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結界

その数字だけ見れば、世間一般的には十二分に大人で、社会的地位も肩書きもしっかりとある人。表向きは戦う企業戦士であるあなたは、私の前だけはその重たい鎧を脱ぎ、心優しい無垢な少年に戻る。

澄んだ心は疑うことを知らず、潤んだ瞳でまっすぐに私を見つめる。しかし時としてその純粋で危うい姿は、私を苛立たせ、惑乱させる。

無防備過ぎるその瞳の肩越しに、後ろで虎視眈々とあなたを狙う妖しい目が光っていることも知らずに。

あなたがその目に気づいてしまったら、一瞬で持っていかれそうで、私はあなたがそれに気付かないように必死で私に興味を引かせる。

気付かないで…後ろを見ないで…私だけを見つめてて…


あなたを私に集中させるために、私はありとあらゆる手段を使ってあなたの視線を引き付ける。

唇で、吐息で、甘い囁きで私に夢中にさせながら、私は片手であなたを抱き、もう片方の手であなたの後ろにジリジリと結界を張る。あなたに気付かれないように。そうっと、確実に。そこからは誰も中に入ってこれないような、頑丈な、天までもそびえ立つような、見えない結界を張る。

あの妖しい目からあなたを守る。誰にも触れさせない。誰にも邪魔させない。もしもその目があなたを惑わし、傷つけるようなことがあったなら、私は絶対に許さない。

守るべき存在ができると、人は強くなる。私は強靭な精神をこの肉体に宿し、あらゆる敵からあなたを守る。

あなたの肩越しから放たれた鋭い矢が私を射抜き、激しい痛みが襲ったとしても。しかし私は何事もなかったように、あなたに悟られないようにあなたを抱く腕を柔らかく保つ。この腕の中にいる間はあなたが安心して深く眠れるように。

怖がらなくていいの。何も心配はないよ。私がいるから大丈夫。あらゆる毒矢からあなたを守ってみせる。

そのために私はこの身に永遠の命を宿す。毒矢に当たっても決して屈しない強靭な心と身体。


終わりのない毒矢の苦しみに絶望し、その永遠の命と引き換えに安らぎを手に入れたケイロンは星になったけれど、私は決して屈しない。あなたを守るためなら、その苦しみさえも涼しい顔をして受け入れられる。私が得られる唯一の安らぎは、この腕の中にあるから。


何も知らないあなたは、今夜も私に優しく歌う。そのしなやかな指で私の身体を爪弾き、切ない旋律を奏でる。甘やか声は私をとろけさせ、二人だけの頂へと導く。

しかしその歌に誘われて、あの妖しい目が結界の向こうでまた光ったのを私は見逃さない。でも安心して。そこからは絶対に踏み込ませないから。

そんなに無防備で可愛い目をするから、私はいつでも何もかも赦してしまう。そしてこの安らぎを守るために、誰にも破れない結界を張る。

戦う準備はできている。いつでも。私は誰からも、何からも傷つけられない。あなたを守るために、今夜も夜空を駆け回る勇敢なサギタリウスになる。


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