退院日/生後1週間

出産日から5日後。
予定通り退院が決まった。

産院での最後の朝ごはんを食べてから、1ヶ月健診の予約、母乳外来の案内、退院後に飲む薬の説明など助産師さんや薬剤師さんが入れ替わり立ち替わり来て、たくさんの話をされた。

情報量が多すぎて、正直一つ一つ正しく理解できていなかった気がする。

いろんなタスクの合間で、赤ちゃんに退院着を着せた。
この日のために用意したセレモニードレス。

この日はとても天気がよく最近にしては気温も高かったため、少し暑そうではあったけど、帰るまで少し辛抱してもらった。

両家の親や親戚は来ず、旦那さんと赤ちゃんと3人でただ産院から自宅へ帰るだけだからそんなにめかしこむ必要もなかったのかもしれないけど、お祝い事はできるだけ最低限のことをやってあげたいという気持ちがある。

この先あらゆるイベントを、きっと夫婦二人でやることになるけど、二人きりであることで赤ちゃんを祝福する熱量が下がってしまうのがなんだか嫌だった。

祝われる本人は恐らくこんな小さい時のお祝い事の記憶なんて残っていないだろうし、どこかに連れ回され、付き合わされることがむしろストレスに感じることもあるかもしれないのだから、きっとこれは私の個人的なエゴなんだろうと思う。


昼前頃に退院手続きを済ませ、迎えに来てくれた旦那さんのもとへ。

足が病的に浮腫んでいて入院時の靴が入らなかったため事前に頼んでサンダルを持ってきてもらったが、それもベルト部分を最大に緩めてようやく入る状態になった。

ちなみに自分用の退院着として持っていたワンピースも、まだ妊婦のようなぽっこりお腹のせいでシルエットが地獄のようになったので着ずに帰った。

産後の体型について向き合いきちんと絶望したのは、この時が初めてだったかもしれない。


産院前までタクシーを呼び乗り込むと、あっという間に自宅に着いた。

6日ぶりの我が家。

6日前と同じ家だけど、今日からは赤ちゃんがいる。

カーテン越しに見える青空のせいか、いつも過ごしていた自宅がキラキラと違った空間に見えた。

旦那さんが、小さな白いお花を買って花瓶に飾っていてくれた。
「赤ちゃん、待ってたよ」の形が、さりげなく、なんとも彼らしくて嬉しくなった。

そして旦那さんが初めて赤ちゃんを抱っこした。

優しく赤ちゃんに微笑みかける姿が幸せに満ちすぎていて、なんだか非現実的な、夢の中にいるような感覚になった。

人生のピークが今この瞬間のような気がしてちょっと不安になってしまうほど。

ここがピークだったとしても、あとはくだるのみだったとしても、ここに辿り着いてよかった。

忘れたくないなぁ。

いつか記憶が薄れたり思い出さなくなってしまうこともあるかもしれないけど、忘れたくない。


なんだか出産した日よりも今日の方が新たなスタートって感じだ。

ようこそ、赤ちゃん!

これから長い間、ここで一緒に暮らしていこう。

きみが帰ってくる場所はここで、楽しいことも辛いことも、この家の中で、家族みんなでいろんな話をしよう。

この場所がきみにとってあたたかく幸せな思い出に溢れた家になりますように。

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