいるか解らない神様に向かって手を合わせていました。その夜は、その辺りに寝床を造って休み、次の日の朝、帰路につきました。来るときは、あれほど、辛い思いをしたのに、帰りはなぜか足取りも軽やかです。
「こういう時ほど、ケガをしないように気をつけなさいって、お父さんが言っていたっけ」
ポンタは口笛を吹きながら山を下りていったのでした。
「大変だ!大変だ!大変だ!」
もうすぐお家へつこうかという時になって、キツネのコンタが、走ってやってきました。
「火事だ!火事だ!」
キツネのコンタは、大声でそう叫ぶと、「ちょっと、これ、借りるね!」とポンタが、懸命に汲んできた水をどこかへもっていってしまったのでした。
ポンタは、呆然としながら、おうちへ帰りました。
「ポンタ。水は汲んできたのかい?」
お父さんがポンタに尋ねました。
「さっき、火事だと言って、キツネのコンタが持っていっちゃったの!」
「火事だって!そんなの村のどこにも起きていない!」
ポンタが、騙されたと気づくまでに時間は必要ありませんでした。
「どうする、ポンタ!コンタの所へいって取り返してくるのかい?」
「でも……。」
ポンタは沢での出来事を思い出しました。
「もし、コンタに返してもらっても、その水が本当に、ポンポコ山のわき水かどうか、なんて、もう解らないし……・
「お父さん!ぼく、もう一回水を汲んでくるよ!せっかく、ここまで頑張ったんだから、最後まで、ちゃんとしたものを、神様にお供えしたいから」
ポンタが、お父さんやお母さんと一緒に、森の神様の所へ、ポンポコ山のわき水をお供えできたのは、それから五日後のことでした。おわり
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