へでもねーよ

何故か時々思い出す男がいる。

もう会わなくなってから2年近く経つのに。

今頃どうしているのか…

彼女はできたんだろうか。親に心配かけるから、そろそろ結婚しないとと言っていた。

相性は悪くなかった。

多分、お互い一目惚れだった。

何度もデートを重ねて、このままずっといい関係でいられたらと思っていた。

多分、向こうも同じだった。

アンタがくれた香りは今でもアタシのお気に入りだし。

アンタが残したクチビルの感触は歴代サイコーだったし。

アンタがいればアタシの人生もう安泰だと思っていたのに。

ある朝、コーヒーを飲みながら、ヤツはふと言った。

「本気になると思ったらもう会わない」

その言葉が今も耳に残って離れない。

一体どういう意味なのだろう、と思ったがその時は聞けなかった。

なんでそんなことを言ったの？

どうせ別れるなら何も言わずにフェードアウトして欲しかった。

あのあと向こうから会いたいと言って約束したのに間際になってキャンセルされた。

天国からの急展開。

しがみつけるような「確かなもの」なんて何もなかった。

なぜ会いたいなんて言ったの？

そしてなぜ会ってくれなかったの？

だから、いつまでも思い出してしまうんだ。あの一言を。

「本気になると思ったらもう会わない」

本気だったの？だから会わなかったの？

そんな思わせぶりな言葉を残して、ヤツは消えた。

卑怯者め。

だからいつまでも思い出してしまうんだ。

カワイイ彼女はできたか？親を喜ばすことはできたのか？

頑張れよ。

アタシは今でもアンタが好きだよ。

ふざけんなよ。泣いてなんかねえよ。

時々思い出しては懐かしく思うだけだよ。

へでもねーよ。

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