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漏水はつらいよ

マンションと漏水トラブルは切っても切り離せない関係だ

 マンションには構造上、床下に多くの給水管・排水管が通っている。部屋内の給排水配管は専有部となり、見えなくても触れなくても部屋の所有者の所有物だ。

 マンション所有者さんの中には、見えない給排水管に関して自分たちに管理責任はないとの考えの方が少なからずいる。「自分は何もやっていない。」からだ。

しかし、厄介なことに「何もやっていないとしても責任が発生する(無過失責任)」のがマンションの漏水だ。

漏水で自分の家の中に被害が生じる戸建てと異なり、マンションでは給排水管から水が漏れると、多くの場合、下階の部屋にその被害がもたらされる。こうして、意図せず漏水元は加害者、下階の住人は被害者となり、厄介なトラブルが多々発生する。


 
まず、マンションで漏水が発生した場合は、漏水調査から始めるのだが、

「あなたの部屋から漏水している模様です。」

と、告げられただけで拒否反応を示す方がいる。

 管理会社は出来るだけ漏水元居住者が気を悪くすることがないよう言い方に気を配りながら、漏水調査を進める必要がある。
漏水調査を拒否されるとお手上げになってしまうからだ。

 この漏水調査、厄介なことにすぐには漏水個所を特定できないことが往々にしてある。漏水個所を特定できないと、漏水は続くことになり、被害者の被害拡大とともに怒りを増幅させてしまう。

 かつてわたしが経験したとある漏水がまさにこのパターンで、その上、漏水調査に漏水元が非協力的というメンドウ極まりない案件であった。



 一向に漏水箇所が特定できずに、漏水が続いたため3度目の調査立ち入り依頼の電話を掛けた時、わたしはその漏水元の居住者からひどく罵倒された。

 そんなことは“管理会社あるある”だったのだろうが、“この手の人種は手に負えん”と判断したわたしは、

「部屋内の漏水ですから、部屋同士で解決すべき事柄として手を引きますので、お客様自身で解決をしてください。下階へのお詫びがまだの場合は、お詫びに行かれることをお勧めします。」

と、調査打ち切りを告げた。

この、介入終了通告は非常に効果があった。あっさり、調査のための入室を許可されたのだ。

 結局は、清掃不行き届きのため風呂場の洗い場から排水が排出できずに洗い場に20センチほど水が溜まり、その水が壁を伝って下階の天井に出ていたのだ。

 洗い場の水が流れずに20cm以上も溜まった状態になっていることは、漏水元はわかっていたはずだが、調査する水道会社を横目に何も告げなかったために、何度も調査が繰り返される羽目になった。

 この間、被害宅からはマンション担当者であるわたしに連絡が入り、いつまで漏水が続くのかと問合せがある度に現状をお伝えし、お詫びする必要があった。

 この例は清掃の不行き届きが原因だったが、築30年頃からマンションの漏水は頻発する傾向がある

これまで、管理会社は漏水対応を一生懸命に行ってきた。
費用は管理組合が加入するマンション保険でまかなえるため、調査費・復旧費も管理会社の言い値が簡単に通る。その調査、復旧が管理会社に発注され利益をもたらしてきたからだ。

 しかし、築30年越えで漏水を繰り返すマンションが激増した場合、管理会社は共用部の漏水は対応しても専有部(部屋内)での漏水には介入しなくなる可能性が高い。

 というのも、管理会社の担当者にとって漏水トラブル解決には労力がかかり、日常業務に大いに支障をきたすからだ。精神的疲弊も甚だしい。

 人手不足が管理業界の悩みの種であることからも、漏水で儲けようとする管理会社は減っていくだろう

 結果として、当事者同士で解決することが一般的になるはずだ。ここでも、居住者自身の解決能力が必要となる

併せて読んでほしい、マンショントラブルの話

わたしの仕事について ちいさな管理


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