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「狼」に抗う「猫」

台湾総統選挙は、総統候補と副総統候補がペアになって選挙戦に挑みます。アメリカ大統領選挙と同じスタイルですね。
もちろん総統候補たちが主役級なわけですが、今回のような接戦となると、バイプレーヤーの副総統候補の求心力が勝負の行方を左右する可能性があります。
というわけで、3人の副総統候補たちのうち、与党・民進党と最大野党・国民党とで対中姿勢がどう違うかを体現しているともいえる民進党の簫美琴(しょう・びきん)氏にフォーカスします。


日本生まれ、台南育ち、アメリカで修学

簫美琴氏は、台湾人の父とアメリカ人の母を持ち、神戸で生まれました。子供の頃は台南で育ち、高校から大学にかけてはアメリカで学んだという国際派です。

彼女の父親が2020年に書いたコラムによれば、台南で育ったころ、彼女は「母とは英語で、祖母や友達たちとは台湾語(福佬語)で、学校では中国語(台湾華語)で」それぞれ会話したそうです。
また、アメリカの大学に進んでからは日本語なども学んだというので、人並外れた語学のセンスがあるのは間違いありません。父親も美琴氏が「小さいころから『多声帯』であった」と振り返っています。

簫美琴氏のX(旧Twitter)より

話はやや逸れますが、「台湾華語」と呼ばれる中国語と中国大陸での標準語である「普通話」は、かなり似通ってはいますが単語などに違いはあります。ちょっと知られているのは、パンダ。
中国大陸では「熊猫(xióng māo)」なのに対して、台湾では「猫熊(māo xióng)」と反対なのです。

簫美琴氏の父は、彼女の多言語能力に関して、こうも評しています。

言語は伝達のツールであるだけでなく、文化についての思惟の媒体でもある(語言不但是傳達工具,更是文化思惟的媒介)

https://www.taiwanjustice.net/?p=218925

東洋と西洋の文化に対する考察を深めた簫美琴氏は、マイノリティの立場の人たちに寄り添う姿勢を強め、政治の道へと進みます。
民進党に入った彼女は持ち前の語学能力を生かして党の外交活動で活躍し、27歳という若さで党の国際事務部主任に就任。

Cat Warrior

2020年、簫美琴氏は台湾の駐米大使(代表)となりました。この際、自分の外交スタイルをこう評しました。

"Cat Warrior"

直訳すると「猫戦士」簫美琴氏のX(旧Twitter)をみると、今でも自己紹介文はTaiwan Ambassador, Representative & Cat Warrior in the USです。

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