勝手に10選〜イカした失恋ソング(前編)
(前記)
世の中、人生に付き纏う喜怒哀楽において常に楽曲は思い出とともに寄り添うものである。
今回は、誰でもが(←でもないか)経験するであろう実に辛い時期、失恋をテーマにした素晴らしい楽曲を前編、後編に分けて勝手に10選する。
・勝手にしやがれ
1977年に沢田研二さんのシングルとして発表された曲だ。
悲壮感とやるせなさ、どうしようもない気持ちを凝縮した様な激しいイントロから曲が始まる。
今、まさに自分が寝ているフリをしている間に、荷物をまとめ、自分の元を去ろうとしている恋人の事を考えている自身の心中を歌詞に凝縮している。
寝ているフリをしながら思案、思いを馳せる、その辛さを、激しく切ないメロディにて見事に表現している。
AメロからBメロへ流れも実に素晴らしく、特にサビの後のブレイクから、あぁ、あぁと歌い叫ぶパートが葛藤や、やるせなさを凝縮しているのだ。
主人公が置かれている立場、主人公の心中、寂しさ、やるせなさ、強がりを1つの曲に凝縮した、数分間の映画を観ている様な気分にさせてくれる大名曲なのだ。
・恋するカレン
1981年に発表された大瀧詠一さんのアルバム"A LONG VACATION"に収録され、同年にシングルカットされた曲だ。
実に爽やかで煌びやかなイントロから曲が始まる。
大瀧詠一さんによるウォール・オブ・サウンドにしばし身を委ね、Aメロに入り、抑揚は少ないが大瀧さんが持つ独特な歌い回しが心地よい。
曲の構成はAメロ、サビでほぼ構成され、1つミドルエイトが入る。
歌詞は、ちょいと先走った、やや妄想癖も兼ね備えた自己中心的な主人公の物語がコミカルに痛々しく記されている。
サビになると大瀧詠一さんによる実に華やかなウォール・オブ・サウンドが更に炸裂し、美しく切なく突き上がるメロディラインに歌詞が曲に 乗ると、見事に素晴らしい失恋ソングの完成となるのだ。
・ルビーの指環
1981年に寺尾聰さんのシングルとして発表された曲だ。
作詞は松本隆さんで、作曲は寺尾聰さんが自ら手掛けている。
筆者は、当時7歳位である。
ただ、当時ザ・ベストテンを観ていて、何週連続1位だとか、サングラスに肩を揺らせて寺尾聰さんがこの曲を披露していたのは鮮明に記憶の中にある。
まずは名イントロである名ギターリフから曲の幕が開ける。
とにかく、この曲は歌詞が素晴らしい。
端的に内容を記すと、恋人の誕生石がルビーであり、ルビーの指輪をプレゼントしたが、後に破局をしてしまい、別れた後も恋人が着ていたベージュのコートを着ている女性を見かけると、つい指にルビーの指輪を探してしまう、というストレートな歌詞である。
各々のパートの情景や、未練、弱さ、強がりが交錯した主人公の心中が見事に表現され、実に大人っぽく、ギターの名リフ、カッティング、絶妙なスパイスとなるキーボードなどで奏でられる無駄のないミニマムな演奏と歌詞の世界観が見事に融合している大名曲なのだ。
・CLOUDY HEART
1985年にBOOWYによるアルバム"BOOWY"の収録曲として発表され、更に1987年に発表されたBOOWYのラストシングル"季節が君だけを変える"のカップリングとして新たにリテイクされたバージョンが収録された。
作詞作曲は氷室京介さんである。
この曲は氷室京介さんの実体験に基づく曲である。
同じ高校の後輩の女性と同棲していたが、バンドはなかなか結果を残せず、ほとんど女性に食べさせて貰っている状態だった。
そして結果的に彼女は去ってしまう。
素晴しくも切ないミドルバラードである。
Aメロ、Bメロ、サビの構成となるが、特筆すべきはBメロが実に素晴らしい。
おとなしめの演奏でメロディも抑揚が少ないAメロから、突き抜けた様な演奏とメロディラインとなり、その緩急が実に見事になのだ。
そして、切なさが溢れるサビ、と曲は展開される。
氷室京介さんはBOOWYにおける歌詞を殆ど手掛けていおり、この様なストレートな歌詞からメタファーを多用して散文的、抽象的な歌詞まで変幻自在に表現し、作詞家としても実に素晴らしい。
元来の作詞家としての素晴らしさに加え、その実体験に基づくストレートな詩がが楽曲にハマっている大名曲なのだ。
・LONELY BUTTERFLY
1986年にレベッカのシングルとして発売された曲だ。
作詞はNOKKOさん、作曲は土橋安騎夫さんである。
実に美しく切ないながらも、華麗なミドルテンポのロックだ。
ハーモニカ(キーボードだろうか)を用いて、タイトにシンプルかつ、美しく少しノスタルジックな雰囲気を持ちつつ曲が始まる。
歌詞は、自分では落ち着く場所が見つからない蝶々の様に我儘な少女が、この人となら愛の力を借りれば落ち着けるかも知れない、と感じた男性と恋に落ちるが、やはりそこも落ち着く場所では無く、相手を傷つける位なら自ら去っていく、というなんとも双方にとって切ない内容だ。
曲の構成はAメロ、Bメロ、サビ、Cメロ(サビに含まれるかもだが、便宜上分けてみる。)から成る。
曲全体を通して、まず強調したいのがボーカルNOKKOさんのリードボーカルの素晴らしさだ。
NOKKOさんのボーカルは実に澄み切って美しく、曲毎に歌詞の主人公を演じている様な、世界観を見事に歌い分ける素晴らしいボーカルなのだ。
Aメロ、Bメロは淡々と美しく自身の想いを切なく歌い上げる。
そしてサビに移行すると、前向きな疾走感を伴う素晴らしいメロディラインと演奏になる、この緩急が実に見事なのだ。
更に特記すべき点はサビのボーカルである。
1回目のサビは"LONELY BUTTERFLY"の部分がユニゾンの様に歌われており、2回目のサビは同箇所が美しいハモりで歌われ、3回目以降はサビ全体が実に美しき華やかなハモりを奏でている、という段階的な技が、この曲の煌びやかさ、美しさ、切なさを見事に引き立てているのだ。
唯一無二の素晴らしい失恋ソングだ。
(後記)
後編に続く。
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