「リトル・マーメイド」 その2 黒人になったアリエル
ディズニーの実写版「リトル・マーメイド」を観ました。
思い切って、人種の問題について書いていきたいと思います。
以下、ネタバレあります。
「白人がよかった」
黒人俳優が演じたアリエルに対して、「イメージと違う」「アリエルは白人がよかった」という声があります。
「アリエルは白人がよかった」と、無邪気に言ってしまえることがすでに時代遅れです。
だってそれって「娘の恋人は白人がよかった」と同じですよね。
ただのレイシズム。
仮にそう思っても、自身の差別意識を恥じながら絶対にオモテに出してはいけない。
トリトンやエリックの母は、「人間に関わるな」とか「王子としてふさわしい行動を」と言って、保守的な価値観をアリエルやエリックに押し付けようとします。そして、自分の意思に従ってそれに抗おうとするアリエルとエリック。
つまり、「アリエルは白人がよかった」「娘の恋人は白人がよかった」と平然と言えてしまうような古い価値観の持ち主のメタファーとしてトリトンやエリックの母が描かれ、そういう古い価値観を否定するための「この映画の存在そのもの」のメタファーがアリエルとエリックです。
黒人俳優演じるアリエルは、この映画そのものだと思うのです。
「アラジン」と比較すると・・・
もっと恐ろしいことに気がついてしまいました。
比較考察のために、実写版「アラジン」を考えてみます。
「アラジン」では、ジーニー役にウィル・スミスが起用されました。アニメーション版ではロビン・ウィリアムスが演じていた役です。
つまり、「リトル・マーメイド」のアリエルと同様に「配役が黒人に変更になった」のです。
ところが、実写版「アラジン」で「ポリコレ」の4文字で批判されることになったのは、ジーニーではなくジャスミンです。
(【実写版 アラジン ポリコレ】でGoogle検索すると分かります。)
実写版「アラジン」ではジャスミンの主張が強くフィーチャーされ、女性の権利向上のための配慮だと考えられたようです。
不思議なことに、ジーニーの配役に違和感を抱く意見は少なかった。むしろウィル・スミス演じるジーニーは賞賛されています。
「リトル・マーメイド」ではアリエルの配役に批判があった一方で、エリック側のドラマが強くフィーチャーされたことはジャスミンのようには「ポリコレ批判」にはなっていない。
うーむ。
有色人種の俳優が起用された「ジーニー」と「アリエル」。
主人公ではないながら強くフィーチャーされた「ジャスミン」と「エリック」。
この4者の中で、「ポリコレ」という言葉で批判されたのは「ジャスミン」と「アリエル」。
・・・ああ。
結局はジェンダー差別
結局、「女性」がポリコレの対象になると批判されるのではないか。
ポリティカルコレクトネスのために、つまり政治的公正性のために「女性」が前に出て主張する場合や有色人種の「女性」が起用される場合に批判が起こるのではないか。
どこまで行っても男性優位社会の悪しき影が見え隠れする。
トリトンやエリックの母のように、日本社会も変わるといいですね。
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