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【授業・研修のレシピ】覚えにくい数字や文字列を記憶する方法を教える

学習の場面、とくに試験のときにはしっかりと「覚えること」が重要視されます。しかし、聞き慣れない用語だったり、数字だらけだったりして、なかなか覚えられないということがあるのではないでしょうか。

記憶には「短期記憶」と「長期記憶」がある

日常生活では、すぐに忘れてしまってもよい記憶というものがあります。たとえば、知り合いの電話番号を聞いて自分の携帯電話に入力してしまえば、その番号はすぐに忘れてもいいですし、実際はほとんどその場で忘れてしまうでしょう。このような種類の記憶を「短期記憶」といいます。
一方、同じ電話番号でも自宅の電話番号や携帯電話の番号は、いつでも思い出せないと、日常生活で不便ですよね。覚えておいて必要なときに情報としてすぐに出せる記憶を「長期記憶」といいます。

「記憶する」学習というのは、「短期記憶」を「長期記憶」にしていくことです

「短期記憶」と「長期記憶」とでは学習方法が異なります。記憶したことを忘れないためのトレーニングを心理学用語で「リハーサル」といいます。そして、短期記憶として情報を覚え忘れないようにするためのリハーサルを「維持リハーサル」、短期記憶からさらに長期記憶へと記憶を定着させるためのリハーサルを「精緻化リハーサル」といいます。

精緻化リハーサル(語呂合わせ)で記憶する

先日、看護学科1年生の「栄養生化学」の授業を1コマ担当しました。栄養生化学では、栄養素とその働きを理解する必要があるため、どうしても栄養素の種類や血液検査の正常値など、たくさんのことを覚えなければなりません。
たとえば、栄養評価に関連する血液データの正常値として、総蛋白(6.5〜8.0g/dl)、アルブミン(4.0〜5.5g/dl)は覚える必要があるでしょう。しかし、他にも覚えなければならない数値はたくさんあります。
また、栄養生化学ではカタカナが多くみられます。たとえば、知識として「必須アミノ酸」9種類を覚えなければなりません。イソロイシン、メチオニン、スレオニン、フェニルアラニン、トリプトファンなど・・・。これらを呪文のように唱えたとしても、なかなか覚えられないことは想像つくのではないでしょうか。
このようなときは精緻化リハーサル、すなわち「語呂合わせ」をして覚えると、記憶が定着しやすくなります。

みんなで「語呂合わせ」を考える

栄養生化学の授業では「みんなで語呂合わせを考える」というワークを行いました。いずれも国家試験に出題されていた問題を扱いました。

たとえば、総蛋白とアルブミンは栄養評価をするうえで必要な数値ですので、正常値を覚えていなければなりません。だからといって、総蛋白は6.5から8で、アルブミンは4から5.5で…といった感じで記憶しようと思っても、他の数値とごちゃごちゃになってしまったり忘れてしまったりするでしょう。
そこで、数値を覚えるための「語呂合わせ」を考えます。さて、みなさんだったら、どのような語呂合わせにするでしょうか。

トランポリンはむこうでやれ
島はここにある

これならなんとなく覚えられそうな気がしませんか?

複数のカタカナ用語も語呂合わせをつくると覚えやすくなります。
次のカタカナはどうでしょう?

糖は丸い網で楽に救おうぜ
“糖質すくい”のようなイラストもあれば、イメージもあいまって、いっそう記憶に残るかもしれません。

また栄養生化学とは異なりますが、看護師になると心電図の電極を付ける位置を覚える必要があります。この場合、電極を装着する位置に加えて、電極の色も覚えなければなりません。こうした無意味な色の順番や数値などは語呂合わせをして長期記憶にしていくとよいでしよう。

学習方略が身につくようなワークを取り入れる

授業をしていると、どうしても「教えたいこと」「覚えておいてほしいこと」「国家試験にでそうなこと」を伝えれば、教えた気になってしまいがちです。しかし、まだ臨床実習も経験していないような1年生では、これらの数値や用語が健康状態や疾患など何と関連するのかイメージしづらいため、より覚えることが難しくなります。

学生たちに「これは覚えておいてほしい」と思うことがあるのであれば、記憶するコツなど「学習方略」も併せて教えるとよいのかもしれませんね。今回のように、精緻化リハーサルをワークに取り入れたことによって「あー、あのときみんなでこんな語呂合わせを考えたな」と記憶に残りやすくなるでしょう。

もうすぐ定期試験です。相変わらずインフルエンザが猛威をふるっていますが、体調に気をつけてがんばってほしいものですね。

(IMAGE: GETTY IMAGES)

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