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2021年振り返りと2022年の見通し

あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。
JAWS-UGを中心としたAWSユーザーコミュニティ支援2021年の振り返りと2022年の見通しについてまとめてみました。

総論

AWSユーザーコミュニティである JAWS-UG の2021年の勉強会は12月30日の福岡支部のもくもく会、そしてCLI専門支部の#246R 入門者向け IAMロール入門で年納めとなりました。昨年の勉強会・イベント関連開催回数は 376回 (対前年比 80.8%増)はコロナ前の2019年以来の300回越え、申し込み者延べ総数は 26,124人(対前年比 41.3%増)で初の20,000人突破どころか25,000人越えとなり、数字をみれば過去最高にして最大の勉強会活動になりました。これは、JAWS-UG各支部の運営のみなさん、そして勉強会に参加してフォロー・サポートいただける皆さんの知見の共有に対する熱意と向上心に支えられており、本当に感謝しかありません。ありがとうございました。

JAWS-UG 勉強会・申し込み人数の推移

これまでのデータとの比較を継続するために、開催回数および申し込み者数を使っていますが、2020年11月からJAWS-UGの各支部の登録メンバー数と勉強会開催状況を毎月モニタリングしており、たとえば、過去1年間に勉強会を開催している支部の総登録メンバー数は1年前と比べると41,587人から50,070人(8,483人、20.4%増)となり初めて5万人の大台を超えました。(ただし、この数字はその時の支部の活動状況によって増減します)

たぶん、多くの支部運営メンバーが感じているように、2019年以前のリアル会場・対面・オフライン中心の勉強会環境に比べると出席率(歩留まり)が下がっています。以前は80%以上、JAWSの場合は90%近くの出席率でしたが、オンライン勉強会は参加場所を気にすることがない「申し込みのハードル」が下がり、現実には定員無制限によりキャンセル待ちも発生しづらく、他の参加者・申し込み者へ迷惑をかけることがないという心理的な要因もあり、気軽に申し込んだものの参加しなかったという人も増え、運営のみなさんは50%-60%という出席率に感じられているでしょう。それでも、より多くの人に参加機会を提供し、出席率が低くなった分、申し込み数を増やせばいいのですから、出席率をあげるための制約や条件を付加するより、新しい人に勉強会を認知してもらい申し込んでもらう方がオンライン勉強会に関しては良いと考えています。もちろん、オンラインハンズオンなど、定員をきめて、サポートスタッフを配置する場合は、この限りではありません。みなさん、無断キャンセルはなるべく避けて、キャンセル待ちの方に席をお譲りいただけると助かります。

COVID-19の収束が見えない中、各支部の運営の方々が前向きにオンライン勉強会を企画・開催していただいたおかげで、上述のように過去もっとも多くのAWSユーザーの方々に勉強会参加の機会を提供したのは事実であり、かつ、世界的にみても日本のAWSユーザーグループの活発な活動は驚きと賞賛を得られています。

何がよかったか

2020年は新型コロナウィルスによる影響がどれも「はじめての経験」だったため、すべてが手探りであり、なにかをやるにしても躊躇せざるを得ない状況でした。しかし、2021年はそこからの多くの学びを得て、これまでやれたことをさらに伸ばし、やっていなかったところは他の支部の前例をみてチャレンジした年だったと言えます。オンライン勉強会のすべてが良いわけではありませんが、それぞれの支部がJAWS-UGの他支部や他のユーザーグループの知見を得てオンライン勉強会を開催するようになった年でした。

勉強会を再開催しはじめた地域支部

JAWS-UGには仕事・生活している場所をベースとした「地域支部」と、テーマや対象者を決めた「専門支部」の2種類があり、オンライン勉強会は目的やコンテンツが明確な専門支部向けだという知見を共有してきました。地域支部は「人」が中心のコミュニティであり、専門支部は「コンテンツ」が中心のコミュニティの傾向が強いためです。地域支部にとってはオンライン勉強会の開催は手応えや反応がオフラインほど感じられない状況ですが、昨年の勉強会・イベント開催回数 全376回中、207回(55%、対前年比で4ポイント増)が地域支部によるものでした。その中で、新潟支部、札幌支部、愛媛支部、金沢支部、岐阜支部、横浜支部、名古屋支部、浜松支部の8支部が年間開催数10回を越えており、昨年より大きく増えました。2020年では10回を越えたのは札幌支部、浜松支部、金沢支部、名古屋支部の4支部のみでした。2019年のコロナ以前は年間10回以上開催は11支部だったので、まだそのレベルにまでは回復はしていません。

なお、地域支部の勉強会で注目すべきは、コロナ禍における地域支部の勉強会開催のスタイルで、一般的なオンライン勉強会だけではなく、次の3つのスタイル 1) もくもく会、2) ハンズオン、3) 他支部とのコラボ勉強会 が加わっています。それぞれ目的やモチベーション、開催のための手間が違い、各支部運営の事情にあった方法を選ばれています。

CLI専門支部が勉強会をリードした専門支部

CLI専門支部が支部単独で年間73回 (対前年48回増, 対前年比 192%増) の勉強会を開催し、延べ4,344人 (対前年 1,968人増、対前年比 82.8%増) の方々に勉強会参加の機会を創出しました。通常開催でも月2回の頻度だったりするのですが、東京オリンピック期間中にあわせるように7月は12回、8月は26回と開催し、その期間の平均の申し込み者数が54人と、回数のみならず安定して申込者数も多かった年でした。ハンズオンのための手順書がすべての回で準備されている強みもあり、お昼休み時に勉強会を開催してもオンライン勉強会であれば人が参加することを実証されました。

専門支部が数字的に非常に伸びているように見えますが、CLI専門支部がしめるポーションが大きいことはちょっとだけ意識する必要があります。

勉強会開催を少しでも楽しく、負担少なくするための支援

配信支援はもちろんですが、お勝手サポートですが、この一年以上にわたり、勉強会のオープニングのビデオの作成と提供をしてきました。勉強会開始のメリハリをつける一つの方法だと思い、自分が配信支援する勉強会については製作してきました。

はじめてオープニング動画を作ったのが2021年5月26日のAWS Expert Online for JAWS-UG #15 でした。

ここから実に26回の勉強会のムービーを作るという場数を経験させてもらいました。途中からテンプレートができあがったので、おおよぼ90秒のムービーをつくるのに、connpass/Doorkeeper上でアジェンダ、登壇者情報の素材がそろっていれば1時間ほどで作成できるようになりました。
2021年最後の製作ムービーは初心者支部年忘れLT大会向けでした。

配信についても、いつまでも私が支援し続けることは「サステナビリティ」に欠けるため、勉強会運営メンバーができる方法を探していました。さまざまな方法を試してみて、OBS+Zoom/Chimeの組み合わせは柔軟性があるものの、学習コストが高く複雑であり、この組み合わせをトランスファーするのは少々難しいと判断しています。そこで、Streamyard.com の利用を進めてきました。月々5,000円程度を支払うことで、OBSやZoomが請け負う、いわゆる「送出」と呼ばれる部分をSaaSとして利用できます。配信は YouTube や Facebook などを指定できます。SaaSとして提供されている機能に利用限定されますが、一般の勉強会運営メンバーの使いやすさを考えると現実解だと思います。2022年はこのSaaSの利用を提案していきたいと考えています。

ただ、Streamyard で今直面している大きな課題は2つで、ひとつは Twitter 連携が弱くなること。OBSではブラウザ上のTweetDeck のタイムラインを部品として画面に組み込んで配信することができますが、Streamyard ではそれができません。インタラクティブな機能としては YouTube のライブチャットの取り込みなどができますが、ソーシャル上での拡散を考えた場合は Twitter 連携および #jawsug ハッシュタグの利用をし続けたいです。そして、ふたつめは意外に忘れがちな「最大同時登壇数」です。画面上(仮想ステージ上)に登壇できるのは10人までで、ちょくちょくこの10人の制限を忘れがちです。

課題またはチャレンジだと感じたこと

COVID-19の2年で活動がなかなか再開できない支部への支援

勉強会を開催した最後(最新)の日が確認できる支部、ATNDなどのサービス終了でそれも確認できない支部をみてみると、かなり長い期間、単独で勉強会を開催していない支部が増えてきています。昨年末の時点で、半年、1年、2年、3年、4年で休眠期間状況になっている支部数分布が以下です。

182日=半年間に1度以上開催した 35支部(43.75%)
365日=1年間に1度以上開催した +8支部 (10.00%) 累計 53.75%
730日=2年間に1度開催した +7支部 (8.75%) 累計62.50%
1,095日=3年間に1度以上開催した +9支部 (11.25%) 累計73.75%
1,460日=4年間に1度以上開催した +3支部 (3.75%) 累計 77.50%
1,461日~ 4年以上開催していない +18支部 (22.50%) 累計 100.00%

3年以上活動がない支部が21支部ありますが、これらはコロナ禍が理由ではないと思います。一方で、1年から3年の間で勉強会を開催していない16の支部はコロナにより開催を躊躇しているうちに月日が過ぎてしまったと考えています。

COVID-19の先行きが見えない現状でも支部運営メンバーが勉強会を開催したいと思っていただき、開催しやすい状況を作り出す、新しいメンバーが参加しやすい環境を作るなど、AWSがJAWS-UGに対してできる支援が何かを深掘りする必要を感じました。

JAWS-UGのマジョリティ層における知名度の向上

もちろん、JAWS-UGの知名度は高いことは紛れもない事実なのですが、キャズムを越えて、クラウドが一般的になると、必ずしも自ら積極的に情報集めて、自ら学ぶ人たちというユーザーコミュニティ活動が「刺さる」人たちよりも、比較的「受け身」のユーザーが増えていくのはマーケットが成熟する上で常であり、イノベーター理論(普及学 : 社会学者エヴェリット・ロジャース)やキャズム理論で説明されるように、避けることはできません。そのような方々が相対的に増えていくと、JAWS-UGを知っている人の割合は減っていきます。

しかし、相対的にAWSの知名度は上がり、AWSのブランドを信頼する人たちが増えていきます。この11年はJAWS-UGの成長がAWSの成長であり、JAWS-UGというユーザーコミュニティがAWSをユーザーに広めてくれる役割をもっていたわけですが、マジョリティ層に対しては逆にAWSが、AWSのブランドと信頼を駆使して、JAWS-UGを知らない人たちに素晴らしいAWSユーザーコミュニティを紹介する番だと考えています。マジョリティ層での認知度向上と、そこからのユーザーコミュニティへの参加が、次の10年の成功の鍵だと考えています。

2022年の見通し

これらを踏まえて、2022年は向こう10年を見据えた新しい支援活動と、これまでうまくいっている支援を継続して、AWSとJAWS-UGおよびAWSユーザーグループとの関係をより強化していきたいです。

まず、COVID-19の先行きが見えないので、オンラインを計画と活動のベースとしていきます。もちろん、可能であればハイブリッドも検討していきたいですが、COVID-19前のオフライン中心にはまだ戻れないと考えています。

そして、これまで JAWS-UG や AWS ユーザーグループを知らない方々へのアプローチとして、AWSからのユーザーコミュニティ関連の情報発信を強化したいと考えています。具体的な支援策については準備状況と時期をみてユーザーグループに提案していきますが、まずは、AWSジャパンの独自オウンドメディアの builders.flash で JAWS-UGメンバーやユーザーグループに関連した方々を積極的にフィーチャーして、ユーザーグループ、ユーザーコミュニティで活躍するデベロッパーやエンジニアの「クラウドジャーニー」を多くのユーザーと共有します。この素晴らしい個人の体験を共有することで、ユーザーコミュニティの価値を理解してもらいたいと考えています。

今月すでに builders.flash では以下の記事で JAWS-UG に関連した(元)学生ユーザーのおふたりをフィーチャーしています。

また、AWS HEROES や AWS Community Builders といったグローバルプログラムとの連携も検討中で、日本にいる素晴らしいインフルエンサーの知名度を上げる記事も検討しており、AWS HERO や AWS Community Builder の皆さんに協力を依頼したいと考えています。

また、AWS ホームページの Developer Center のAWS ユーザーグループディレクトリの JAPAN の部分を、活動している支部、ユーザーグループに誘導する目的のために、活動状態のグループをリストして、ダイレクトにグループのページに飛ぶように変更する準備をしています。これは、AWS ユーザーグループに馴染みのないユーザーに対して、どのユーザーグループの勉強会を参考にすればよいかがわかりやすくなると考えています。

これ以外にも、グローバルのコミュニティプログラムの展開などがありますが、これまで行ってきたユーザーグループの勉強会開催支援を通したコミュニティエンゲージメントを継続しながら、コミュニティマーケティングはユーザーコミュニティによるマーケティングをコミュニティマーケティング1.0とするなら、ユーザーによる自立した素晴らしいユーザーコミュニティ活動の認知度を上げるための、AWSによるマーケティング活動、いえば、コミュニティマーケティング2.0のような AWSとJAWS-UGの関係があるからこそできる next step に踏み出すことができればと考えています。

5901文字 3日間(2021)+3日間(2022)

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