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医療現場からのS・O・S

在宅クリニックの医師から悲鳴に近いメッセージが届きました。
「コロナ対策について現場の声が行政に全く届いていない」と。

あらためて熊本県内の感染症の状況をみてみると……。

●感染事例数3,975
●全療養者数37,199
・入院療養者数552
重症9
中等症208
軽症311
無症状17
確認中7
・宿泊療養者数584
・自宅療養者数25,269
・施設療養者数291
・入院調整中253
・宿泊療養調整中90
・療養先調整中10,160

●確保病床使用率77.6%
うち重症者用17.0%
●即応病床使用率64.6%
うち重症者用13.2%
●死亡者数6
●累計死亡者数358
(令和4年7月27日現在、熊本県庁HPより抜粋)
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/30/92000.html

ここで注目するのが病床使用率です。
熊本市のみでは確保病床使用率116.0%
うち重症者用32.0%
即応病床使用率91.8%
うち重症者用32.0%

最大確保病床数という数字があり、その使用率はもう少し下がるものの、いずれにしても100%前後。数字だけでも医療現場の逼迫している様子が伺えますし、医療従事者の感染や医療機関でのクラスター発生を考慮すれば、現場は数字以上の厳しさであることが容易に想像できます。

そこで、あらためて県や市の情報発信を見てみると、22日に行われた県のの臨時記者会見では
・感染防止対策の再徹底と感染リスクの低減
・自身及び身の回りの大切な方を守るためのワクチン接種
・医療機関の適正な受診
この3点を県民に呼びかけていますが、これまでの対策の焼き直しで、緊迫感は全く感じられません。

ここにきて、そういった声がようやく熊本市に届いたのか、今日29日になって医療緊急事態宣言を発令し、8月5~7日に予定されていた『火の国まつり』の中止も併せて発表されました。おそらく、これからバタバタと行動制限に近い要請がなされることになるのでしょう。

医療現場との温度差はなぜ生じるのでしょうか?
コロナ対策を検討する場には当然ながら県や市の医師会もメンバーとして入っています。
先ほど照会した数字以上に、現場の厳しさを理解しているはず。

そういえば、先ほど紹介した臨時記者会見でも、何度か「社会経済活動の維持」という文言を用い、「感染拡大防止と社会経済活動のベストバランス」とまで言及しています。国の発言に倣ったといえばそれまでですが、いかにも国の方針に沿って事務方が用意した文章であって、現場の空気感は伝わってきません。経済活動を重視した結果、地域医療などの社会活動に支障が出始めて、慌てて何かを言い出した、といったところでしょうか。

変異を続けるコロナの対策はとても難しい。ましてや経済活動の優先を求める声も強い。国にさきがけて動けば、いずれにせよ批判を受け兼ねない。結果、後手になる。悲鳴を上げてこられた医師は、対策の司令塔が不在であることと、家庭内感染の割合の高さに言及した上で、その対策の徹底を強く訴えられました。

2年半ほど続くコロナとの闘いで、慣れと疲れが出ているのは事実。行動変容を求めるのは容易ではありません。医療分野でももっともしわ寄せのいく在宅医療からの声に応えて、守るべきは何なのか、どう動くのか、その意思が明確に伝わるメッセージを期待したいものです。

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