見出し画像

中学生の妹は大人になりたくないらしい

愛知に住む中学生の妹が、東京に遊びに来た。期末テスト終わり、10個上の姉と、2泊3日のドキドキ東京旅行。

私は上京してからそろそろ4年になるけれど、そのうち2年はまともに家に帰っていなかった。仕事を辞めたことも、アイドルとかコンカフェとかそういった類のことも必死に隠していたからだ。バレたら色々言われそうで嫌だったし、嘘が致命的に下手なので帰るのをやめるの方がうんと安全だった。だから、妹とこんなに長く過ごすのはかなり久しぶりの事だった。

妹とたくさん話をした。
お父さんが家事に目覚めて働き者なこと、お母さんはそれに甘えて運動不足なこと、弟たちは兄弟じゃなくて親友みたいでなんだか可笑しい事。
バレー部が最悪パワハラ環境だったこと、酷すぎて同学年が9割やめたこと、ついに自分も辞めたら急に学校が天国になったこと、入った美術部が本当に最高なこと。
数学のテストで裏面気づかなくて酷い点数になったこと、塾に行くべきか悩んでいること。
地獄少年花子くんが超好きなこと、学校ではアニメの話題を皆していること、ボカロが給食で流れても普通なこと、友達の影響で最近読書ブームが来てること。
そして、今のクラスが好きな事。

令和を生きる中学生のリアルな話題は熱があるし、驚く程に新鮮だ。だけど、その景色には私の知ってるチャイムの音色が響いたし、あの土埃が舞うグラウンドの香りがするような安心感もあった。

「今のクラスがほんっと良すぎて、もうクラス替えしたくないんだよね」
クラス替え...確かにあれは一大イベントだった。中学を最後にクラス替えがなかった私には、その響きはひどく懐かしい。

「今より楽しい時期なんて一生ない気がする」
「受験生も高校生も勉強いっぱいしないとだし」
「働きたくない ずっと子供でいたい、、」

「大人になりたくないなぁー」

彼女の目にうつる大人 は、酷く偉くて、疲れているようだった。

「そっかぁ、ほっちゃんは大人になりたくないんだねぇ」

思えば、中学生くらいの時は、私も、大人になんてなりたくなかった。大人ってなんか疲れてるし、仕事は大変そうだし、日本の未来はくらいって皆言うし。そんなもの背負いたくないよ。勘弁してくれ。

でもそれは、周りの大人に、楽しそうに仕事している人が誰もいなかったからだと思う。

色んな本と、動画と、人に出会った。
いつからだろうか。
今のわたしは、大人のことが、とても好きだ。

まず、歳をとるという行為は、すてきだ。
自分という生命体に、時間を思い出と一緒に流し込むこと。真っ白でなんの味もなかった自分に、深みが出てくる。去年の自分より、今の自分の方が色んなことを見ていて、複雑な感情を知っている。私に味があったなら、きっと今のわたしの方がおいしいに違いない。だれか、味見する?

もちろん、メイド喫茶とかコスプレとか、そういう界隈が好きで、これからも携わって生きたい以上、若さやかわいさを失うことに対するデメリットを感じることはある。でも、人生全体で見れば歳を重ねることはすてきなことだ。

...いや、私はどうしても、すてきにしたいだけなのかもしれない。歳をとることは避けられない事実なのだから、いやだ嫌だと過剰に怖がることには意味が無いし、そういう人を見ると愚かだなぁと思ってしまう。だって、歳とりたくないよという人にかける言葉はめんどくさい。お前はどうせ歳をとっていくんだよ、そしてどうせいずれ死ぬ、わたしと一緒なんだ。
だから、歳を重ねることを嬉しがれるような時間を過ごしたい。そうして、歳をとった魅力の詰まった自分のことを、今よりたくさん愛して受け入れたいな、と、心からすんなり思えている。

大人の定義は難しいけれど(※1)自分の人生を、自分で決めることが出来る状態を指すとするならすごくいい。二十歳で契約した医療脱毛に親の同意書がいらなかったのは最高だった。
今日何を食べるのか、どこへ行くのか、そして何をして生きるのか。毎日選ぶことが出来る。

大人になるということは、20歳になることじゃない。よく言われるように、何かを諦めて生きること、だけでもないと信じたい。

大人とは、自分に決定権があることを受け入れて、間違ってるかもしれなくてもきちんと選択出来ること。子供や年下の前では大人ぶれて、あわよくば憧れられるような人のフリが出来ること。自分と違う価値観をすんなり受け入れることが出来ること。自分や自分の周りのことを、それなりに愛することができること。

上手くまとまらないけれど、今の私はそんな感じに大人を定義づけている。もう少し大人になったら、もっと素敵にまとめられるような気がしている。未来の自分に期待。


「おねえちゃんは、大人、けっこう好きだけどなぁ」

そう言って、ちょっぴり色んな話をした。
割と楽しそうに働いているデザイナーの友達もいるし、ベンチャー企業でバリバリやるのが楽しいって人もいること。安定したそれなりの会社で推し活を楽しんでる人もいること。そうなったら花子くんのグッズ買い放題だよ!というと、たしかにそれはすごい、と頷いていた。

それと。
少しびっくりなことなんだけど、と前置きして、「苦しかった時の話をしようか」という本を、少しだけ一緒に読んだ。資本主義社会について、義務教育ってやつでは教えてくれないんだってー、とか、資本家っていうひともいるんだって!知ってる世界を広げるっていうのが大事みたいなんだよねぇー、なんて話もすこしした。公務員家庭の常識からするとかなり重い気がしたので、頭の片隅に残ればラッキーかなー、と本当に一瞬にしておいた。

「おねえちゃんはいつが1番楽しかった?」

妹がたずねる。
うーん。と呟く私。

小学生も中学生も悪くはなかったけど、毎日キャラを作って取り繕って生きてることに疲れていたし、最高に楽しかった記憶は無い。高専という学校のことは好きでは無くて何度も泣いたし、就職先はこれじゃない感でもやもやしてたし、アイドルはステージ向きじゃなかったし。

「今かなぁ」
にやり、としてそう言うと妹は目を丸くした。
「り、理想すぎる、、、」
どうやら衝撃を受けていたような妹に、どや顔をお見舞いしておいた。

帰りの新幹線待っている時、「すごく楽しかった、本当に終わって欲しくない」「なんかちょっと、楽しそうな大人もいるって分かってよかった」「将来が広がった気がするかも」と聞いた訳でもないのに言ってくれて、おねえちゃん感動した。いい子すぎる。一生守りたい。

大人のふりをすることが大人なんだと思うから、これからも、選択して、理想像を持って、視野を広げて、自分と身の回りを愛して。

そうやって
自分の思う大人をやっていけたらいいな。



桃辿まいる

現在、#1ヶ月書くチャレンジ (9日目)noteのアカウントが無くてもいいねが出来ます!既読感覚でいいねしてくれるとモチベになります!本当にうれしいです🫶




以下削った部分。※1

ここから先は

577字 / 1画像

住人プラン

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

価値を感じてくれること、生きる糧です。 カフェでの1杯や、本代にさせて頂きます☕️ noteのコメントには返信機能がないので、こちらで感謝を込めた返信をさせて頂きます✉️♡‪