勝手に10選〜80年代 イカしたROCK 洋楽編(後編)〜
(前記)
張り切って後編へ移る。
・Danger Zone
1986年にケニー・ロギンスのシングルとして発表された曲だ。
同年に公開された映画"Top Gun"の挿入歌(主題歌と言っても過言ではない。)であり、映画は当時は大ブームとなりトム・クルーズを一躍ハリウッドのトップスターにさせ、遠く離れた島国日本でも軍物のフライトジャケットを若者達がこぞって着ていたものだ。
この映画を制作するにあたり、実に300曲以上の曲が準備されていた。
しかし、オープニングの空母から戦闘機が飛び立つシーンの曲に制作側が納得出来る曲が無く、サウンドトラックを担当していたジョルジオ・モロダーに曲を打診した。
ちなみにこのジョルジオ・モロダーという人物であるがイタリアの作曲家、音楽プロデューサー、シンセサイザー奏者であり、いわゆる1980年代のディスコミュージックにおいて"ディスコの父"とよばれ、プロデューサーとしては、ドナ・サマー、ブロンディ、エルトン・ジョン、デヴィッド・ボウイなどのプロデュースを手掛け、サウンドトラックに至っては、スカーフェイス、ネバーエンディング・ストーリー、フラッシュ・ダンスなどを手掛け、フラッシュ・ダンスとトップガンでは、アカデミー歌曲賞を2回受賞するなど、かなりの強者である。
そのジョルジオ・モロダーが作曲し、色々な候補が挙がる中、紆余曲折があり、ケニー・ロギンスが歌う事となったのだ。
イントロから実にクールでイカしたギターのカッティングから曲が始るが、この時点でもはやテンションが上がってしまう。
構成は基本的にAメロ、サビ、ミドルエイトから成るが、このAメロのダークな雰囲気とサビで思い切り突き上がる緩急が堪らない。
実に気分が高揚する素晴らしいロックである。
蛇足であるが実に36年の時を経て"Top Gun: Maverick"が制作された際に主演のトム・クルーズが、当時の感覚を呼び起こしたい、との理由で、この曲をアップデートせずにそのままオープニングに用いたが、そんなトムの思惑通り、映画館にて筆者はオープニングから泣いてしまった。
・Walk This Way
1986年にRun–D.M.C.のシングルとして発表された曲だ。
1979年がヒップホップの起源とされるが、ヒップホップにジャンルとして世界的にポピュラリティーを与えたパイオニアはRun–D.M.C.であろう。
この曲は元々エアロスミスによって1975年に発表された楽曲であり、Run–D.M.C.サイドが曲のリズムを気に入り、エアロスミス側に打診し、誕生したコラボレーションである。
サンプリングはせずに、レコーディング時にはエアロスミスのスティーブン・タイラーとジョーペリーが参加し、見事に音楽史にロックとヒップホップの融合という点で足跡を残したのだ。
しかも、エアロ・スミスにとってはバンド自体が停滞期であり、この曲に参加し、PVにも出演し、結果的に曲がヒットした事により、エアロスミスにとっては好機となり、またRun–D.M.C.にとってははエアロスミスのお陰で、それまでMTVに出てくる黒人といえばマイケル・ジャクソンなど、ごく限られたアーティストであり、ヒップホップ界で初のMTVに登場する事で認知度が広がり、そのファッションがブームになったり、と双方にとって大変有意義なコラボレーションとなったのだ。
絶妙なリズム感とギターリフを主軸とした心地の良いロックに、ラップが見事に融合したロック界とラップ界に素晴らしい足跡を残した曲なのだ。
・Livin’ On A Player
1986年にボン・ジョヴィによって発表された曲だ。
なんだか、記憶では当時、男女問わずやたらめったらボン・ジョヴィが人気があった。
もちろん音楽性の素晴らしさが1番の理由だろうが、フロントマン、ジョン・ボン・ジョヴィの端正なルックスだったり、あとは楽曲のキャッチーさと、上品であったところであろう。
ハードロックというジャンルの中で、FUCKとかSHITなどを用いて攻撃的にならず、どちらが正解とも言えないが、万人に浸透する歌詞とメロディのキャッチーさで、ボン・ジョヴィがハードロックをポピュラリティーなジャンルに押し上げた事は一つ大きな功績である。
曲であるが、疾走感を持ちつつダークな雰囲気から曲は始まり、Aメロはその雰囲気を保ちながら進行し、Bメロに入るとダークさが薄れ、弓矢を引く様にサビへの見事な橋渡しとなる。
なんといってもサビだろう。
疾走感と突き上がり、更に突き上がる快感が堪らない。聴く者の心を高揚させる、実に気持ち良いサビである。
ラストに転調があるが、どこまでも突き上がるメロディ、コーラスが素晴らしい。
題名は、希望のもとに生きる、となる。
歌詞の内容はトミーとジーナが苦しい生活を送りながら、2人で希望を持って生きていく、という素晴らしいポジティブな歌詞だ。
この突き上がるハードロックと素敵な歌詞の融合がボン・ジョヴィの真骨頂なのだ。
・Got My Mind Set On You
1987年にジョージ・ハリスンのシングルとして発表された曲だ。
筆者にとっては物凄く思い入れがある曲だ。
小学校の頃に物心がつき、ビートルズに目覚め、リアルタイムにて初めてジョージ・ハリスンのニューシングル、ニューアルバムが発売されると聞いただけで心踊る出来事だったのだ。
ジョージ・ハリスンの楽曲において、特に後期ビートルズ以降では当時の印象だと、重厚感のあるロック、シタールを用いたスピリチュアルな楽曲、渋いバラード、アコースティックギターを用いた爽やかな楽曲などなど、ストレートなロックンロールのイメージがあまり無かった。勿論それはそれで、好きであったが。
そして、この曲であるがもう実に明るいロックンロールを披露している。
当時はあのジョージ・ハリスンのずば抜けたロックンロールをリアルタイムで、新曲として聴く事が出来て、驚きと同時に嬉しかったものだ。
この曲はカバーであり、原曲はジェームス・レイが1962年に発表したR&Bでらビートルズ時代からジョージがカバーを狙ってきた曲であった。
原曲はホーンを多用したゴスペルの雰囲気も漂うR&Bであるが、ジョージのカバーは原曲をソフィスティケートし、完全たる軽快なロックンロールに仕立て上げ、アレンジの面では原曲を超えている、いや、原曲をベースにジョージが新曲を制作した、と言っても過言ではない。
オリジナルでは無くとも、ホーンも豪華で軽快かつ爽快なロックンロールを、まるでジョージ自身が楽しみながら歌っている様な姿を感じながら、リアルタイムで味わえたのが嬉しく、今でも大好きな曲だ。
・Wecome To The Jungle
1987年にガンズ・アンド・ローゼズにより発表アルバム"Appetite for Destruction"のオープニングをかざる曲だ。
筆者の少年期には、まだ溜まり場であったボーリング場やゲームセンターにジュークボックスまがいのマシンがあり、確かワンコインで1曲をPV付きで聴いて観る事が出来た。
その頃に、誰かかガンズ・アンド・ローゼズをかけたのが、初めてガンズと出会った時であった。
とは言ったものの、当時はまだハードロックにあまり関心がなく、皆と一緒になって頭を振り、曲に身を委ねていた程度だった。
しかし、頭にバンダナを巻いたアクセル・ローズはいやに輝いて見えていた。
少し後になり、親友の勧めもあって"Appetite for Destruction"を購入し、オープニングを飾るこの曲を聴いて一気にハートを鷲掴みされてしまった。
イントロはディレイのかかったギターとアクセルの雄叫びが交錯し、楽器が出揃って、ブレイクからのギターリフが見事にきまる前奏へ。
曲の構成はシンプルで基本はAメロ、Bメロの繰り返しでミドルエイトが入る。
演奏もギター、ベース、ドラムとミニマムでありながら、各々のスキル、テクニックが交錯して実にゴージャスに聴こえる。
そこにアクセルのハスキーで変幻自在なボーカルが乱れ舞い、全てが融合して最高にクールなハードロックが完成するのだ。
全世界で2800枚のセールスを記録しているガンズのデビューアルバムであり、モンスターアルバム"Appetite for Destruction"のオープニングを飾るに、これほど素晴らしい曲はないのだ。
(後記)
ジョン・レノンの悲劇から始まった1980年代だが、筆者はジョンの事は残念ながら記憶に無い。物心がついていなかった。
80年代にはロックが無かった、という人もいる。
物心がついて、おおよそ昭和の終わりである1980年代の途中から音楽に目覚め、色んな時代の音楽を吸収してきたが、今振り返るになかなかやるじゃないか、80年代も、という印象だ。
また、80年代も深掘りしたい。
読んでくださった方々へ
ありがとうございました。
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