今こそ選挙のはなしをしよう #1 選挙に行く方法

 先日行われた統一地方選挙の前半戦では、主に政令指定都市の首長(「首長」とは、地方公共団体のリーダーで、都道府県なら知事、市町村なら市町村長のことを同時にさすことのできるめちゃくちゃ便利なことばである。おぼえておこう)の選挙と、県議会議員選挙があった。基本的に国政よりも地方選挙の方が投票率が低くなるし、今回も国政と比較すると軒並み低い結果になった。ぼくは正直言うとこれを「もったいないなあ」と思っている。なぜなら、国政選挙、つまり衆議院議員選挙や参議院議員選挙と比較すると、地方選挙は簡単で、投票の「入門編」とするならこれほどいいものはないし、まして自分の住んでいる自治体が投票ひとつで良くも悪くもなるということを身をもって経験できるという意味でも、より身近で、よりコミットすべきであると考えているからだ。

 ただ、投票率が低いということは単に、「わかりにくい」「誰でも大して変わらない」と思われているということでもあるし、実際「どの候補に投票すればいいのかわからないから選挙に行かない」なんてもったいない話もよく聞く。そして、実際は「選挙ってなにやったらいいのかわからない」からみんな放置しているだけなんじゃないか、とすらぼくは思っている。
 先に述べておくが、「1票で世の中変わるわけないし」というのは本当である。1票で世の中が変わることは確かにあるが、稀であるし、「そうならないように」政治は動いている。
 ただ、そう言って投票行動を真面目に行わないひとにひとこと申し上げたいのは「あなたと同じ考えの人間が何人いると思ってるんですか」である。そういう人間は自分だけがそうしているとばかり思いがちだがそんなことはない。あなたの投じた1票は、同じような人間が同じように投じた100票、1,000票、場合によっては10,000票に匹敵するのだ。あなたみたいな人はいくらでもいる。だから、その人たちと同じだと思われたくないのなら、もっときちんと考えればいい。ぼくはそう思ってこの記事を書いている。

 もっとも、ぼくの周りは「意識の高いひとたち」ばかりなので、「選挙に行かない奴はゴミ」「みんなマジで選挙行け」と平気な顔で(ぼく含め)言うが、そういう人間ほど「どこに投票しろ」みたいなことは言わない(言えない)わけで(なぜなら意識が高いから)、なんもわからないひとからしたら「行ってどうしたらいいんじゃい」「てか入場券とかないんですけど」「現職でいいんだけど、現職がだれかわからんからもういいや」という形で投票所に行きそびれたり、行かなかったりするのではないか、とぼくは考え始めたのである。

 そこで、この記事では、

1 どうやって選挙に行くのか

2 選挙でなにをすればいいのか

 という2点にフォーカスしていこうと思う。

(※書いていて長くなってきてしまったので、記事をトピックごとに分けて掲載する)


はじめに


 ぼくは政治が好きだ。そして政治家を選ぶための選挙も好きだ。そして選挙という事務がとんでもない金額(見た目の地味さからは想像も出来ないくらいの、という意味)の税金と、おびただしい数の公務員の血と汗と涙で構成されていることを知っている。それだけに、所得税や法人税のみならず、だれもが消費税で相当な金額の税金を納めているわけなのだから、もっと選挙を知って欲しいし、身近に感じて欲しいというふうにも考えている。そして、選挙に対する関心が高まっていけば、各自治体はより選挙を重要視するだろうとも思っている。という完全な私利私欲でこの記事を書くことを先におことわりしておきたい。

 前置きで相当書いてしまった。ここからが本文になる。


1.選挙に行くには?


 SNSを見ていると、「選挙に行け」とか「入場券をもらったら~~」とかよくわからないことをべらべら言っているひとがほとんどで、実際どうやったら選挙に行けるのかわからないひともかなりいるのではないかと思う。ということで、知っている人はおさらいもかねて、ここではどうやって選挙で投票をするのかということを細かく説明していきたい。

 まず、そもそも、選挙というのは「選挙権」があるひとしか投票に参加することが出来ない。アイドルグループの「総選挙」や、競馬の「勝ち馬投票」のように、お金を払って入手するものではなく、公職選挙法という法律によって「選挙権を持つひと/持たないひと」は明確に定められている。

 選挙権の要件も、国政選挙と地方選挙で条件が微妙に違うので注意が必要だ。

 そして、いずれも、

・選挙日の次の日までに18歳の誕生日を迎えていること

 が必須要件となっている。
 これは、法律上では誕生日の前日に満年齢を加算する決まりになっているため、「選挙日当日に満18歳となっていること」と実質的に同じ条件になるためである。余談だが、小学校などの学年も同様に決められているため、4月1日生まれは早生まれ扱いでひとつ上の学年になり、4月2日生まれが同学年で最も早い誕生日となる。

 たとえば、2023年4月9日の選挙に投票するためには、生年月日が2005年4月10日以前であればよいことになる。

 国政選挙はこれだけでOKである。厳密に言えば住んでいる場所で投票の対象となる政治家が異なってくるが、それは地方選挙でも同じだ。

 地方選挙の場合は、これに加え「同一自治体に3か月以上引き続き住所がある」ことも条件となる。ここでいう「住所」というのは「住民票の住所」のことをさす。つまり、「選挙日の3か月前から住民票が同じ市区町村(もしくは、都道府県)にある」ことが追加条件となる。たとえば、下宿などで転出の手続きをしていない学生なんかは、地元の選挙には行けるが、下宿先の選挙には行けないことになるので注意が必要だ。
 また、もちろん過去3か月以内に引っ越しをして住民票を移した場合も選挙権がなくなる可能性があるので注意が必要である。

 逆に言えば、

 ・選挙日の翌日以前に18歳になっている

 ・住民票の住所が選挙日の3か月前から同じ市区町村にある

 のであれば、ほとんどの確率で選挙権があるといっていい。ほとんど、というのは詳細は省くが、「公民権停止」の処分を受けているひとについては前述した条件を満たしていても選挙はできない。もっとも、出馬したことがなく、禁錮以上の実刑判決や執行猶予を受けたことがないのであれば処分されていないはずなのでほとんど気にすることはない。

 さて、選挙権があるということは、一般的には「あなたは次の選挙で選挙権がありますよ」というお手紙が、住んでいる(=住民票のある)自治体(市区町村)から住所に(=住民票の住所に)届けられる。これは世帯ごとである場合がほとんどだと思われる。つまり、家族全員分のお手紙(お役所用語では「通知」という)がたいていはひとまとめにされている。よほど気の利かない自治体でもなければ、この通知の中に「投票所入場券」というものが選挙権を持っている人全員分入っている。また、この中には「あなたはここで投票できますよ」という形で当日行く必要のある「投票所」を示される。これも多くの場合は公立保育園・小中学校の体育館や公民館など、その市区町村の公共施設で、たいていは最寄りのそれである。ただ区割り(丁目など)の関係で最寄りではない場所を示される場合があるからよく読む必要がある。

 これも余談であるが、選挙に限らず、役所からの通知というものはきちんと読むに限る。一見してめんどくさそうだと思って捨て置かずに、手に取ってよく読むと思っていたよりも大切な情報が書いてあったりするのだ。役所というのは通知をよく読む人にとってはめちゃくちゃ親切だが、読まない人にとっては死ぬほど冷たい組織であるので、役所からの手紙は基本的に、はしからはしまで、ちゃんと読んだ方がいい。

 普通は各ご家庭に送られているであろう、「投票所入場券」が「選挙権」のいちばん簡単な証明になるので、基本的には「入場券」を持って選挙日当日の投票時間内に投票所に向かうのがいちばん簡単で、いちばん楽である。裏を返せば、実は「投票所入場券」をなくしたり、世帯主から(過失もしくは故意に)もらえないなどで所持していない状態で投票所に行っても、その投票所で投票できる権利があることがわかれば投票できる。これについては後で述べる。

 しかし、いくら選挙が大事だといっても、その日は個人的にもっと大事な用事があって、とか、いや日曜日に選挙で時間潰れるの勘弁してよ寝てえわ、とか、仕事で時間内に行けないんですけど、というひともかなりいるだろう。そういうひとたちのために、最近は「期日前投票」という制度が多く利用されている。

 期日前投票とは、読んで字のごとくまさに「投票期日より前に投票する」ことである。これは、選挙日より前に設置されている「期日前投票所」に投票に行くことで、当日に投票に行かなくてもよくなることから、時間に融通をきかせることができる制度だ。ぼくは当日に投票することが極めて難しい仕事なので、ほとんどは期日前投票で投票している。

 「期日前投票所」も、たいていは自治体からの通知に「どこどこに期日前投票所がありますから、それも利用できますよ」という形でその場所と開いている時間を確認できる。主要駅近くの公共施設か、イオンモールなどの大型商業施設にも臨時で設けられていたりする。ただし自治体もそんなにたくさん作ることはできないので、基本的にはひとが集まりやすい場所に置かれる。最近は期日前投票を利用するひとが多くなってきたので、特に選挙日前日の土曜日なんかは場所によってはものすごく混雑していることがあるため、これも注意が必要だ。そしてこういう情報は案外公式サイトでもお知らせされている場合がある。紙をとっとくのが大変なひとはスマホで調べてみてもいいだろう。

 また、「期日前投票」は注意点があって、ひとつは、「宣誓書」というものを書かされること、そしてもうひとつは「投票しようとする日以降に18歳になるひとは直接期日前投票できない」という点である。期日前投票はあくまで選挙制度の例外、つまり選挙日当日に事情があって投票できないひとのためのものであるため、「選挙日当日に事情があって投票できないので今(期日前)投票します」と宣誓する必要がある。その事情は仕事やレジャー、冠婚葬祭などから選択する形式になっている。「レジャー」とあることからわかるように、ここでいう「事情」というのは正直なんでもよくて、単に「選挙日当日に投票ができない見込みだから今投票する」旨を宣誓するだけである。なので当日に投票所に行きたくない人は積極的に利用したほうがよいと思う。

 また、従前の理由から、期日前投票をする際は、投票をする日に選挙権の判定がずれこむ。これにより、選挙日当日には選挙権があるが、期日前投票をしようとしている日には選挙権がない、なんてことがごくまれにあって、そういうひとは直接期日前投票をすることができない。この場合は、不在者投票として扱うことになる。場合によっては投票所で受理できずにその自治体の選挙管理委員会(たいていは本庁舎にある)まで申請しなくてはならないかもしれないので、選挙日に18歳の誕生日なんです、みたいなひとはかえってめんどくさくなる可能性があるので、できれば当日に投票をしたほうがいいかもしれない。人生で初めての選挙になることは確実なので、せっかくなら自分の地元の投票所を見に行った方がよいだろうとぼくは思っている。

 期日前投票という制度は比較的最近活用され始めたもので、昔は選挙当日に投票に行けないひとは「不在者投票」というめちゃくちゃめんどくさい制度を使用して投票を行っていた。

 不在者投票というのは、前述した下宿中の学生などの、住民票はそこにあるけど実際選挙日には不在だから投票できません、みたいなひとに用意された投票制度である。定められた期日までに申請を行って、実際に滞在しているところなどの任意の自治体の選挙管理委員会で投票を行う、という方法だ。これについては選挙管理委員会ごと、すなわち市区町村ごとに微妙に対応が違ってくることがあるので、不在者投票を行おうとする際はその街の選挙管理委員会に問い合わせをした方がいいかもしれない。また、最近ではコロナ禍の影響もあり、郵便による不在者投票の制度もあるようである。

 とまあ、ここまで微に入り細に入り好き勝手に自分の知っている選挙制度について説明してきたが、調べているうちにめちゃくちゃわかりやすくまとまっているお役所のサイトがあったので、詳しいことはこちらを見ていただきたい。

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/index.html

 総務省の「なるほど! 選挙」ではここまで書いたようなことをはじめ、投票の流れなど、かなり細かいことを図画付きで紹介している。さすが霞ヶ関である。こんなどこの馬の骨ともわからないような球体の生物がご高説をたれる必要はまったくなかったというわけだ。

 自分のリサーチ力のなさに愕然としたところで、今回はこれくらいにして、次回は、総務省が(政治的な意味で)絶対に教えてくれないであろう、「どういう投票をすればいいのか」について、ぼくなりにヒントを置いておこうと思う。これは単に選挙そのものだけでなく、「投票行動」自体についてのぼくなりの経験則や得た気づき、曲がりなりにも経済学を大学4年間だけかじってきた中で得た知識を含めて書いていきたい。

おすしを~~~~~よこせ!!!!!!!!おすしをよこせ!!!!!!!よこせ~~~~~~!!!!!!!おすしを~~~~~~~~~!!!!!!!!!!よこせ~~~~!