FATAL

 マズルフラッシュ、一瞬遅れて銃声。
 時間が鈍化する。滑稽なほどゆっくりと、しかし確実に額に向かってくる銃弾。その先にライダースーツの女。体躯に似合わぬ大口径ハンドガンの反動を腕で殺し、その体勢のまま2発目、3発目、4発目。それぞれ頭と心臓へ。
 これで最期か、と思う。

 加速した意識が過去をフラッシュバックさせる。
 5分前。バイクのエンジン音。まさかこんなに無造作に、という思いとは裏腹に、あいつだという確信がある。銃の安全装置を外して窓からそっと確認する。ヘッドライトの逆光で定かではないが、乗り手は黒のライダースーツの小柄な……女。まっすぐこの家へ向かってくる。バイクを降りる瞬間に狙えるか。
 そう思ったのも束の間、バイクは減速しないまま玄関へ突入し、扉をぶち破った。乗り手を失い突っ込んでくる鉄塊を転がって躱し、発砲。膝立ちで体勢を整えると、侵入者はもうそこにいた。

【2時間前に続く】

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