逃避[インスタントフィクションその23]

「こんな時代に生まれたらならば、どれほど充実した人生を送れただろうか」
堆く積まれた本に新たな一冊を加えつつ、私は今読んだ本の内容を思い返す。どうにも張り合いが持てない私の人生において、読書ほど熱中することはなくそれ故に架空の物語に私が生きることができたならと思わずにはいられないのである。
「どうして現代に生まれたのだろうか」
ふと思った疑問に対して新たな疑問が湧くのを感じる。
「現代だから充実しないのだろうか」
本のは様々な人生の追体験であり、記憶である。つまり、自分ができるできないにかかわらず、できた人の人生を経験することができると言うことであり、できないことをできると錯覚さえしてしまうことなのだ。それを自覚してからは随分と早かったように感じる。
「物語を作ってみるか」
私は誰かの人生ではなく、自分の人生を生きることにする。私が私の境遇を嘆くことなど、今後一切においてありはしないだろう。

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