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勝手に10〜Eric Clapton編〜

(前記)
誰が定義したか知らないが、世界の3大ギタリストはエリッククラプトン 、ジェフベック、ジミーペイジなのである。
何の経緯があったのか記憶にないが、筆者は少年時代からエリッククラプトンを未だに聴き続けている。

さて、そんなエリッククラプトンであるが、実に多彩な経歴の持ち主で、1963年から、ヤードバーズ、ブルースブレイカーズ、クリーム、ブランド・フェイセズと、幾多のバンドに加入したり、結成したり、脱退したり、解散したりで、1970年にやっとソロデビューをしたかと思えばデラニー&ボニーや、デレク&ドミノスに参加したり、実に渡り鳥というか、常に己の進化なり新たな挑戦の継続なのか…飽きっぽいのか、属す事が苦手な一匹狼なのか。

また、経歴の中で実に様々なアーティストと共演し、レコーディングにも参加しており、有名なところではビートルズの"While My Guitar Gently Weeps"のソロギターだ。

実に興味ある経歴を持つクラプトンであるが、その経歴の至る所に満遍なく素晴らしい名曲、名演を残しているが故にその存在は偉大なのである。

今回は、そんなエリッククラプトンのソロ名義の中から勝手に10選する、

・Motherless Children
1974年に発表されたアルバム"461 OCEAN BOULEVARD"のオープニングを飾るナンバーだ。
原曲はブラインド・ウィリー・ジョンソンが、1928年に発表している。
原曲はスライドギターを駆使して力強く歌い上げるブルースであるが、クラプトンの手にかかると、実に素敵なロックになる。

実にゴキゲンなギターのリフから始まり、怒涛のスライドギターが実に心地よい、軽やかなロックナンバーだ。

1970年にアルバム"Eric Clapton"でソロデビューを果たすも、ヘロイン中毒、アルコール依存、男女問題など、クラプトンにとって実に苦難の時代を経て、4年ぶりにリリースされたセカンドアルバム"461 OCEAN BOULEVARD"
により、人々にクラプトン復活を感じさせた。
オープニングを飾るこのクールなロックに、ファンは歓喜したのだ。

・Cocaine
1977年に発表されたクラプトンの5枚目のアルバムとなる"SLOWHAND"に収録された曲だ。
オリジナルはJ.J.ケイル1976年に発表した曲であるが聴き比べると、あまりアレンジし過ぎておらず、原曲はいなたい印象であり、クラプトンのカバーの方が都会的に洗練された印象である。
過激な歌詞だが、薬物に手を出すと戻って来れない、というアンチドラッグとも受け取れる。

ギターのリフが実にクールな重厚感溢れるミドルテンポのロックでライブでも非常に盛り上がる曲だ。

・Wonderful Tonight
1977年に発表された"SLOWHAND"に収録されたナンバーだ。
3大ギタリストたるエリッククラプトン自身の作詞作曲であるが、実にシンプルなギターのリフ、解りやすいコードを用いた実にソリッドかつシンプルなバラードた、
そんなこの曲の肝となるのは歌詞だ。
4つのパートがそれぞれ素敵なラブソングであり、4つ目のラストで帰結する。
4つのパート毎に"Wonderful Tonight"を用いたフレーズが最後に入るのが、実に美しくクールだ

・Before you accuse me
原曲は1957年にEllas O.B. McDanielこと、ボ・ディドリーによるシングル"セイ・ボスマン"のB面、カップリングである。

この曲をクラプトンは、1989年に発表された"Journeyman"と1992年に発表された大名盤"Unplugged"の2回カバーをしている。
前者なエレキギターを用い、実に重厚感と疾走感に溢れ、ノリの良いカバーだ。こちらの方が原曲に近い雰囲気を持つ。
後者はアコースティックギターを用いて、煌びやかに大人の色気を感じる演奏になっている。 

どちらが良い、とかでは無く、ただクラプトンのポテンシャルの広さ、テクニック、これらの持つ世界観に身を委ねれば良いのだ。

・Nobody knows you
when you’re down&out
1992年に発表されたアルバム"Unplugged"と2021年に発表されたアルバム"Lady In The Balcony: Lockdown Sessions"に収録された曲だ。
原曲は、1923年にジミーコックスにより作曲され、サム・クック、オーティス・レディングなど名だたるミュージシャンにカバーされ、歌い継がれている曲である。
クラプトンのバージョンは"Unplugged"で完成している。

アコースティックギターとピアノが見事に絡み合い、"金があれば人はあつまるが、転落したら誰もいなくなる"という歌詞と、場末の酒場、やるせなさ、笑顔、哀しさ、明日への希望、思い出など様々な世界観のマテリアルを凝縮したかの様な実にクールな曲だ。
クラプトンのボーカルも幾分切なく、そして力強く抑揚がつき、演奏とベストマッチした、実に大名曲なのだ。

・Tears in heaven
1991年にクラプトンを悲劇が襲う。
子息のコナー君が高層マンションの窓から転落して亡くなってしまったのだ。
クラプトンは、この悲劇と向き合いレクイエムとして、1992年にこの曲をシングルで発表する。シンプルかつ美しくソリッドなバラードに、コナー君を想って淡々と歌うクラプトンのボーカルが実に胸を打つ。
そんな経緯を持つこの曲が大ヒットし、クラプトンの代表作の1つになった事を1番喜んでいるのはコナー君なんだ。

・Motherless Child
1994年に発表された"From the Cradle"に収録されている曲だ。
このアルバムは全てブルースのカバーである。
原曲は1927年にバーベキュー・ボブにより発表された。
ブルースとはいえ、原曲も主にギターでストロークを伴奏に歌い上げているが、クラプトンもギターのストロークを主にカバーしている。
このストロークが実に洗練され美しい。
他の音も、このストロークに花を添え、抑揚をつけすぎないクラプトンのボーカルが見事にハマっている。一貫するストロークに疾走感すら感じる、実に気持ちの良いナンバーだ。

・Change the world
1996年にサウンドトラック"Phenomenon"に収録された曲だ。
原曲は同年の1996年にワイノナ・ジャッドが発表したアルバム"Revelations"に収録されている。
原曲はアコースティックギターのフィンガリングを多用したイカしたカントリーという印象だ。
クラプトンはこの曲をアコースティックギターを用いて実に洗練された都会的なロックバラードに仕立て上げ、この大名曲が生まれた。
実に聴いていて心地が良い。2コーラス目のAメロを少しロック色を増やす事で緩急をつけている。

・STONE FREE
1993年にされた"STONE FREE TRIBUTE TO JIMI HENDRIX"に収録された曲だ。
他にジェフ・ベックやバディ・ガイなどのミュージシャンが参加したトリビュートアルバムとなっている。
原曲は1966年にジミヘンドリクスのデビューシングル"Hey Joe"のカップリングとして発表された。
原曲は勢いのある図太いロックでジミヘンドリクスにおける人気がある楽曲のひとつである。
が、この曲ではジミの奏でるリフの部分がいまいち聴きづらい。
そこで、クラプトンバージョンでは、洗練されたアレンジと、リフの部分が見事に曲の軸となり、まるでジミと生前に友人であったクラプトンが、ジミのリフはこれが正解だ、と言わんばかりの素晴らしい名演だ。
実にジミへのリスペクト、想いが詰まった勢いあるロックとなっている。

・THEY’RE RED HOT
2004年に発表されたロバート・ジョンソンのカバーアルバム"ME AND MR.JHONSON"に収録された曲だ。
ロバート・ジョンソンは言わずと知れた伝説的なブルースにおけるアーティストであるが、その27年間の人生で曲数は29曲しかなく、アルバム"THE COMPLETE RECORDING”でその全てが聴く事が出来る。

そのロバート・ジョンソンを敬愛して止まないのがクラプトンである。
2004年にその敬愛するロバートのカバーアルバムを発表する事は実に興味深い出来事だった。

さて、この"THEY’RE RED HOT"であるが、筆者にとってもロバートが残した曲の中で1番好きな曲だ。いなたいブルースナンバーの中で、この曲が非常に軽やかに明るい雰囲気を持っていたからだ。
一体クラプトンはどの様なアプローチ、カバーをするのか、と色々期待をして聴いたのだが、実に良い意味で裏切られた。

ピアノ、ドラム、ピアノなどで実に華やかにカバーしているのである。
原曲をしっかりと咀嚼して、この曲を現代にカバー、というより見事にアップデートしている。ロバートも嬉しいであろう。
軸となるブルースとブギ、カントリー、ロックのマテリアルを凝縮させた名カバーである。

(後記)
いざ、自身に10選という枠の中で曲を考えると、あら、という発見もある。
エリック・クラプトンはギタリストでもあるがシンガーソングライターでもある。
こうして10選してみると、なるほどカバー曲が圧倒的に多い。
クラプトンは世界を代表するギタリストであると同時に世界を代表するアレンジャーなのだ。
歌は歌い継がれないと消えてしまう。
どんな、いなたいブルースでもクラプトンがアップデートをする事によって、現在でも燦々と輝くのだ。

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