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地域のつむぎ手の家づくり|工務店6社が地域活性化に向け始動 合同展示場オープン、移住促進など行政も期待<vol.47/福岡「よか良家プロジェクト」>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。

今回の<地域のつむぎ手>は・・・

よか良家ヴィレッジ/よか良家プロジェクト


福岡県筑後地域の工務店6社で発足した朝倉市の地域活性化プロジェクト「よか良家(よか)プロジェクト」の第1期合同展示場「よか良家ヴィレッジ」が9月、同市内にオープンしました。地域の経済発展や移住・定住促進にも貢献する“三方よし”のプロジェクトとして、志を共有する地域工務店の連携により実現しました。6社は同プロジェクトを、地元行政とも連携を深めることで、単なる家づくりにとどまらない社会的な活動に位置づけています。

同プロジェクトは、エステート工房(朝倉市)、手嶋組(同)、時川建設(同)、ナカガワ(久留米市)、フルハウス(筑後市)、REN-STYLE(レンスタイル、うきは市)の6社でスタートしました。初代会長(同プロジェクト代表)は手島組社長・手嶋誠一さんが務めます。

参加6社は、資本力・宣伝力のある大手ハウスメーカーに対して、互いに協力することによって工務店ならではの家づくりの魅力や特徴を発信しながら、地域の工務店と住宅産業の活性化を目指しています。同時に地域経済の発展や、仕事(雇用)の創出による移住・定住促進につなげ、「地域、工務店、未来、全てが良かったと言えるプロジェクトにしたい」と張り切っています。

一般公開に先立ち、9月に開催された合同展示場・よか良家ヴィレッジのオープニングセレモニーには、朝倉市の林裕二市長や同市の市議らも参列し、工務店連携による良質な住宅の供給や地域系活性化などに寄せる期待の大きさをうかがわせました。

合同展示場のオープンセレモニーでは、参加工務店と林裕二市長(中央)ら来賓によりテープカットが行われた

手嶋さんは市長らを前に、同プロジェクトを「建築版の地産地消」と定義しながら、「地元の業者、地元の職人の手でつくり、地域の活性化を目指す」と宣言しました。

合同展示場のオープンセレモニーで市長らを前にあいさつする会長の手島誠一さん

また、若年層を中心に、地元で暮らしたい・働きたい志向が強まっており、Uターン希望者も増えているとして、移住・定住のためにも「地元を良く知っている私たちがふるさと・朝倉を発信していく」と抱負を述べました。


連携することで発信力を相互に向上

同プロジェクトの立ち上げには、じつは、大手ハウスメーカーの動向も関連しているのです。ハウスメーカーは展示場を設け、家づくりの検討者を強く自社に誘引します。さらに、土地を相場よりも高い価格で仕入れるため、つられて周辺の地価が坪4~5万円は上昇するそうです。これにより、「地元の事業者が土地を取得できない」事態が発生しているといいます。

「大手を選ぶのは、工務店を知らないから」と手嶋さんは話します。一方で、地域の工務店の発信力には課題が多く、広報・集客に力を入れている会社もあれば、自社ウェブサイトや中にはパンフレットさえつくっていない会社もあるなど大きな差があります。

エステート工房のモデルハウス

そこで、「1社単独で大手ハウスメーカーに対抗するのは難しい」と、6社が連携して、工務店の家づくりを訴えていこうと考えました。そうやってかたまりとなって工務店の存在感を高めることができれば「検討者に、工務店を選択肢の1つとして捉えてもらうことが可能になる」とします。

今回は、SNS活用に長けた工務店が、他社の広報活動も支援。同プロジェクトへの参加がきっかけで自社サイトを開設した工務店もあるそうです。手嶋さんは「“×6”以上の効果があった」と説明します。

手嶋組のモデルハウス


「一緒に頑張りたい」
市長も協力姿勢示す

行政からも同プロジェクトへの期待は大きく、手嶋さんも「市のバックアップがあるのは心強い」と話します。事前に市の担当部署を何度も訪問し、プロジェクトについて入念に説明して理解を得ました。

時川建設のモデルハウス

セレモニーに出席した林市長は「人口減少、少子高齢化が進む中で地方創生に取り組んでいるが、その中で地域活性化プロジェクトが立ち上がるのは、行政としてうれしく、心強い」と発言。「できる限り一緒になって頑張りたい」と、積極的な支援を表明しています。一時は市が協賛するという話も出たそうです。最終的に、実施主体が民間企業のため実現には至りませんでしたが、このことからも市からの期待の大きさがうかがえます。

ナカガワのモデルハウス


「全て良かった」と言えるプロジェクトに

展示場は1年間の期間限定で、1000組2000人の来場を目指します。終了後は各モデルハウスを売却し、第2期、第3期と新たな展示場を開設していくことを予定しているそうです。

フルハウスのモデルハウス

手嶋さんが考える同プロジェクトの成果指標は受注棟数です。各社の年間棟数を1.5倍に伸ばし「6社で年間70棟を目指したい」と見据えます。

REN-STYLEのモデルハウス

また、地主や不動産事業者からは既に「プロジェクトのために所有している土地を使ってほしい」という声もあがっているといるとのことです。手嶋さんは、地域の人々の目線を、大手ハウスメーカーから地元の工務店へと振り向けることに力を注ぎながら、「地域、工務店、未来、全てが良かったと言えるプロジェクトにしたい」と力を込めます。


文:新建ハウジング編集部



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